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【作品への姿勢】13 杉本通信〜学芸員のあるべき姿〜

こんにちは

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今週火曜日(9月21日)は中秋の名月でしたが、みなさまいかがお過ごしでしたか?月はご覧になったでしょうか。

こちら仙台では夜11時近くにきれいに見えるようになり、(お団子と間違って買った)月見饅頭をお供えしつつおいしく食べて過ごしました。

こんな感じでここのところずっと冒頭でもう秋ですね~って話をしていますが、秋分も過ぎていよいよ本格的な秋になってきました。恐ろしいことに今年は丁度あと残り100日ほどらしいので、年末に向かって悔いの残らぬ一年にできるよう、今からでも頑張りたいものですね・・・😭

今回の話題

さて、今回は久々に「杉本通信」の連載を更新していきたいと思います。

今回の話題は、「学芸員は現場で作品にどう向き合うべきか?」です。


学芸員はどんな職業?

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この記事を読まれる方の中には既にご存知の方も多くいらっしゃるとは思いますが、前提として学芸員とはどんな職業なのか、まずはさらっと確認します。

学芸員とは、「博物館資料の収集,保管,展示及び調査研究その他これと関連する事業を行う「博物館法」に定められた,博物館におかれる専門的職員」文化庁で定義されています。

その中でも、来館者であるお客さんと最も大きく関わるのが「作品の展示」でしょう。


学芸員はどう作品に向き合うべきか?

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それでは、学芸員は作品をどのように選び、展示していくのが理想的でしょうか?

杉本は、作品を展示して展覧会を開催する際、最低限守らなければならない項目として、「『美術館や博物館に並んでいるものはすべて本物』、という前提で来てくれるお客さんの期待を裏切ってはならない、ということ」を挙げています。

学芸員は「プロフェッショナル」として、責任と自覚をもって作品と向き合わなければなりません。

実際に作品を研究し、展示することで、作品についての専門家として存在するのが学芸員です。
そのため、展覧会では学芸員によって本物と判断された作品が展示されているものだと、お金を払って入館したお客さんは思うはず。また、実際にそうでなければならないはずです。

それでは、「責任」と「自覚」を持って作品と向き合うとは、具体的にどういうことでしょうか。

杉本は、その「プロフェッショナル」として、前の職場である黒川古文化研究所で以前所長を務められた中野徹氏を例に挙げ、こう述べます。

他の人の目が利くかどうかは、自分も同等かそれ以上にならなければ判断できない。だから「目利き」という基準は難しく、万人の基準たり得ないと思うのだが、少なくとも中野所長は他の人よりも目が利くと感じた。なぜか。
 それは中野所長が「誠実」で「正直」な人だからである。作品を見ることに対して「誠実」で「正直」、妥協がない。「情緒」や「感覚」で判断するのではなく、ことごとく「分析」なのである。
 「あやしいところがある」といった感覚的な言葉を用いたり、「○○先生や学界も認めているものだから疑う理由がない」といった権威主義的な発言をする人は多いが、少なくともこれまで会ったなかに、こと細かく言葉を尽くして論理的に説明しようとした人は中野所長をおいて他になかった。
作品を見る姿勢、そして見たことをちゃんと説明しようという姿勢が、そこにあるのである。自分に対し、そして作品に対して「誠実」で「正直」なのだ。

作品の真贋を含めた展示に伴う「判断」は、突き詰めずに見過ごせば、曖昧にして「決断という大きなプレッシャー」を負う分も少なくなるでしょう。

しかし、その「判断」に真っ向から向き合い、「自分を取り巻く社会の事象に関し、自身が判断、選択した結果に対してすべて責任を負うとの気概を持ち、その姿勢で職業に向き合っている人」が、作品と向き合う学芸員としてのプロフェッショナルである、というのが杉本の考えです。


ありがとうございました

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今回の杉本通信で、一つ思い出したことがあります。

高校生のころ、美術の知識はないけれどただ観るのが好きというだけで行った美術館の展覧会で、例えば葉を描いたときに葉脈の向く方向がバラバラ、というように、「同じ画家の他の作品と比較しても細かい部分が雑じゃない?」と思える作品がありました。
解説には「遊び心あふれる筆遣い」とあり、何となく腑に落ちないながらも「そういうものなのか…」と自分を納得させた記憶があります。

今思えば解説を書いた学芸員は、もしかしたら「判断」を曖昧にしていたのかな、という気もします。

私は社会人として働いたことすらないですし、きっとまだたくさんの未知の学芸員事情があるのでしょう。そうした中で、作品に常に「誠実」で「正直」でいることは、想像以上に困難なことなんだろうな、と思います。

ただ、展示する作品への態度は、ある意味お客さんへの態度に直結します。さらに、私の経験からわかることは、作品に対しての知識があってもなくても、その作品に対する態度がお客さん側から何となく感じ取ることができてしまうということです。

私も学芸員を目指す一人ですが、来館者側の目線から感じたことも忘れずに、作品に対して誤魔化しなしで向き合っていくことはずっと大切にしていきたいなと感じました。


今回も長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
また次回もよろしくお願いいたします!!

(本日の写真は、去年の研修旅行の際に行った姫路城隣接の庭園・好古園の薄、東北大学すぐ近くの国際センターで撮った空です。拙い写真ですが、東北大や本研究室に関する魅力を画像でお伝えできればと思っておりますので、こちらもお付き合いいただければ幸いです笑)


参考

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