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「本音」で語られ始めた南北②

先日、Netflixのオリジナル映画「ロ・ギワン」を観ました。北朝鮮から逃れた脱北者たちをめぐるストーリーです。
脱北した人たちがまず身を隠すことになる中国を舞台にした場面は、かなりリアルでした。何より主人公のソン・ジュンギが以前の「太陽の末裔」などでの凛々しさとは打って変わって、拘束や強制送還に怯える脱北者の陰影そのもの。引き込まれました。

韓国の映画やドラマについての解説にかけては右に出る者はいない成川彩さんの「ロ・ギワン」深掘り記事は、こちら↓(少しばかりネタバレはあるので、できれば映画を視聴してから読まれる方がいいかなと)。

こうした映画の反響も一役買う形で、韓国では脱北者たちをどう保護し、どう韓国社会に適応できるようにするか、改めて議論が盛んになっています。


保守と進歩で対照的な脱北者への態度

何かと保守派と進歩派(革新派)の対立が鋭い韓国。脱北者たちへの向き合い方も例外ではありません。
構図は明確です。保守派は脱北者たちの保護や受け入れ、そして韓国社会で日のあたるポジションにつかせることに熱心です。進歩派は、そのいずれにも(比較でいうと)消極的。

違いの理由はこれまた明確、北朝鮮が脱北者たちを「人間の屑」などと罵倒して忌み嫌うためです。
北朝鮮との対決姿勢が目立つ保守派は北朝鮮が嫌うがゆえに脱北者たちの存在を大きく取り上げ、逆に北朝鮮との「同胞性」に重きを置く進歩派は脱北者たちの存在をプレーダウンします。

中国による強制送還

以前の記事でもお伝えしましたが、コロナ禍が緩和して中国と北朝鮮の人の往来が元に戻り始めたことで、中国の公安(警察)が脱北者たちをつかまえて北朝鮮に強制送還することも容易になってしまっています。

実際、昨年10月には600人もの脱北者が送還されたと韓国の人権団体が発表しています。中国政府はこれを否定しましたが、韓国政府は事実と判断して中国に抗議。

映画「ロ・ギワン」に直球で通じるような状況です。

脱北者の就職支援強化

こうした事態がきっかけの一つになったのか、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の脱北者支援が活発になっています。3月7日、尹大統領は趙兌烈(チョ・テヨル)外相に「北韓離脱住民に関する外交的保護を強化するように」と指示をし、「彼らが我が国に定着する過程で外交的・経済的・社会的配慮を惜しんではならない」と述べたということです。

外交保護とは、すなわち中国への働きかけが最重要なわけですが、習近平政権が耳を傾けるかは不透明です。

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