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地域のつむぎ手の家づくり|家族が自らカスタマイズできる庭を提案 暮らしづくりのリーディングカンパニーへ<vol.15/アクロスホーム:長野県上田市>

【連載について】“地域のつむぎ手の家づくり”って、なに?
家づくりをおこなう住宅会社には、全国一律で同じ住宅を建てる大規模な会社や、各地方でその土地の気候に合った住宅を建てる小規模な会社など、さまざまな種類のつくり手がいます。その中でも、その地域ならではの特色や、そこで暮らすおもしろい人々のことを知り尽くし、家をつくるだけでなく「人々をつなぎ、暮らしごと地域を豊かにする」取り組みもおこなう住宅会社がたくさん存在します。
この連載では、住宅業界のプロ向けメディアである新建ハウジングだからこそ知る「地域のつむぎ手」を担う住宅会社をピックアップ。地域での暮らしづくりの様子をそっと覗かせてもらい、風景写真とともにお届けします。

今回の<地域のつむぎ手>は・・・

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「家に恋しよう。」を家づくりのコンセプトとして掲げるアクロスホーム(長野県上田市)は、いずれも直営で、園芸店「GREEN(グリーン)」と家具・インテリア・雑貨、DIY・工具・アウトドア用品などを取り扱うホームショップ「ACTIS(アクティス)」を運営しながら、「家での暮らしを楽しむ」ことをトータルで提案しています。

「地域の“子育て世代の最大の味方”になりたい」と話す同社会長の田中克明さんは、コロナ禍で高まる「家や庭を楽しみたい」というニーズに、地域の暮らしづくりのリーディングカンパニーとして応えていきたい考えです。

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会長の田中克明さん

「家庭菜園」のニーズ拡大

「コロナ禍で種苗メーカーは史上最高の利益をあげていると聞きます。ホームセンターの園芸コーナーも活況で、庭(樹木や草花)に対する生活者の注目度の高さがうかがえます」と田中さんは話します。自社直営の園芸店・グリーンも、昨年の緊急事態宣言解除後から、相談件数が増加。同店店長の児玉せつ子さんは「『家庭菜園が欲しい』といった相談が増えるなど、コロナの影響を感じます。ミニトマトなど実がなるものも人気で、子どもたちと一緒に育てたり、収穫したりしながら家にいる時間を楽しもうという志向が顕著に表れています」と説明します。

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直営の園芸店「GREEN(グリーン)」
樹木や草花、ガーデニングが大好きなスタッフが来店者の相談に応じる
住宅事業の庭・外構づくりと密接に連携している

コロナ以前から、住宅と庭・外構の一体的な提案に力を入れてきたアクロスホームでは、実店舗を構えていることで、生活者のニーズをいち早く察知し、それを提案に生かすことができます。児玉さんをはじめ3人いるグリーンのスタッフはいずれも自社の社員で、住宅事業と密接に連携します。

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左からアクロスホームの田中会長、内田さん、
グリーンの児玉せつ子店長、アドバイザーの高城優子さん

田中さんは「コロナで特に感じるのは、来店者は、ただモノを買いに来ているのではなく“相談がしたい(情報を得たい)”ということ。その点、うちのスタッフは3人とも樹木や草花、ガーデニングが大好きでたまらない人たち。品数や値段の安さでは大型店に及ばないかもしれないが、コミュニケーションはどこにも負けない自信があります。2つとない、その人や家族だけの庭をつくるためにはうってつけの相談相手なんです」と胸を張ります。

トータルブランディングを重視

住宅との関係性を踏まえた庭・外構のプランニングや施工管理については、アクロスホームの住宅事業部に所属するガーデンプランナーの内田和美さんが中心となって手掛けます。新築やリフォームの顧客から、店舗(グリーン・アクティス)を通じた庭・外構だけの依頼と、案件の種類は幅広いそうです。

内田さんは、グリーンやアクティスのスタッフと顧客を交えて綿密にヒアリングを重ねながら、グループ企業の若手2人の専属施工部隊とともに、「家での暮らしを楽しめる庭」「家の雰囲気にマッチした外構」を仕上げていきます。「私たちが提案する以前に、お客様の方から『グリーンやアクティスのお店のような雰囲気にしてほしい』という希望も多いんです」と内田さんは話します。

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グリーンの目の前にある小屋で、家づくりの顧客と庭・外構について
打ち合わせをするガーデンプランナーの内田和美さん(右)

これは実は、田中さんが思い描いてきた形です。それぞれの店舗の建設計画の段階から、内・外装や取り扱う商品に至るまで、自社が手掛ける住宅との統一性・親和性を重視しながら地域における自社のブランディングを図ってきた結果なのです。

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家づくりでは、家族の成長や歴史を見守る
“シンボルツリー”を植えることを提案

庭活用をスタンダードに

田中さんは、コロナにより地方の自然や住宅などの庭に対するニーズは、さらに高まっていくと見ています。最近、同社には地域の医院や店舗などからの植栽の管理の依頼が増えているそうです。これについて田中さんは「実は樹木の剪定といった従来の造園業的な仕事ではなく、季節によって草花を植え替えて訪れる患者さんに癒し効果を与えたいといった要望が多く、当社ならではのノウハウを生かせます」と話します。

「信州という自然豊かな地域性もあり、人を癒したり、遊ぶことができたり、よりダイナミックでオリジナリティーのある庭を提案することで、さらに暮らしの楽しさを広げていきたい」と田中さん。今後は、内田さんたちのチームを独立部隊とし、庭・外構の提案とブランディングをさらに強化していくビジョンを描きます。すでに「YARD(ヤード)」というブランド名も決めているそうです。

グリーン・店長の児玉さんは、コロナ禍は大変な状況と認識しつつも、「若い世代に、心の癒しとして室内に緑を配したり、庭で家庭菜園を楽しんだりすることが広がっていくのはうれしい」とし、コロナが収束した後もスタンダードなライフスタイルとして定着してほしいと願っています。児玉さんが訴えたいのは、家族で一緒に庭遊びや庭仕事を楽しむことが、暮らしをより豊かなものにしていくという効果です。「例えば休日に子どもたちと一緒につくった料理に、庭先から摘んできたハーブを散らしてひと味加えるだけのことでも、楽しさや豊かさを感じられると思いませんか」と児玉さんは投げ掛けます。

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ちょっとしたスペースであったとしても、
子どもたちと一緒にハーブや小さな野菜などを育てることが
おうち時間の充実や暮らしの豊かさにつながる

親子の絆や教育への効果も

田中さんは「家族が遊び、季節によって表情を変える庭が、家とともに家族の思い出を刻みながら変化し、毎年、同じようだけれど木々は少しずつ育っていく。それは何物にも代えがたい家族の大切な財産になるはずです」と語ります。木々の成長や遊び方、楽しみ方の変化に伴って、子どもたちと一緒に庭をカスタマイズしていくことは「親子の絆や子どもの成長(教育)にも有意義に作用します」と指摘。

同社では、アクティスを通じて、そうした庭遊びや庭のカスタマイズを、より楽しむために必要なガーデニンググッズや工具、アウトドア用品なども提供し、暮らしを楽しむことを徹底的にサポートしているのです。

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グリーンと同じ敷地内にあるホームショップ「ACTIS(アクティス)」
スタッフの荒井かおりさん。外構に欠かせないポストをはじめ
庭を楽しむアウトドアグッズや工具、インテリア・家具、雑貨など、
一般来店者への商品販売に加えて、家づくりの顧客向けた提案も行う

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アクティス店内に並ぶアウトドアグッズと各種工具。
「おしゃれさ・かっこよさ」にこだわり、
自社の住宅との雰囲気の調和なども考慮している


田中さんは、「庭・外構、インテリア・家具・雑貨、そしてその先にある家族の幸せで豊かな暮らしをトータルで提案することにより、暮らしづくりのリーディングカンパニーとしての地域での自社のブランドを確かなものにしたい」と考えています。田中さんが描くビジョンは形になりつつあります。

同社の顧客は、20代後半~30代の一次取得の子育て世帯が圧倒的に多く、なかでもアウトドアや釣り、自動車・バイク・自転車といった趣味など「アクティブに暮らしを楽しもう」とする人たちが多くなってきているそうです。

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顧客は20代後半~30代の一次取得者の子育て世代が多い

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ピザ窯に興味を持つ人も増えている

同社は“子育て世代の最大の味方”の立ち位置で、そういった家族の夢の暮らしの実現に寄り添います。「暮らしをどん欲に楽しもうとするお客様のライフスタイルから学ばせてもらうこともあります」と笑顔で話す田中さんは、コロナによる生活者のニーズの変化を追い風ととらえて、顧客と刺激し合いながら自社を成長させ、地域でのより豊かで楽しい暮らしを広げていくことを目指します。

文:新建ハウジング編集部
写真:アクロスホーム提供

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