就労支援の質とはなにか?
サービスの質、雇用の質など、「質」はこの業界でよく話題となる言葉です。障害福祉サービスを利用する方は増加傾向にあり、障がい者雇用の法定雇用率も上昇改定に伴って数は増え、量より質が問われています。
さて、今回のテーマは「就労支援の質」について。果たしてどんな意味をもつのでしょうか。
改めて、考えてみたいと思います。
質とはなにか
「質」とはなにか?で考えてみると対になるのは「量」ですから、質と量の違いから考えてみたいと思います。
まずは、流行りのChatGPTからを引用してみようと思います。以下の質問をしてみると、こんな答えが返ってきました。
無難な回答ですが、一瞬で回答してくれるところは素晴らしいですね。こうやってブログを書いて解説するよりも、ChatGPTのほうが早くて正確なのかもしれないです…。
「質」とは、上記にもあるように「どのようなものか?」と捉えることができます。
上記の例では、食材の質や調理技術の高さとあるので、福祉サービスで考えるとサービス提供する職員の質、支援技術の高さも質に影響するように思います。
また、例には料理を楽しむ際の味わい深さや繊細さとの記載もあり、食事をする人の感じ方も質に影響するとなると、障害福祉サービスは利用する人が障害のある人の「満足度」「支援後の感じ方」も質の評価に影響するのではないでしょうか。
質は量のような数の多さではなく、「提供者の質」「提供する中身」「相手の感じ方」などが質を構成する要素になりそうです。
説明できる支援、根拠ある支援
テーマである「就労支援の質」で考えてみると、支援の中身を問うことが質をより良くすることに繋がるように思います。
支援の中身で見てみると、
など、中身(支援内容)についてきちんと語れる(検証できる)ことがプロとしての当たり前さでもあり、そこを重要視することで質を保つことにも繋がりそうです。
少し話は変わりますが、僕が所属する社会福祉法人北摂杉の子会では、全職員に向けた行動指針(クレド)があり、そこには「説明できる支援」「根拠ある支援」の言葉があります。僕自身、この言葉は結構気に入っています。
パートタイマーであれ、正職員であれ、僕らはこの仕事(利用者支援)で給料をもらっているわけですから、アマチュアではなくプロってことになります。
利用者の方に「支援内容の説明をしてほしい」「どうしてこの支援が必要なのか教えてほしい」などと聞かれたらきちんと説明する必要があり、そこには根拠も必要になります。
支援の質を考えるなら、「説明ができること」「根拠があること」は何よりも大切なんだと思います。場当たり的に行う支援はプロではないわけですから、ここに「質」を紐解くヒントがあるように思っています。
アセスメントの重要性
説明できる支援、根拠ある支援の視点で考えていくと、やはり、「アセスメント」は重要です。
アセスメントを簡単に表現すると、「ご本人をよく知るための作業」って感じですから、本人のことを正しく知っていないと支援の説明もできないし、根拠もなくなってしまいます。
就労アセスメントは、noteでも度々書いてきたので、詳しくは以下のnoteにバンドンタッチしておきます。
読んでくださればうれしいです。
専門職のおごり
さて、少し視点を変えて、支援者自身の話をしたいと思います。
テーマにあるおごりとは、「いい気になることや思い上がること」を意味するとgoo辞書には記載がありました。
支援の質を高めるためには、専門職としての「知識」「技術」「経験」が必要なことは言うまでもないですが、専門職として思い上がってはいけないってことでもあります。
就労支援の質は、先ほどでも触れたようにサービス提供先である利用者の方の満足感や気持ちは大事な視点であり、その先にはご本人のQOL(生活の質)の視点も質に大きく関連するように思います。
いくら専門的な支援が提供されていたとしても、相手となる利用者の方自身が支援内容をどのように感じるか、それによって生活は充実したかなどは大切な視点です。
専門職としての「知識」「技術」「経験」が備わっていることに加えて、専門的な支援を利用者の方が選べる、もしくは支援内容の説明を受けた上で納得して支援サービスを利用することが結果的には質を高めることにもつながるでしょうか。
そうなると、専門職であることに思い上がることなく、偉そうにすることもなく、一人ひとりに向き合って寄り添う専門的支援があることで質は保たれるんじゃないでしょうか。
おごりと表現するとたいそうな話ですが、支援者一人ひとりが支援の質を自分事で考えることも大切になりそうです。
チェックリスト
これもうちの法人の取り組み事例になってしまいますが、法人では「権利擁護・虐待防止委員会」が設置されていて、10年以上の取り組みを続けています。
法人内の各事業所に権利擁護虐待防止委員を設置し、委員となる職員は法人全体で開催する2ヶ月に1回の委員会に出席して事業所ごとの事例や取組を共有する会となっています。
また、法人内において権利擁護や虐待防止に関する事案が発生した場合には臨時の委員会を開催し、法人全体において「人権意識」を高めるための取り組みを継続的に実施しています。
そんな権利擁護・虐待防止委員会では、定期的に「業務の振り返りチェックシート」を使って支援員が自分自身で支援業務を振り返る機会を作っています。先ほどの「支援者一人ひとりが支援の質を自分事で考える」の取り組みの一つでもあるでしょうか。
以下は、振り返りチェックシートの抜粋です。本来のものはもっと項目が多いんですが、以下の抜粋版で就労支援の質を確かめていただけたらと思います。
誰のための就労支援か
仕事仲間であり、友人でもある金川さんに声をかけてもらい、「ゼロから始める就労支援ガイドブック(2022年8月刊行)」に少しだけ執筆をさせてもらいました。
僕の担当は「第1章3就労支援の心構え(12〜17p)」で、執筆時は心構えってなんなんだ〜?って毎日自問自答してた気がします。
詳しくは本書を読んでくだされば嬉しくて、本書には「誰のための就労支援か」についても触れています。
答えは言うまでもなく当たり前なことですが、「働きたいと願う障害のある人のため」と書いていて、その上で追加の視点も書いています。
誰のための支援かは支援者みんなが知ってることでしょうし、その先にあるのは就労支援によるご本人の生活の変化であって、QOLがより良くなることが最終的な目指す視点なように思います。
就労支援の就労を就職と定義するなら、就職はゴールではなくスタートであって、就職は手段であって目的ではないと思います。
就労支援の質で言えば、就労できるために支援をしていくことも大事な一方で、ご本人の自己実現、ご本人の私生活の充実のために就労(就職、社会参加)があるわけで、そこを目指した就労への支援が「質」をより良くしてくれるものと思います。
このあたりが「質」を保つことにつながっていくんじゃないでしょうか。
そうなると、やはり、一人ひとりの人権や権利擁護も大事な気がして、本人ファーストで就労支援を進めていくことによって、結果的に質も保たれるように思います。
まとめ
質を改めて考えると様々な視点で検討が必要で、なんだか難しさも感じてしまいますが、「質」を意識するよりもまずは「ご本人のために」を意識することが結果的には質をより良くしていきそうに思います。
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