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【解説】今週の経済・投資イベント(2023/5/1〜5/5)

おはようございます。明日からの主要な経済・投資イベントについて見どころをまとめます。
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【日本】

東京市場は月曜と火曜のみとなります(水曜から金曜までゴールデンウィーク)。米国やユーロ圏ではその間に中銀会合や雇用統計など重要イベントが続きますので、事前にポジション整理をする場合は火曜までに忘れずに実施しましょう。
今週、日本の経済統計はさほどありませんが企業決算がいくつか予定されていますので、皆さまの持ち株やウォッチリストの銘柄があるかどうか確認しておきましょう。

■ 企業決算(参照:SBI証券
5月1日(月)
イビデン、大塚商会、ティーガイア、太陽HD、伊藤忠食品など
5月2日(火)
三井物産、日本たばこ産業、双日、JAL、ジョイフル本田など

ここでは、決算予定銘柄として「三井物産」と「日本たばこ産業」をピックアップします。

注目決算①:三井物産

三井物産は総合商社大手5社のトップバッターであり、来週(5月8日〜)に予定されている他4社の試金石になります。本決算となる23年3月期は、三菱商事と共に総合商社初となる最終利益1兆円を計画しており、日本企業でも数少ない純利益1兆円メンバーに入れるかどうかがひとつの見どころです。
参考)現在、純利益1兆円を達成しているのは8社しかいません(トヨタ自動車、三菱UFJFG、ソニーG、ソフトバンクG、東芝、ホンダ、日本郵船、NTT)

ただし、既に会社計画として発表している以上、1兆円は超えてしかるべき数字ともいえます。では、その他のどこに市場の注目が集まるのでしょうか?ここでは、その注目点として「今期業績予想」と「中期経営計画」を取り上げます。
歴史的な背景から総合商社の中でも資源に強みを持つ三井物産は、この2年間(22年3月期と23年3月期)において円安・資源高の恩恵を最大限に受けてきました。23年3月期は当初こそ減益予想を発表していましたが、ロシア・ウクライナ戦争が長引いたことや、円安が続いたことなどから2Qと3Qに上方修正を発表しています。
ただ、資源高を牽引した豪原料炭や鉄鉱石価格が23年3月期中頃から弱含みで推移してきたことを考えると、現状での今期業績予想は減益になるだろうとの見方が支配的です。足もとの株価は中期的な上昇トレンドが続いていますが、市場予想を大きく下回る場合には調整局面入りとなる可能性があります。
一方、仮に会社の今期業績予想が低調な結果となった場合でも、2つ目の注目点として挙げた「中期経営計画」がポジティブな内容であれば株価の下支えとなるでしょう。三井物産は23年3月期で現行の中期経営計画期間が終了し、例年通りであれば5月2日(火)の本決算と同時に新中期経営計画が発表されます。
三井物産に限った話ではありませんが、中期経営計画には基本的に見栄えの良い数字が並びます。例えば「3年後に〇〇兆円の利益を目指す」、「3年間の営業利益率をXX%以上にする」などです。ただし、このような数字をみて個人投資家(特にビギナーさん)がその実現可能性を正しく見積もることはかなり難しいでしょう。そこで、中期経営計画の分かりやすい論点として「株主還元方針」に注目してみてください。

株主還元では、例えば「総還元性向をXX%にする」「配当を累進的にする」など具体的かつ短期で実現可能な項目が並びます。特に三井物産は、次期中期経営計画で株主還元の強化を検討すると報道されていることから、株主還元方針がとりわけ注目されています。足もとの株価がどの程度の株主還元強化を織り込んでいるのかは分かりませんが、内容がポジティブであれば株価の下支え要因となる可能性が高いです(その他には東証の低PBR改革やバフェット氏の後ろ盾などが下支え要因として挙げられます)。
なお、三井物産の決算は14時に予定されており、いわゆる場中決算になります。従って、14時を境に値動きが大きくなることが予想されます。場中決算にあまり慣れていない投資家の方は値動きの荒さに驚くかもしれません。ただ、なにぶん大引けまで1時間しかないため、その時の相場の動きが決算内容を十分に反映しているとは言えません。中期経営計画の内容や決算説明会の内容が相場に織り込まれるのは翌営業日になるでしょう(その間にFOMCや雇用統計があり、決算とは関係なく株価の動向に影響を与える可能性があるのは悩ましいですが)。

注目決算②:日本たばこ産業

次に「日本たばこ産業(以下、JT)」です。JTは大企業の中でも突出した高配当株として個人投資家にも人気の銘柄です。JTは12月期決算のため、今回はQ1決算となります。決算の見どころはいくつかありますが、主要なところとしては①今期配当予想の修正有無②ロシア事業の動向の2点です。①の今期配当予想は既に188円(年間1株当たり配当金)と発表されており、これは前期実績と同じです。株主還元方針である配当性向75%の水準であり、よほど業績見通しが好調でない限り上方修正はありません。従って、ホルダーとしては予想の引き下げがあるかどうかに神経を尖らせることになります。もっとも、まだQ1であることに加えて、足もとではしばらく円安環境が続く様相であり、JTの大きなリスクファクターである円高による減益・減配にはさほど心配はいらないでしょう。
唯一、重大な影響を与えるとすれば②ロシア事業の動向が挙げられます。主要他社が相次いでロシア事業から撤退する中で、JTはひとまず事業を継続しています。2023年3月23日の参院予算委員会で本件が取り上げられ、その際に岸田首相は「自主的な経営判断で適切に対応すべき」との基本的な考えを示していましたが、JT自身は新規投資やマーケティングの停止、グループ経営からの分離などを選択肢として検討しているとの報道もあるため、今後も注目を集めるテーマとなります。
なお、他社が撤退することによってロシア国内でのシェアを高めることができるのは確かです。撤退の可能性を1年以上も検討しているJTの姿勢を見る限りでは、戦争が終わるまで判断を先延ばしにしたいとの思惑もあるかもしれません(※あくまで私見ですが)。ただ、日本政府が株式の1/3を保有する特殊な企業であることを考えれば政治と無関係であるとは言い難く、JTへ投資する際にはロシア事業の撤退(あるいは分離)を大きなリスクファクターのひとつとして認識しておく必要があります。

【米国】

FOMC

米国市場では一にも二にもFOMCに注目が集まります。ただし今回のFOMCは前回と異なり金利見通し(ドットチャート)などが公表されることはありません。そのため、基本的には「利上げが行われるかどうか」に着目することになりますが、その利上げについても0.25%ptの引上げがメインシナリオとなっておりサプライズへの警戒感(あるいは期待感)は小さいです。
従って、日本時間4日木曜の午前3時に発表される政策金利は無難に通過するとの見方が多い一方で、予見しがたいのは同3時半から予定されているパウエル議長の会見内容です。もっとも、金融不安などへの所見はこれまで多くのFRBメンバーから示されており、十中八九「米国の金融システムは堅牢である」という旨の発言が聞かれることになるでしょう。一方で、利上げの終了に関する発言については、投資家として神経を尖らせることになります。市場は今回のFOMCでの0.25%引き上げを以て利上げ局面が終了するとの予想が多いです(更に利上げするとの見方が少なくないのも確かですが)。しかし、インフレ指標はさほど弱まっておらず、FRBメンバーにも更なる利上げを求める声があります。パウエル議長の発言のトーン次第ではありますが、利上げ停止が主として想像される発言であれば株式市場にとってポジティブ材料になる一方、利上げ継続の検討を示唆する発言であればネガティブ材料になるでしょう。
次々回FOMC(6/13-14)までにCPIなど重要指標が多数予定されていますので、「利上げ局面は終了にかなり近づいているが、データ次第」という旨の発言に終始するだろうと私は考えていますが、どのような内容が発せられるか注目です。

ISM統計・JOLT労働調査

そのFOMCに先立ち、ISM製造業景気指数JOLT労働調査にもアンテナを張っておきたいです。ISM製造業景気指数は「景況感」を示す指標で、JOLT労働調査はその名の通り「労働市況」を示す指標です。ISM統計はあくまで企業アンケート調査の結果であることから政策決定に大きな影響を与えることはないと見られますが、速報性のある指標であることから景況感のトレンドを把握しておく上で重要な指標です。JOLT労働調査では特に「求人件数」に注目が集まります。直近では2年弱ぶりに1000万件を下回っており、今回も微減と予想されています。パンデミック前を考えればまだまだ高水準であることに変わりありませんが、労働市場もやや減速していると判断できます。仮に、求人件数が大きく落ち込む場合には、インフレ抑制期待と景気後退懸念が天秤になることでしょう。

その他の経済指標では、FOMC後の雇用統計にも注目です。市場予想では非農業部門雇用者数変化が若干減速するものの失業率や平均時給などは概ね前回と同水準となっており、雇用市場の堅調さが織り込まれています。失業保険関係統計が依然として堅調であり、JOLTの求人件数も高水準であることを鑑みれば、雇用統計が急速に悪化する兆候はまだ見られません。

Apple決算

経済指標以外では企業決算に注目です。日本時間5月5日(金)午前5時に予定されているAppleは直近四半期で大幅な減益となっていることに加えて、PC出荷台数が大幅に減少、主力のスマホも世界市場全体で低調であることから決算への警戒感が高まっています。
なお、市場予想では売上高930億ドル(前年同期比▲4.4%)、1株利益1.43ドル(同▲5.7%)の減収減益となっており、まずはこの市場予想を上回るかどうかがポイントです。その他、製薬大手Pfizerや半導体大手のAMDの決算も市場の注目を集めるでしょう。

【その他】

ユーロ圏ECB理事会がFOMC後の5月4日に開催されます。前回3月のECB理事会ではリセッション懸念よりもインフレ退治を優先し、0.5%の利上げを実施しました。その後、ECBメンバーの中には引き締め水準が終わりに近づいてきたと発言する者も出始めており、今回のECB理事会では0.25%への利上げ幅縮小がメインシナリオになっています。先日発表のユーロ圏1-3月期実質GDPがかろうじてプラス成長となり2四半期連続でのマイナス成長を回避(テクニカル・リセッションを回避)したことに加え、欧州委員会が2023年の成長率予想を今年に入ってから引き上げるなど経済の底堅さが意識されています。その中でインフレは未だに高水準であることから、引き続きインフレ退治を第一に政策運営をしていくものと考えられます。

今週の見どころは以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。よい一週間をお過ごしください!


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