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【学芸員への道】授業内容②実習


こんにちは

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一昨日9月7日は二十四節気において、「秋分」の一つ前「白露」であったようで、仙台では雨が降っていても晴れていても肌寒いくらい、かなり涼しい日が続いています。

それにしても、私は仙台に住んで今年で五年目になりますが、こんな涼しい年は初めてのような…。皆さまも急な温度変化で体調を崩されませんように!


授業内容―実習

前回、東洋・日本美術史研究室、通称“東日美”において展開されている授業について、机の上で学ぶ講義をご紹介しました。


今回は、講義での学びを生かして実際に作品を手にしてみる・あるいは逆に、学びや研究をより深く推進していくために実践的な力をつける、そういった目的のもと開講されている「実習」についてご紹介していきます!



① 作品に接するスキル

2年生の基礎実習、3年生以上の博物館実習では、学芸員講座の一環でもある実技を学ぶことができます。


具体的には、刀剣や掛け軸、屏風などの扱い方や、刀装具や鏡などを使った拓本の取り方等、作品の保存・記録にかかわることから、

論理的な話し方・書き方を目指すための解説批判作品の展示法、また実際に作品を調査した上での小規模な展覧会の企画など、作品の展示にかかわることまで、

元・学芸員の杉本の指導とアイデアのもとで力をつけていきます。

また、その際、実際に近世やそれ以前に制作されたと見られる作品を扱います。

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(実際に授業で行った拓本のうち、湿拓でとった鏡です。これは拓本をとった和紙を、博物館で実際に使われるパネルに貼ったものですが、他にはラミネート加工を施すなどしました。)


② 作品を読み解くスキル(1)ーくずし字

2年生の基礎講読や3年生の講読では、それぞれ変体がなの読みを学び、作品比較を行います。
まず、変体がなを学ぶ基礎講読からご紹介します。

杉本が重視する「原典資料に基づいた研究」を確立していくために、まず古文書等に書かれたくずし字の解読は欠かせません。
その一歩として、ひらがなが崩して書かれる「変体がな」の習得を目指す授業です。

具体的には、基礎資料となる近世の版本や、作品に付された画賛を読み、並行して寺社の縁起・画家の伝記の調査方法を学んでいきます。

世には「翻刻」として、くずし字を解読できる研究者が史料を楷書に起こし、既に本として出版されているものも多くあります。また、近年AIでくずし字を解析する技術も向上してきています。

しかし、誤っている部分や、書道の流派の違いにより解析できない部分は未だ少なくありません。
そのため、自力で史料を読むことができるようになるのは大きな糧になるはずです。私自身、一度だけでも論文を書いた経験からそう感じています。

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(授業で取り上げられた絵画の一つ、恩田石峰筆「西王母図」(江戸後期、19世紀初)です。画賛は左から右に向かって書かれています。女性の近くにある果実は何なのか断言しにくく、現代人の私たちには一見して女性を西王母と判断するのが難しい本図。しかし、画賛の左から4・5行目に「三千(みち)とせに」「花さくももの」という語が読み取れます。そうしてこの果実は、三千年に一度実り、食べると長寿を得られる西王母の庭の桃(蟠桃)であって、女性は西王母であるとわかってきます。)


(YouTubeで、研究における古文書読解について、より詳しい話を聞くことができます。)


③ 作品を読み解くスキル(2)―作品比較

次に、作品比較の目を鍛える講読についてご紹介します。

前回、「講義への意識」として、作品への批判的な姿勢について少しご紹介しました。これをより客観的に、かつ論理的に主張していくための力をつける授業です。

授業形態の詳細は、よろずさんが「03 杉本通信~鑑定~」の「作品比較」で取り上げてくれているのでご参照ください。
この記事内の『杉本通信』で杉本が述べているように、「高度な『贋作』を見破るためには、高度な鑑識眼に加え、それを説明する高度な言語能力が必要」になります。
ところが、作品一つを観て客観的な説明を導くのは中々に困難なことでしょう。

そこで、類似した二つの作品を比較することで、「なぜ」「何が」「どのように」不自然なのか、見分けた上で言葉にする力を養います。


ありがとうございました

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前回と今回の二回にわたり授業の概要をご説明していきましたが、いかがでしたか?


前回、最後にご紹介した「作品制作当時の価値観から作品を捉える」「作品を批判的・客観的に捉える」という杉本の姿勢や私たち生徒の目標を、講義・実習両方の側面から理解していただけたでしょうか。

実はまだこの他にも、大学院生向けの研究演習というこちらも実習的(?)な授業があります。ただ、私タタミは現在修士一年ですので、後期に開講されるこの授業をまだ受けていません。
そのため、上で既に挙げた授業の詳細も加えつつ、今後またご紹介できればと思っています!

それでは、今回もここまで読んでいただきありがとうございました!また次回もよろしくお願いいたします。


【参考】

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YouTube:講義を期間限定で配信中!杉本の特別企画もあり、美術史についてより深く学ぶことができます。そして何より、ここで取り上げた講義を実際に聞くことができ、気軽に体験授業を受けることができます!

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