不思議ではない国の時間に追われる人

一日一回、はがきに書いてあるチャレンジをして、それを誰かに送る。
そういう絵葉書を買った。


人セット3000円。

英語。私は全然かまわない。


デザインは最高。
買ったとき、私はなんて素敵なのだと思った。
これを使うことでたくさんの人にお手紙が送れる。
これを使うことで私は一日ごとに違う変なことができる。
これを使うことで相手もちょっとした非日常を送れる。
これを使うことで知らない人と会うかもしれない。
そこから友達になれたりして。
しかも、ここからたったの50円で。
ものすごい有意義な買い物をしたとその時に思った。

だからこそ、いい雑貨を買ったのだと母親に自慢した。
自慢したかったのに、母親はざっくりとこう切り捨てた。


「ひまなひとだけがやるやつね」


その時は何も思わなかったが、そのはがきは行動に移す前にお蔵入りしてしまった。
まるで呪いにかけられたかのように行動ができていない。
まあ、確かに抱え込みやすい性格ではあるけれど。
せっかく買ってきた人にこんなこと言う?という気持ちがひとつと
今だから言えるのは、そうやって時間がないと決めつけるひとにはなりたくないということ。


「時間がない」という言葉は、呪いだと思う。


大人になるとみんなが言う言葉だ。
いろんな人が言いたくない、って言っていた。
友人がでもなあーとか言いながらつぶやく言葉だ。
私は。私は言っていないはずだけれど、無意識のうちに言っているのだろうか。
何も考えてない時に、ふわっと。
時間がない、時間がない。


アリスのウサギみたいだ。


アリスのウサギは完全にハートの女王様の臣下で、いつもぺこぺこしている。
なんていうか、すごいわかりやすい「部下」だ。
これが現実の時間がないって言っている人と同じだとしたら。
考えるだけで恐ろしくてたまらない。
もしかして、周りの大人は全てウサギなのではないだろうか。


考えてみて。ハートの女王様は近くでいえば上司で、もっと大きくなれば会社で、もっともっと大きくなれば日本だ。
同僚はトランプ兵だ。女王に逆らうとしょっ引かれる。
女王に怒られないためにバラを赤く塗る。
怒られるのが怖いからミスの隠蔽をし、隠す。言い出せない。


うわあ。


予想以上にはっきりとあてはまってしまった。
やっぱりあのころの作品には社会風刺も混ざっている。


では、あなたは?


私は今ではどっぷりアリスが好きで、アリスに関するたくさんのお話を読んだ。
不思議の国、という形態のファンタジーも好きだ。
仕事をしている人の、仕事の世界の実際の話は好きだ。


私は私のお話の中ではアリスでいたいと思う。


もちろん、アリスのお話では自由に生きているチェシャ猫も、悪口を言う花も(これは厳密には鏡の国のアリスだ)、ウミガメもどきも、芋虫も、食べられるカキも、食べるセイウチもいる。たくさんの人がいる。
これらには、なりたい姿も、なりたくない姿もあるだろう。
私はウサギみたいにずっと追われたくはないし、でもアリスになったからってらくなわけでもないのだ。
結局頑張る方向が違うだけなんだなあ、と思う。


はがきもトランプも履歴書も紙の束だ。

紙の束に騙されて流されないように、とは思うよ。

あなたがトランプ兵だったら失礼かしらね。

だったらごめんなさい。


私ここは初めてなの。



とりあえず、周りにいるねこさんや芋虫さんと文通したいからポルカで募集でもかけようと思う。

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