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短編

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情景を思いつくがままに文章にしてみました。 そしてそれを集めてみました。 インスタントフィクションです。
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#生きる

不死[インスタントフィクションその29]

どん、どん、どん、と扉が激しく叩かれた直後に、間髪入れず罵声にも似た声が飛び込んだ。
「なにしてんさ、何時まで寝てるつもりだい」
少年は寝てはいなかったが、なにをひていたわけでもなくそれゆえに少年は何をしていたかがわからず、もしかしたら少年は寝ていたのかもしれない。
「さっさと朝ごはん食べてしまいな!」
そう言い終わる前にはすでに足音は遠ざかっていた。まるでそれは嵐のように現れ、嵐のようにさっって

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沼[インスタントフィクションその11]

朝起きる。呼吸が重い。絡みつく何かを書き分けながら洗面所へ向かう。蛇口からです水はまるでスライムのようにゆっくりと垂れ落ちてくる。両の手で包み込むと、それはまるで水のように指の隙間からこぼれ落ちていく。たしかに掬い、顔を洗う。ゲル状の何かを塗りたくっているような不快感を堪えつつ、洗顔をすまし、長く垂れる水をまとった歯ブラシで持って歯を磨く。朝のエチケットをすまし、リビングへ向かおうとした時ふと、身

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