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政治についてまじめに考えてみた① 石丸伸二考その壱

落選した候補者の落選直後のインタビュー(仮想)です。

記者「今回、残念ながら及びませんでした。敗因は何でしょうか」
候補者「すべて私の不徳の致すところです」
記者「手応えとしてはどうだったのでしょうか」
候補者「はい、多数の市民の応援を感じることができました」
記者「風を感じましたか」
候補者「はい、確実に風は吹いていました。その風に乗り切れなかったということだと思います」
記者「今後の活動のご予定は」
候補者「落選したばかりなのでまだ何とも…支援者とこれから検討します」

これを公の電波を使って放送することに、あるいは記事にして読者に届けることに何の価値があるのでしょうか。このやり取りははっきり言って何も語っていません。
誰にでも言える無難なことを述べているだけで、わざわざ選挙後に特番まで組んで伝える必要があるものだとはどうしても思えません。

石丸伸二氏がメディアにかみついたということで賛否両論が巻き起こっているようです。体感的には否定的な意見の方が多いように見えますが、いやいや、ちょっと待ってくださいよ、と私は思うわけです。

まず、そもそもからして、政治家がニコニコとメディア対応する必要があるのか、というところが第一の疑問です。
メディアと政治家が仲良くする必要は全くありません。特にメディアは凋落したとはいえ、第四の権力と呼べるほどの力を持っています。しかもその権力を監視したり抑制したりする組織が存在しない、という特徴まで併せ持っています。
言ってみれば国会における与党と野党の関係のようなもので、愛想よくニコニコと対応する必要など全くないわけです。むしろどう切り取られるか分からないわけですから正真正銘の真剣勝負でなければなりません。
そもそも政治におけるメディアの役割は、立法なり行政なりを監視して、おかしなところがあれば鋭く指摘をすることにあるはずです。そんな両者が忖度し合ってなあなあに仕事をしていて、良い政治が実現するのでしょうか。

おまけに相手とコミュニケーションを取ろうとする意思が微塵も感じられない。相手に自分の思うことを喋らせるのは尋問であってコミュニケーションではありません。
見ず知らずの相手に突然尋問されて、皆さんはニコニコと応対できますか?
私は無理です。

まず名乗る、労いなり感謝なりを伝えた後でコミュニケーションを始める、これが人と話すときの基本ではないでしょうか。残念ながら、既成メディアは誰一人感謝も労いも伝えていなかったようです(まともに応答してもらえた東京MXは別だったようですが)。

元乃木坂の山崎さん?にもきつく当たったということでだいぶバッシングされていたようですが、きつく当たったのではなく、真剣に答えた、アイドルだから、女の子だからといって忖度せずに一人のジャーナリストとして真っ当に扱った、それだけのことだと思うのです。
言い方が悪いとか怖いとか、そういうのは個人の感覚の話なので私の預かり知るところではありませんが、「アイドルにその対応はひどい」「若い女の子に(以下略)」というのは見当外れも甚だしい、と私なんかは思ってしまうのですが、皆さんはいかがでしょうか。

最近、

教員は教員がやるべきでない仕事を任されているから多忙なのだ。教員免許がなくても良い仕事は教員の手から離そう。教員が子どもの教育に向き合える環境を整えよう。

という社会的な流れが出てきているようです。一人の教員としてこれは大変ありがたい話です。
でもこれって別に教員以外の主語が立っても良くて、例えば政治家を当てはめて、

政治家がやらなくていい仕事は政治家以外がやればいい。政治家は国を良くすることに注力できるようにしよう。

と言うこともできるのではないかと思うのです。(皆さんも、「これ、自分の仕事か?」と思うことはないですか? 私はよくあります(笑))

話の本筋に戻ります。
「政治家は自分の政策を分かりやすく国民に伝えるべきだから今回の石丸氏の対応は誤り」という論調もあるようですが、それって本当に政治家の仕事なのでしょうか。
メディアを通じずに自分の言葉で語りかけねばならないシチュエーション、例えば街頭演説などではそうでしょう。でもメディアを通じて語りかけるならば、「わかりやすく国民に伝える」のはメディアの仕事ではないかと思うのです。

そのために事前にきちんと取材をする、相手から答えを引き出すためにも丁重に相手を扱う、取材に基づいて明らかでない部分を相手に質問をする、国民に伝わりにくい表現や取材内容と異なる回答があれば深掘りした質問をする、できるだけ公平な立場から取材結果とインタビュー結果を合わせた記事を書く、これこそマスメディアの本来の仕事です。
間違っても、
事前のリストに基づいて素人でも考えそうな質問をして、自分の頭の中でインタビューの前から思い描いていた記事を書くことがメディアの仕事ではないのです。
それならYouTubeで十分に役割を果たします。

今回の落選後も石丸氏は
「結果については都民の総意が表れた、それだけのことだと思っています」
と冒頭に述べておられます。それにも関わらず、紋切り型の結果に関する質問をしたら、「それ言いましたよね?」となるのはごく自然なことだと思ってしまうのです。


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