才能[インスタントフィクションその12]

何もない。何も持たない。アイツとは違う。アイツは凄いやつだ。計画的で、仕事に抜けがなく、スピーディーになんでもこなす。なんてったって、話してると面白いし、楽しい。アイツと一緒に夜飲みに出かけると、女の子はみんなアイツばかり見ている。そんなやつだ。オレは何ができるだろうか。行き当たりばったりで、何かをやるともう一つが疎かになったり、さらには忘れたりする。仕事はいつも期限ギリギリで、何回も何回も繰り返し直さないと出せないような雑さ。口下手で何の話をすれば良いかもわからない。アイツは才能があるんだろう。オレには才能がないんだろう。オレはアイツが見えないところでどれだけ何をやっているかわからない。オレが頑張ってると言いたいわけじゃないし、むしろそんな努力すらできないが、アイツは多分すごく頑張っているんだろう。努力を才能で片付けるな、なんて言葉もあるけど努力できるのだって立派な才能だよな。

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