帝王切開との付き合い方
全然読めていなかったナショナルジオグラフィックを読んでいたら、「人体にすむ微生物たち」(2020年1月号)という特集に帝王切開にまつわる興味深い掲載されていた。
ざっくり言うとこんな内容だ。
経膣分娩の赤子は産道や会陰・肛門の近くを通る際に母親のもつ微生物や細菌にふれる。それらをとりこみ、腸内に十分な微生物叢が形成されることで、免疫獲得につながる。
しかし、帝王切開だとその機会がないので免疫獲得が不十分となる。
人体というのは本当に良くできている。
あの大変な出産方法にも、免疫を伝える重要な役割があるのだ。
感動すると同時に、私は息子を帝王切開で出産しているので、そうかぁ息子の免疫獲得にも影響があったかしら、と少し凹んだ。
その旨をTwitterでつぶやいたところ、友人たちから想像以上に強めのフォローと励ましが届いた。
ちょっとびっくりするほどの強さだった。
やさしくて、教育関係の仕事についている人も多いので、「変えようのない事実」にとどれだけ人が傷つき惑わされ、情報に踊らされるかということを、よく知っているのだと思う。
ショックだったけれども、調べたら、離乳期には腸内細菌叢は両者で差がなくなり、分娩方法の違いがどこまで影響をあたえるかはまだはっきりしてはいないそうだ。
ひとまずはほっとした。
私が帝王切開でゆるがないのは
実は私自身、帝王切開で生まれている。
そのため、上記と矛盾するかもしれないが、あまり帝王切開で産んだことに負い目を感じていない方だ。
よく帝王切開だと「かわいそう」とか「邪道」とか「親の自覚が芽生えない」というが、私は自分が育つ中で自分を「かわいそう」だと思ったこともないし、母の愛情を疑ったこともない。
そんなわけで、自分が帝王切開で出産することになった時も「お腹切るのこわいなぁ」とは思ったが、申し訳ないとか後ろめたいといったことは全く思わなかった。
これから出産を控えている方で、帝王切開を恐れている方は、確かに医療的な介入が必要な事態という意味では大変だが、特に子は何にも思わないという例がここにあるので安心してほしい。
経験していないものはこわい
面白かったのは経膣分娩の友人と会ったとき「帝王切開大変じゃなかった……?」「いやいや、経膣分娩こそ……」とお互いがお互いの出産方法に過度に慄いていたことだ。
産後病院で見ていた限りでは、経膣分娩の方はやはり歩くのも座るのも大変そうであった。分娩の痛みも凄かったことだろう。
対して帝王切開は、腹を切るので大変だが、手術自体は15分程度で終わってしまった。私の場合座る痛みはなかったが、出血が多くて貧血をおこしたり、お腹に力を入れられなくて、新生児用ゲージから赤子を持ち上げるのをしばらくは看護師さんに手伝ってもらったりした。
義母からは「後陣痛が痛くて一晩中眠れなかった」と聞いていたが、「これが後陣痛か!」という痛みは多少あったものの、痛み止めも飲んでいたし、そこまでではなかった。
結局のところ、どちらの方法にも痛みもリスクもある。けれど、がんばって産んだことには変わりない。
仮に帝王切開がなんらかのデメリットを赤子に与えるとしても、今後も研究が進み対策は練られていくことだろう。
私はこれまで帝王切開で生まれたことを特に気にしたことはないが、仮に何か影響があったとしても、生まれてこれた幸いに比べれば気にかからない。
お産は何が起こるかわからない。毎回親も子も命がけだ。私がこのように考えているのは、運良く私も息子も無事健康に生まれたからかもしれない。
けれど、未だに帝王切開に対してなんやかんや言う人もいるそうなので、あまり気にせず過ごしている人もいると思っていただけたら幸いである。
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