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香港 「国家安全条例」がもたらすもの

2月28日は、香港にとって一つの大きな節目となりました。
「国家安全条例」の制定に関して市民からの意見を受けつける、日本でいうパブリックコメント制度の最終日だったのです。
この条例がどういう位置づけのもので、「一国二制度」がもはや形骸化した香港にどのような影響を与えるかもしれないか、整理してみました。


再び頭をもたげた"Article 23"

ここ数年、香港では(憲法にあたる)香港基本法の23条、Article 23が大きな論争を巻き起こしてきました。
23条は、香港政府が独自に「国家安全条例」を制定することを定めたものです。しかし、1997年に香港がイギリスから中国に返還されてから現在まで、この条例はつくられてきませんでした。

理由はそう難しい話ではなく、「一国二制度」で認められた(はずの)言論の自由が条例によって制限されるのではないかと市民たちが懸念してきたためです。ひらたく言えば「中国化」に対する拒否です。

2003年にも条例を制定しようと香港政府は動きましたが、50万人規模の反対デモが起き、断念しました。こちら↓の記事は、全文を読もうとすると登録が必要ですが、写真はどなたでもアップで見られます。

香港の人口が全体で約750万人ですから、いかに大規模なうねりであったかが分かります。そして、このデモは、以後もたびたび襲来した「香港の中国化」に抗う活動の原点ともなりました。

世界の人権団体から非難殺到

しかし、習近平政権が2019年に「香港国家安全維持法」を強引に植えつけたことで抗議デモは極めて難しくなり、民主派の新聞「リンゴ日報(蘋果日報)が廃刊に追い込まれるなど、香港の自由は瞬く間に色褪せました。

社会を激変させた「香港国家安全維持法」ですが、それでもまだ足りない(と中国側が考える)部分を補完するのが、Article 23に基づいて制定されようとしてる「国家安全条例」とのこと。

条例の草案は9章で構成され、▼国家反逆罪、▼扇動罪、▼国家機密の窃盗、▼国家安全を脅かすデジタル活動、▼外国勢力による香港への干渉、などが取り締まりの対象になるとされています。

何が「国家機密」や「国家安全」なのか、外国人によるどういう言動が「干渉」なのか、それが条例でクリアになるのなら、必ずしも悪い話ではありません。
しかし、大方の予想は、条例は当局の思惑ひとつでどうにでも解釈され、政治的な批判を徹底的に封じるというものです。香港市民も外国人も対象にして。

戦前・戦中の日本にあった治安維持法に通ずるものがあります。

1月30日から2月28日まで、条例に関するパブリックコメントが受けつけられました。ですが、わずか約1か月間で、しかも春節の休暇も含んでいることからみても、香港政府が市民の声に広く耳を傾けるつもりがないのは見え見えです。

市民の側も、もはや声を上げても無駄だと諦めムードが漂い、街中は静か。
条例への反対デモが起きた…というニュースの見出しに気づいて読んでみたら、参加者は3人でした。

かつての50万人から、3人へ。残酷なほどの、桁の違いです。

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