「灰色地帯戦略」と「真的假的」
大詰めを迎えてきた台湾総統選挙。
中国の介入と、それを防ごうと奮戦する台湾の官・民の攻防も、ラストスパートに入っています。
(冒頭の写真は前回の総統選挙取材時)
相次ぐ気球の飛来
1月13日の台湾島選挙を目前にして、中国大陸から放たれた気球が台湾付近の上空に飛来するケースが急増しています。
台湾国防部によりますと、5日には2つの気球が相次いで中台間の暗黙の境界線とされてきた「中間線」を越えて台湾側に。うち1つは台湾本島の上空を横切ったといいます。
気球の目的は、分かりやすいです。中国共産党が「独立勢力」と忌み嫌う台湾の民進党が3期続けて政権を維持するのを阻止すべく、有権者たちの不安を掻き立てようというものです。
昨年から中国国務院の台湾事務弁公室は今回の総統選挙について「台湾は平和か戦争かという選択を迫られている」といったコメントを出して「民進党政権の継続は戦争に近づく」と威嚇していますが、気球もそうした不安を煽ろうという狙いがあります。
こうした思惑が込められて飛んでくる気球に関して、台湾国防部やメディアは中国共産党の「灰色地帯戦略」の一環だと説明し、有権者たちに冷静な対応を呼びかけています。
日本語だと「グレーゾーン戦略」ですね。
有事を「黒」、平時を「白」とみなして、「平時が乱されているのは確かだけど有事とは認定しにくい」微妙な攻勢を「灰色」と位置づけているわけです。
台湾国防部は気球が国際航空路の安全を損なうとして飛ばすのをやめるよう中国に要求していますが、中国側は「もはや『中間線』は存在しない」というスタンスで、聞く耳を持たない気がします。
フェイク情報を撃退する「Cofacts 真的假的」
総統のポストがかかる今回に限らず、近年、台湾では選挙が近づくたびにネット上のガセネタやフェイク映像が急増しています。
ニセ情報はあまりに多いですし、紹介することで拡散させても本末転倒なのですが、例えば台湾メディアが最近一つ紹介していたのは、中国の習近平国家が今回の選挙について「3人の候補者のいずれに投票しても意味はない。自分(習近平氏)が台湾の正統な統治者だからだ」と述べたとするフェイク映像が出回ったそうです。
「いかにも言いそう」な内容ではありますが、映像としてはニセであり、台湾の有権者たちに「いずれ中国に飲み込まれる」という無力感を植えつける狙いから作成されたとみられています。
台湾の民主主義そのものを低調にさせようというわけです。
このフェイク映像をフェイクと判定したのが、ネット上に溢れる情報の真偽を見極めている「Cofacts 真的假的」というプロジェクトです。
中国語で「真的(zhēn de)」は本当、「假的(jiǎ de)」はウソを意味します。
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