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合理的配慮と合意形成にむけた支援(障害者雇用編)

先日、新潟市の皆さんたちと「発達障害就労支援セミナー(企業向け)」を開催しました。

キーワードは、「認知特性」「心理的安全性」「面談技法」「合理的配慮」などで、企業向けということもあって僕自身にとっても新たな視点によるたくさんの学びがありました。

特に合理的配慮については学びと気づきも多く、企業側の悩みなども改めて感じることができました。
普段の福祉から雇用への就労支援では見えない視点も感じれたため、今のうちに学んだことをまとめておきたいと思います。

合理的配慮とは

以下は、内閣府による障害者差別解消法のリーフレットからの引用です。

合理的配慮は、障害のある⼈から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者に対しては、対応に努めること)が求められるもの。
重すぎる負担があるときでも、障害のある⼈に、なぜ負担が重すぎるのか理由を説明し、別のやり⽅を提案することも含め、話し合い、理解を得るよう努めることが⼤切。

ここでのポイントは「意思の表明」です。
障害のある人から、なんらかの「配慮願い(表明)」があった場合には、職場は過重な負担にならない範囲で合理的配慮を検討し、障害のある人と話し合いを行う必要があります。

職場でのエピソード

合理的配慮は「意思の表明」があった上で話し合いが進むため、「配慮願いの内容」によっては職場を悩ましたり、対応に苦慮する場合もあるようです。

特に、職場が対応に悩むケースの多くは、本人からの配慮願いがわがままや自分勝手な主張に感じられる場合でしょうか。

・一人で過ごす休憩室を作ってほしい
・周りが気になるため、自席に衝立を設置してほしい
・焦ってしまうため、納期のない仕事を担当したい
・自分のペースで仕事をさせてほしい
・ミスしても注意しないでほしい
・業務の手順やルールを押し付けないでほしい

職場としては、「合理的配慮ではなく『特別扱い』」となってしまうことに心配があるようです。
他の従業員とのバランスを保つなかで、配慮願いに対してどのように対応するかが悩ましいように思います。

合意形成の進め方

一般的には、配慮願いがあった場合は以下の流れで話し合いを行います。
障害のある人と職場で話し合いながら、「合意形成」を進めていくこととなります。

① 障がいのある⼈からの意思表明(配慮願い)
② 希望や理由を聞き取る
③ お互いの意見を尊重しながら話し合う
④ 負担のない範囲で対応可能な内容を検討する
⑤ 職場で対応できることを伝える
⑥ 理解が得られるよう理由も伝える

ここでのポイントは、⑤と⑥でしょうか。
障害のある人に分かりやすく伝え、丁寧に対応することが今後の関係性や継続的な話し合いを成り立ちやすくするように思います。

また、以下は配慮事項としてよくある内容です。

(1)物理的環境への配慮
(2)意思疎通の配慮
(3)ルールなどの柔軟な変更

特に(3)は、個別の配慮願いに対して「どこまで柔軟に変更できるか」がポイントでもあります。
周りの従業員から特別扱いと言われることなく、障害特性に応じた配慮のために柔軟な変更を検討することは、職場側の文化やスタンスも影響してくるように思います。

話し合いの進め方

先ほどまでは、合理的配慮を検討する上では障害のある人と職場での話し合いが必要とありました。
話し合いの中で合意形成が生まれていき、その結果として合理的配慮の提供がなされることとなります。

また、すぐに合意形成ができない場合は、「継続的な話し合い」が必要でもあります。
お互いが少しずつ歩み寄り、理解し合うことで配慮事項を見出していくことも大切な視点となります。

話し合いの際、職場としては以下がポイントとなります。
必要事項を押さえながら、話し合いを進めていくことが求められるように思います。

1.まずは、本人の言い分や主張を聞く
2.主張するに至った理由や背景を聞く(もしくは探る)
3.職場から、合意形成に向けて複数の提案をする
4.提案に対する本人の意見や理由を聞く
5.まずは試しにできそうなことはないかと提案する
6.本人に、自分なりに取り組みやすいものは何かを尋ねる
7.継続的に話し合うために、試したことや取り組んだことの感想を教えてほしいと伝える
8.次の面談日を決めて、面談を終える

さて、ここでのポイントは「納得感」です。
上記の流れで進めていく際、本人からの配慮願いがわがままと思えてしまう場合もあるかもしれません。その際、職場としてはどうしても本人を説得したくなってしまうことがあるようにも思います。

ただ、一緒に働くことを考えると、本人と職場の関係性が悪くなっては元も子もありません。
理想は、双方の関係性を深めていく中で合意形成に努めていく必要があり、そのためには「納得感」が今後の話し合いをスムーズにし、それが本人の成長や戦力化につながることが期待できます。

改めてになりますが、話し合いを進めるためには「本人の納得感」がポイントとなります。

円滑な話し合いのための補助ツール

よくあるのは、「自己評価」と「他者評価」をそれぞれが点数づけをして、紙面にてお互いの意見を確かめ合うことです。
これはこれで、合意形成を進めるための有効なツールと思います。

発達障害や知的障害など認知機能に障害のある人の特性を考えると、口頭のみによる話し合いは話した内容が覚えられなかったり理解できなかったりすることもあるため、視覚的なもので情報を補う必要があります。
そのためには、紙面やデータなどは有効な補助ツールです。

・評価表(自己評価と他者評価)
・成績や実績表
・業務マニュアル
・予定表
・日報や週報
・入社時オリエンテーション資料
・就業規則

障害特性を前提にすると、「視覚的な情報」があることは「話し合いを行う上での合理的配慮」にもつながります。
話し合いの内容によっては、客観的な事実をきちんと確認した上で配慮事項を検討する必要もあるため、事実を示すことにもなる視覚的な情報は重要なツールになるか思います。

まとめ

今回は、企業向けに合理的配慮の進め方を考えてみました。
特に、「合意形成の進め方」を中心に書き進めていきました。

・障害のある人から「意思の表明」があれば合理的配慮を検討する必要がある
・話し合いをしながら合意形成に努め、その上で配慮事項を決める
・円滑な合意形成のためには「視覚的な情報」が有効である
・本人と職場の関係性を深めていき、「継続的な話し合い」で合理的配慮を一緒に考えていくことがポイントとなる

合理的配慮は、言葉だけを見ると難しそうな印象を感じますし、進め方も難しいために職場側で苦労されることもあるかと思います。

ただ、合理的配慮は「環境調整」という意味もあります。
他の従業員も含めて、それぞれが働きやすくなるための「環境調整」と理解しながら、継続的な話し合いを進めていってもらえたらと思います。


以下のブログについても、ご参考にしていただけたらと思います。

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