#07 【ワークショップ関連】おすすめ本一覧

ここ数年で私が読んだ「ワークショップに関する本」のうち、おすすめできそうなものをまとめてみました。現在の主な仕事は「ワークショップ×子供」なので、そちらへの偏りがあるかもしれませんが、何かの参考になれば嬉しいです。書評は私の主観たっぷりで書いてあるので、本の内容をしっかり理解したければ、ぜひ一読してください!


⑴ワークショップとは?を考える本

●中野民夫「ワークショップ」

日本に「ワークショップ」という言葉を一般化させた中野民夫さんの新書。ワークショップというと、ビジネス系・教育系・アート系・まちづくり系…など様々な形態があるが、本書ではその全体像が網羅されているので、大きな見取り図を描くにはもってこいな本。新書でさらっと読めるので「ワークショップ」について知りたければ、まずはこちらから。


●苅宿俊文「ワークショップと学び1 まなびを学ぶ」

ワークショップを研究領域としている方々が、ワークショップとは何かについてまとめた本。メイン著者の苅宿先生は青学WSDの創始者でもあるワークショップ界の重鎮。ワーックショップ型の学びはどのような学びなのか、それは学校の学びとどのような違いがあるのか、ワークショップの構造は、、多様な観点が学術的にまとめられているので、学問的にワークショップをおさえていきたいのであれば、こちらも。全3巻です。


●R.K.ソーヤー「学習科学ハンドブック」

「人はどのように学んでいくのか」「どうしたら人は学習しようとするのか」「学習に最適な環境デザインは、どのようなものか」…そんな問いに答えようとするのが学習科学という学問領域です。教育工学と教育心理学の二つの源流をもち、学習に関する最新の理論がまとめられています。こちらの本は学習科学の全体的見取り図的なものでして、個別具体的な方法は載ってませんが、やっぱり大枠を捉えるには必要な本です。


●加藤文俊「ワークショップをとらえなおす」

慶応SFCの加藤文俊先生が書いた本。ワークショップに対する自身の経験を踏まえて、最近の「ワークショップばやり」に対して少し距離をおいてワークショップの本質を考えようとしています。ワークショップという行為に興味をもつ人は、つい「発想を引き出せる」「人と繋がれる」「新しい学び方ができる」と、ワークショップの効用に注目しがちだけど、本書では原点に戻りながら「なぜワークショップをするのか」と思考が深まりそうな一冊。


●北野清晃「組織論から考えるワークショップデザイン」

ワークショップを構造的に理解するときに有用な「F2LO理論」を駆使しながら、組織形態とワークショップの場面についてモデルを使いながらまとめられている本。ワークショップという営為をモデル化することで、形式的にスッキリ理解できるかもしれません。


●柳治男「〈学級〉の歴史学」

厳密に言うと「ワークショップ本」ではないのですが、学校の成り立ちをしることで、学校的なものに対するアンチとしてワークショップの必要性を考えられると思います。私としては、学校教員時代にもやもやしていた霧が、一気に晴れた気分にさせられた、結構「毒」のある一冊。


●デューイ「経験と教育」

経験学習の元祖、デューイの古典。何度読んでも新しく、そして何度読んでも難しい本ですが、経験を学びに転化させることがめちゃくちゃ重要なんだなぁと感じられます。こちら、うまく言語化できません。。


●J.ジェイコブズ「市場の倫理 統治の倫理」

これまたワークショップとは直接的な関係はないのですが、人間社会の倫理感を、忠誠・階層・誠実などの徳目が重視される「統治の倫理」と関係・平等・互酬などの徳目が重視される「市場の倫理」に分けて解説しており、両者の善は異なってくるという話。例えば、一般的に学校は「統治の倫理」で動いているので「市場の倫理」側になる関係・平等・互酬などは低い徳目とされる、、といった感じ。無理やりかもしれないけど、ワークショップと学校授業の差は、ここで二分されている倫理構造が異なっているからかも、なんて考えています。おすすめの一冊。


⑵プログラムをデザインするときの本

●山内祐平「ワークショップデザイン論」

東大の山内先生が書いたワークショプデザインの本。「〜を通して〇〇を学ぶ」といったワークショップの活動&学習目標の立て方&考え方から、ワークショップデザインの基本構造、初心者と熟達者とのちがいなど、基礎基本的なことが網羅されています。ワークショップを自分で組み立てたい方は、必読な一冊です。


●堀公俊「ワークショップデザイン」

中野民夫さんが「ワークショップ」を社会的に広められた方だとすれば、こちらの掘公俊さんは「ワークショップ」を構造化してビジネス的に広められた方だと思います。「ファシリテーション・スキルズ」というワークショップ&ファシリテーションに関するシリーズの一冊がこちらでして、どちらかというとビジネス的なワークショップのやり方が書かれています。案内の出し方、お菓子の種類など、極めて実用的に書かれていますので、実際にワークショップをやってみる前にご一読を。


●香取昭一・大川恒「ホールシステム・アプローチ」

日本に「ワールドカフェ」を広めたお二人が書かれた本。ホールシステム・アプローチという、大人数で対話型のワークショップを行う4つの方法が紹介されています。主にまちづくり系ワークショップなんかで多用されるワールドカフェですが、もし実施されることがあれば、事前に一読しておくと、よりワークを深く理解して行えるかもしれません。


⑶ファシリテーションについて学ぶ本

●堀公俊「ファシリテーション入門」

先ほど紹介しました堀公俊さんのファシリテーション本。主にビジネス系ファシリテーション(会社の会議での振る舞い方、ホワイトボードの使い方など)が書かれています。ビジネス系と言っても、ファシリテーションについての考え方はどのワークショップにも通じるところがあるので、ファシリテーションについて考えたい方は、一読をおすすめします。


●今村光章「アイスブレイク入門」

こちらはアイスブレイクについて書かれた本。単なるネタ本ではなく「なぜアイスブレイクをするのか」「アイスブレイクの時の心構え」的なことがまとめられています。楽しいアイスブレイクがたくさん載っていますので、読むとついやってみたくなるかもしれません。


●森時彦「ファシリテーターの道具箱」

ファシリテーターの引き出しを増やしてくれそうな本。問いかけの技法やワークショップで使えるツール類が解説されています。数多くの「道具」が解説されていますので、それをどの場面でどのように使うのか考えながら読むことをおすすめします。


●D.ショーン「省察的実践とは何か」&「省察的実践者の教育」

自らのファシリテーションを常に省察し、その経験から絞り出された結晶を言語化・体系化して再現性を高めていく「省察的実践者」の存在と熟達について書かれた本。ファシリテーションとは(特に子供向けのプログラムでは)絶対が無い行為なので、その場その場で参加者によりフィットするファシリをするためには、「プログラムへの理解・参加者への理解・ファシリの圧倒的な引き出し」の3点がないと難しいと思います。この「ファシリの圧倒的な引き出し」は、結局経験学習(具体的経験→省察→言語化→もう一度トライ)の繰り返しでしか増やせないので、それをどのように行なっていくのか、省察とはなにか、について書かれています。



●佐伯胖「『子供がケアする世界』をケアする:保育における『二人称的アプローチ』入門」

ファシリテーターって、参加者とのコミュニケーションの中で、新しい価値を想像していくものだと思います。その時のファシリテーターは主催者側の人間である以上、どうしてもある程度の「権力」をもってしまいますが、その現実を踏まえつつ、参加者どのように向き合っていけばいいのかを考えるための本です。


●K&M,カーゲン「現実はいつも対話から生まれる」

人間が認識する現実は全て社会的に構成されたものだと考える「社会構成主義」の入門書。(以下、工事中)


⑷まとめ。。

…こちら、あくまで大門の独断と偏見で選んでおります。少しでもお役に立てれば嬉しいです。(共著者は省略しているものがあります。何か間違っていたらごめんなさい…)

そして、身も蓋もない話ですが、ここまでの本をどれだけ読みこなしたところで、ワークショップを作れるようになる&ファシリができるようになることはありません。知識も大切ですが、最終成果物は現場で生成され、その評価が参加者に委ねられているのがワークショップの本質ですので、結局は場数を踏まないと上手くはならないと思います。

知識と経験(あと振り返り)の良きバランスの上に、理想のワークショップデザイン&ファシリテーションがあるのではないかと。



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