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ペロブスカイト太陽電池とは?

突然ですが「ペロブスカイト太陽電池」ってご存じですか?
昨今「ヨウ素」や「ペロブスカイト」やらで株式市場が大動乱で気になっていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
従来の太陽光発電は”パネル”でしたが、未来の太陽光発電は”フィルム”です。
この”未来のフィルム型の太陽電池”こそがペロブスカイト太陽電池です!
従来のパネル型では実現できなかった壁面や車の屋根等にも設置できます。
というのも…この素材…
なんと曲がります。光を透過します。片手で持てます。しかも低コスト。
その上、変換効率25%耐用年数20~30年とパネルと遜色ないのが驚きです。

今回はペロブスカイトについて深堀していきたいと思います!
(筆者は書きながらいろいろ妄想が膨らんでしまいました💭最後までお付き合いいただけたら嬉しいです…。)


ペロブスカイト太陽電池の苦悩の歴史

ペロブスカイト太陽電池は2009年に桐蔭横浜大学の宮坂 力(みやさか つとむ)教授らによって開発された技術です。
この技術が太陽光発電設備として市場に出回らなかった理由は、
長年変換効率が思うように伸びなかったこと。パネル型と比べ耐用年数が半分ほどの10~15年程度と耐久力に欠けるものだったためです。

次世代の太陽光発電?

日本は国土面積に対する太陽光発電の導入量が世界で1位
これは脱炭素化社会の促進を世界にアピールできる大きな実績の一つです。
しかしもう既に設置できる土地が少なく、パネル型の技術開発は頭打ち。
理論上パネル型の変換効率はピークに近い状況で各メーカーは価格競争中。
更には半導体や原材料のシリコンの価格も高騰し、撤退を決めた企業は世界でも少なくありません。
そんな頭を抱え悩んでいたところのペロブスカイト太陽電池!
開発当時は期待されたが、前述したように耐久力、低効率という観点から一般家庭への普及は叶いませんでした。。

変換効率の研究が進み…。

開発当初の変換効率はたったの3%。耐用年数はわずか5年。
確かにこんなのいくら低コストでも納得して導入できないです。
錫(スズ)を用いた変換効率が約11%ほど…。
有害物質である鉛(ナマリ)を用いれば20%を超える変換効率が見込めるが、パネル型同様廃棄時の問題に関わってくるため、有害物質が利用できない。
研究が進むにつれ、鉛を用いずにパネル型の太陽光発電に匹敵するほどの変換効率を実現できました。
1cm角あたりペロブスカイト太陽電池は23%(2023年にはイギリスで28.6%を記録)パネル型は14~20%
光吸収層にヨウ素を用いることで劇的に向上させることに成功しました。
(筆者:医薬品にも液晶にもマルチに使えるヨウ素ってすごいな…。
 筆者は文系なのでデンプンを含むと色が変わるヨウ素液が頭をめぐる。違うか…💭)

普及が現実的に…

先日、キャノンが耐久性の問題を解決し、耐用年数を2倍の20~30年に延ばせる素材を開発しました。(2024年6月現在)
パネル型と遜色のない耐久性と変換効率を得たフィルム型は、再生エネルギーの未来を担う大きな一歩なんです。

ペロブスカイト太陽電池の今後の課題

パネル型では実現できなかった夢のような使い方が期待されています。
(編集後記でペロブスカイト太陽電池でできることをまとめてみました。)
しかし、ペロブスカイト太陽電池にもいくつかの懸念点や問題点が存在します。以下、ペロブスカイト太陽電池の今後の課題についてざっとまとめてみました。

1.面積が大きくなると性能にばらつきが出る
これほど効率的だとビルや大きな窓等にも導入したいところですが、大面積化することで性能が不安定になってしまいます。
パネル型のように安定した発電効率が見込めないことが今後の課題です。

2.破れ等の外的物理外傷に弱い
シリコン製太陽電池とは違い、レアメタルやガラスで覆われているわけではないため、台風や地震時に破損する恐れがある点です。
勿論普及に向けて物理的外傷への対策・研究が進められる予定です。
その研究の中には窓ガラス等と一体化させるような商品の研究も進められています。

3.水が弱点
太陽電池として致命的であるが故に、既に対処されています。
積水化学工業が開発した水の侵入を防ぐ「封止」という技術で、フィルム状の接着剤が太陽電池を覆うことで耐久性を向上することに成功しています。
しかし覆うことでも発電効率の低下や、「封止」自体の耐久性が問題視されています。
ただほんの些細なものなので「問題点」と表現するより「改善の余地」がある程度の話です。

4.透過性がまだ60%を下回っている
前述した窓ガラス一体型の太陽電池の開発には、未だ60%を下回る透過性の低さが課題と言われています。(サングラスは40~70%)
(筆者:逆に遮光性、遮熱性があると考えれば、レースカーテンが不要になるし、家財の日焼けも防止(UVカット)できるし、建物内の室温も下げられそうで、いいことばかりだと思えます💭
でも透過性が上がって車のフロントガラス等に使用できるようになれば、夢が広がります。)

各大手企業の動向

キャノンによる技術革新(耐用年数の倍化)を皮切りに、ペロブスカイト太陽電池の一般普及に向けて各企業が課題解決・研究を始めました。
(筆者:一つの技術を独占せずに、各企業が各得意分野を追及して世界の未来を創造していくのってかっこいいな。と、まとめていて震えました…。)

ENEOS HD、INPEX

主原料となるヨウ素の増産(ENEOS HDは生産能力を5年以内に倍増)

キャノン

耐用年数を2倍に延ばす素材を25年間量産

積水化学工業+NTTデータ

2025年の事業化に向け、両社ビル外壁にて国内初の共同実証実験中(東京都港区、大阪府三島郡)

Panasonic HD (+三井不動産レジデンシャル)

世界初のガラス建材一体化型ペロブスカイト太陽電池を開発+実証試験中(神奈川県藤沢市)

YKK AP+関電工

都市部のビル窓に導入し、2026年製品の市場投入を目指す。
メンテナンス性、リサイクル性に関する検討を開始
採光・眺望の確保のため透過率60%を目指した開発を開始

ウエスト HD

効率的な設置方法の研究を開始

日揮HD (+エネコート、+神奈川県)

2026年を目途にペロブスカイト太陽電池を活用した電力事業を開始。
神奈川県の脱炭素化に向けてペロブスカイト太陽電池の実用化及び普及を目指す。

ペロブスカイト太陽電池だからできること

柔軟に曲げられる

フィルム型太陽電池と呼ばれるほど、薄く軽く柔らかい素材でできています。
現時点で、建物の壁面・窓面(一体型を含む)や車両の屋根への設置、更には衣類等へも装着が想定されています。

(筆者:フィルム型おそろしい…。)

低コスト

  1. 塗布・印刷で量産可能

  2. 薄膜フィルムのためかかる材料費が格安

  3. レアメタル等の貴金属不使用

  4. 軽量のため輸送・設置費用が格安

・材料費が20分の1 (95%削減)
(レアメタル→ヨウ化鉛 (Pbl2)+メチルアンモニウム (CH3NH3))
・塗布技術・印刷技術の発達で低コストで量産が可能
・今までとは桁違いの量を輸送でき、設置が簡略化することでコスト大幅削減
 (筆者:パネル型と比較すると当たり前のように90%以上削減されているの怖くなってきた。)

弱光でも高効率発電

http://www.nonrisk.co.jp/Perovskite%20Solar%20Cell_2023.pdf

上記表にもある通り、パネル型ではほとんど発電できないような弱光でも、32%以上も発電することができます!
こちらの表は2023年のデータで情報は少し古いので、進化した今は太陽光の項目でもパネル型に負けない数値を出しています!
(最新のデータはまだ、どの研究機関もまとめていないようです。)

100%国産可能

ペロブスカイト太陽電池の主原料は「ヨウ素」です。
「ヨウ素」の世界生産量は年間で約30,000t以上と推定されていて、日本はそのうちの30%を占め、世界で2位のシェアを誇っています。(1位はチリ)さらに日本国内では生産量の8割以上を千葉県で生産されています。
(筆者:世界生産量の24%千葉県で生産しているってことか。エグい。)
このヨウ素の生産を前述したとおり、ENEOS HDとINPEXが今後増産をするとのことです。(筆者:チリを上回るのでは?)

従来のパネル型は材料に「レアメタル」等を含んでいたため、高価かつ多量で輸入コストもかかっていました。
フィルム型は国内の要素で賄い量産できる点から安全性・(コストの)安定性にも優れています。

透過性・汎用性が高い

ペロブスカイト太陽電池は、透過性が高いため、窓ガラスにも使用したり、一体型の窓ガラスを生産することが可能です。実際にPanasonicと三井不動産が、神奈川県藤沢市モデルルームにて試験開始、YKK APと関電工が、より透過性の高い窓一体化型太陽電池を開発中です。

また、表面だけでなく裏面でも発電することができます。
例えば窓ガラス一体型のペロブスカイト太陽電池を導入した場合、表面では太陽光を、裏面では室内での環境光を吸収して発電することができます。
(筆者:👀!?!?!?!?)

編集後記(と筆者が想像した未来)

未来はこうなる?

1.窓一体型と壁面、屋上のパネル型でビルの消費電力の数%は賄えちゃう⁉
形状や重量等で設置ができなかった建物や住宅にも導入できますし、透過性が高いならパネルの上に重ねて2倍近くの効率も電気0円も夢じゃないですね。

2.電気自動車・バイク等にも設置できちゃう⁉
トヨタ プリウスに一時期パネルが導入されていましたが、これからはペロブスカイト太陽電池搭載が標準装備になってもおかしくないですね。航続可能距離が桁違いになりそうです。
2035年にはガソリン車が禁止されるなんて言われていますが、航続可能距離が短い電気自動車なんて論外なんて人もいたのではないでしょうか。
走りながらタダで充電出来たらどこへだって行けちゃいますね。

3.ビニールハウスにも導入できちゃう⁉
これだけ軽くて薄いなら作物育成のための電力も太陽に任せられますね。

4.ドローンや衣類にも導入を考えられている。
軽量化、バッテリーの効率化が課題のドローンに搭載できれば、一発で解決ですね。救助活動や災害時・輸送等でさらに活躍できそうです。
衣類やカバンが少量でも発電できればモバイル端末やIoT機器にも利用できます。衣類がIoTになっちゃたりして…。

編集後記

「太陽光パネル」って言葉がでてから二十数年。普及が始まった頃は、「山とか削られて自然破壊とか起きたら笑うよな」って思ってたら阿蘇山ハゲました。
環境良化のための再生可能エネルギーだよな…。なんで環境破壊してるんだ?ってSDGs、地球のためを考えてる人なら思いますよね。
でもこれからは進化した未来の太陽電池で、山や自然を破壊せずに効率的に発電できます✨
スタイリッシュなビル群にペロブスカイト太陽電池が導入されたらもっと未来感増しますね👀
日本の未来は明るそうです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

引用記事

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/2021/data/08_05.pdf

http://www.nonrisk.co.jp/Perovskite%20Solar%20Cell_2023.pdf


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