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香港 自由抑圧の新たな代償2つ

このニュース、日本でも大きく報じられています。
香港で大勢の若者らが民主化を求めて2014年に起こした抗議活動「雨傘運動」の中心にいた一人、周庭(しゅう・てい)さんがカナダに事実上の亡命をしたことが分かりました。

ここ数年、中国をめぐっては台湾との関係において関心が集中してきました。そうなった背景には、自戒を込めていうと、「もう香港は中国大陸の『手に落ちた』、次は台湾か」という荒っぽい現状認識があるように思えます。
しかし、多くの香港人たちは、「雨傘運動」の弾圧と一国二制度の終焉に直面しても、なお、自由を取り戻したいという強い意志を持ち続けているのです。香港をめぐる問題は終わってなどいないのです。

一方、中国側の視点に立てば、香港での自由を抑圧した代償は現出し続けています。ここでは、そうした代償として、周庭さんのニュースと、もう一つ、あまり日本では報じられていない米議会での「香港除外」の動きを掘り下げます。


カナダという新天地で

周庭さん、英語名Agnes Chowさんは日本語が流暢で、東京で記者会見を開いたこともあることから、日本での知名度が非常に高いですね。その周庭さん、長く沈黙を続けていたのですが、12月3日に約2年ぶりにSNS(インスタグラム)に投稿して▼自分はカナダ・トロントに滞在していること、▼香港には戻らない、と明らかにしたのです。
事実上の亡命宣言です。

經過深思熟慮,包括考慮到香港的形勢、自身安全、我的生理和心理健康,我決定,不回去報到了,也大概一輩子不會回去了。

https://www.instagram.com/p/C0ZL33POAej/

「香港の情勢、自分自身の身の安全、心身の健康状態などを包括的に熟慮した結果、香港に戻らないと決めた。おそらく一生戻ることはない」

この投稿では、香港警察による彼女に対する圧迫の実態も明らかにされています。
周庭さんは2020年に「香港国家安全維持法」に違反したとして逮捕され、21年6月に解放されたのですが、その後も定期的に警察に出頭することを要求されたということです。
また、カナダへの留学を申請した際には、「警察が祖国の偉大な発展を理解させてくれた」という一筆を書くことを要求され、それを呑んだことで留学が許可されたのだといいます。
周庭さんは、こうした措置で精神状態が不安定になったと綴っていますが、無理もありません。

今後、彼女はカナダを拠点に香港の民主化を訴え続けるとみられます。中国が「香港国家安全維持法」で一国二制度を形骸化させた代償として、海外から声を上げる人は増え続けるでしょう。

そうした動きに中国と今の香港政府は神経質になっていて、世界のどこにいようと若者らの情報発信を監視し、抑えつけようと躍起です。日本も無関係ではなく、11月には日本留学中の女性がSNSに投稿した内容のために香港の裁判所で実刑判決を受けたことが明らかに。

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