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日韓 初めて共に飛ぶ

ただいまソウルにいます。隔年で開催される韓国最大の航空宇宙・防衛産業展示会「ソウルADEX」の取材です。
上の写真もADEXの会場で撮ったもので、韓国初の国産超音速戦闘機、KF21です。通称は日本語で「若鷹」を意味する「ポラメ/보라매」。初めて一般公開されました。

非常に活況を呈しているADEXに関しては、後日詳しく書こうと思います。今回は(ADEXに関連していると言えなくもないのですが)日米韓3か国の共同飛行訓練についてサクッと分析します。

日韓が初めて共に飛行訓練をすることに

「ダイナミック・コリア」とは政治や社会が激しく変わり続ける韓国に外国人(おそらく記者たちか)がいつしかつけた愛称(?)です。韓国自ら、観光キャンペーンのキャッチフレーズに使ったこともあります。いまだに分断国家であるという、その「未完成」さが激動の出発点ですが、いま、日韓関係もけっこう「ダイナミック」に動いています。
日韓にアメリカを加えた3か国が、この週末にも朝鮮半島の近くで共同の飛行訓練をすることが明らかになりました。ADEXの会場でも各国軍人らの間で話題になっています。

これまでも朝鮮半島近くで戦闘機や爆撃機の共同飛行訓練はありました。ただし、それは「米韓」あるいは「日米」という2か国の枠組みであって、今回のように日米韓3か国が共に飛ぶのは初めてなのです。
今までこうした訓練がなかった理由は簡単で、歴史認識の問題をめぐって日韓の摩擦が絶えなかったためです。とりわけ韓国において「韓半島に自衛隊機が飛来する」というのは、大日本帝国に統治される羽目になった歴史を想起させるのに十分なほど刺激的です。

しかし、こうした過去をめぐる不仲に米軍は閉口していました。というのも、北朝鮮を抑止するために日韓と訓練をするにしても、日本と1回、韓国と1回、ほぼ同じ内容の訓練を別々に行わなければならなかったためです。つまり、日韓はそれぞれ1回で済むけど、アメリカは2回実施してきたわけで、アメリカ軍にしてみれば時間、燃料、それにパイロットらの体力の浪費でしかありません。

こうした「日米と米韓で別々に」は、海上訓練でも似たり寄ったり。今年、とあるシンポジウムで米海軍の高官は「いやあ、同じ訓練を日本と韓国と別々にやるのって、けっこうシンドイんですよ。いつも『なんで一回で済ませられないんだ』と思います」と溜息をついていました。

今回、初めて3か国が共同で飛行訓練を実施することになったのは、言うまでもなく、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が徴用工訴訟の問題で解決への道筋を示し、日韓関係がダイナミックに好転した結果です。以前の記事でも指摘したように、この10年ほど、日韓両国は歴史認識をめぐっていがみ合い過ぎました。安全保障に関しても協力どころか足を引っ張りあうかのような無様な状態でした。
航空自衛隊機と韓国空軍機が(米空軍機と)朝鮮半島のそばで飛ぶのは、この「失われた10年」を挽回する重要な一歩となるでしょう。


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