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サンタは正月何してるんだ?

「おい松尾」
「どうした五十嵐」
「サンタは正月何してるんだ?」
「配送ミスの対応だな」
「…プレゼントの?」
「そうだ。考えてもみろ。プレゼントを求める子供は全世界で10億人もいるんだぞ? 誤配送が起こって当然だ。サンタを責めるな」
「すまん!」
「とはいえ、サンタ側の過失ではあるからな。対応はすべきだろう。問題は逆の場合だ」
「逆? 子供側がやらかす場合もあるのか?」
「ああ。クレームをつける子供がいるんだ。『思ってたプレゼントと違うので交換してください』と」
「なにぃ!?」
「横柄だろう? そんな輩はサンタ業界でモンスターキッズと呼ばれている」
「モンスターキッズ…」
「キッズは無茶な要望をするんだ。プレゼントの交換を求めたり、プレゼントを指定したり」
「指定もするのか!」
「手紙でな。一度読んだことがある」
「どんな手紙なんだ?」
「こんな手紙だ」
『親愛なるサンタさんへ。ぼくの名前はケンタです。毎年プレゼントをありがとうございます』
「書き出しは謙虚だな」
『サンタさんにお願いがあって手紙を書きました。サンタさんお願いです。消費税を下げてください』
「消費税!?」
『減税というプレゼントがほしいんです』
「無茶だ!!」
『ここ10年、国民の平均年収は横ばいです。にもかかわらず、消費税は倍になりました。ただただ日本人は貧しくなったのです』
「ほんとに子供か!?」
『減税は全国民が求めています。ぼくだけじゃないんです。どうかお願いします』
「サンタには無理だ…」
『どうしても難しいなら、別のプレゼントでもいいです。ぼくの部屋の片付けとか』
「家事代行!?」
『もしくは、ぼくの名前を変えてください。ケンタという名前を』
「なぜだ?」
『自分の名前が嫌いなんです。両親の好物からとった名前なんですよ?』
「好物ってなんだ?」
『ケンタッキーです』
「それでケンタ!?」
『ぼくの両親は毒親でしょうか?』
「否定できない…」
『早く大人になって改名したいです』
「っという手紙だ。サンタの元にはこんな便りが毎日届いている」
「サンタって大変だな!」
「まったくだ。こうしたモンスターキッズに加え、個人情報も保護しないといけないからな。子供の住所が流出して問題になった例もある」
「時代だな…」
「加えて、そもそもサンタは重労働だ。真冬の夜中に走り回り、大量のプレゼントを届け、クレーム対応もさせられる」
「ブラック企業じゃないか!」
「だが志望者は後を絶たない。彼らは子供たちの笑顔のために立ち上がり、現実に打ちのめされ辞めていく。その繰り返しだ」
「やりがい搾取じゃないか!」
「いかにも。それゆえ慢性的な人手不足に陥っているんだ」
「熱意だけじゃ続かないよな…」
「ああ。抜本的な改善策が求められる。近々国会で議論するらしい」
「嘘だな!」
「嘘だ」
「……」
「……」
「おい松尾」
「どうした五十嵐」
「結局、サンタは正月何してるんだ? 配送ミスやクレーム対応があるのはわかった。でもずっとじゃないだろう?」
「そうだな。一段落ついた後はアレの準備をしている」
「アレ?」
「1月はアレの季節だろう?」
「なんの季節だ?」
「確定申告」
「サンタって納税するの!?」

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