「リチャード・ジュエル」どこまでが実話?
(リチャード・ジュエルのネタバレを含みます)
すっかり「実話の完全映画化」を早撮りすることで1ジャンルを確立した感のあるクリント・イーストウッド。今回の作品もそんな実話映画化の最新作だ。
冤罪事件として米国では有名なリチャード・ジュエルを主人公に、無実の罪を着せられる一般人と、無責任に煽り立てるメディア、大衆の愚かさを描く。
アトランタ五輪爆破事件は記憶に新しいが、こんな事になっていったのは正直知らなかった。
緊迫した爆発のシーンは声上げて驚いてしまった。
だが、観ているうちに最初の疑問が生じる。女性記者はFBI捜査官に枕営業を持ちかけて特ダネを得る。
え、こんなことが本当にあったの?どこかで誰かが書いた手記が元になっているのだろうか。
しかもこの女性記者、最後にはちょっとしおらしくなっていたので、観劇中、もしかしたら彼女が半生記みたいなものを出してるのかなと思いながら見てしまった。
事件自体、裁判まで行ったわけでもないので、主人公と弁護士が反撃を開始しても、そこに爽快なカタルシスがある訳でもなく、事件は淡々と終わりを告げる。
お母さんのスピーチにはちょっと泣いたけど。
いつものイーストウッド映画の如くクオリティは高い。俳優さん達の演技も素晴らしかった。
ただ全体的にあっさりとした印象を受けた。
さて、実話映画の醍醐味の一つは答え合わせである。
あのシーンのあんなセリフ、アレ、ホントだったんだ!とか、こんなシーンは演出の都合かみたいな。パンフやネットを見てそれを楽しむ訳なのだけれど、最初に目に入ったのは米国本土で女性記者の例の描写が事実無根で上映ボイコット騒動というものだった。え、やっぱりあんなことなかったの?だったら、どうしてFBIの情報がマスコミに漏れたのか。
そして女性記者は既に故人で仲間たちが名誉回復のために訴えているらしい。なんと後味の悪い話か。
パンフはイーストウッド映画特集や俳優さんの話ばかりで、ほとんど実際の事件については詳しく書かれていない。ネット情報にもない。
一つこういところが目立ってしまうと、何か興醒めしてしまう。
昨年の大河ドラマ「いだてん」でもこの答え合わせは楽しみだったのだけれど、演出と事実の差異がハッキリしていて、小説より奇なる事実に感動し、演出としてインサートされたフィクションにも粋だなぁと感心した。
この作品、ほとんどその答え合わせができない。
この映画でFBIがやっていることは犯罪に近いと思うのだが、それも全て事実だったのか?
もしかしたら原作になっているアメリカンナイトメアを読まねばならないのか?
そもそも実話を元にしたフィクションとして楽しむのがベストなんだろうけれど、作品内の伏線かと思った部分も回収しきれていないので、どうにもモヤモヤするのである。
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