アルバム「いとま」を自分ごとに引き寄せて(2022.5.21加筆)

完全にマイ推しミュージシャンとなっている、小田晃生くん。先月、新しいアルバム「いとま」をリリースしましたが

いやこれ…音楽を好きになる、というよりは、作家やコラムニストを好きになる感覚かも。
短編小説とか、エッセイとか、その人の脳みその中をかいま見られるので
私はとても好きなのですが、アルバム「いとま」は作者の脳内を覗く感覚でした。「いま」を収めた作品だからですかねえ。
もちろん、音の重ね方は恐ろしく多彩で天才なので、音楽の素晴らしさを重ねて言及するまでもありません。

きのぴのジャケットが素晴らしい…!
そして、リリース翌週には全曲の感想を書いて放流してみたりもしたのですが、ツイッターに出す前提で書いてるから、あんまり聞いたことない人も見る前提で上澄みをすくってた部分があったかもしれないし、
ずっとアルバムをヘビロテしているうちに、↑この時には靄がかかって見えていなかった自分の本当の感想に気づいたりもしたのでした…。
多分、これをちゃんと文字にしないと、気持ちが次に行かないので、吐き出しておこう。本音も本音、ポジもネガもひっくるめて、脳内オープン。

長いし、これは自分のための文章なので、読んだ方が読みやすいかと言われれば、ごめんなさいとしか返せません。あしからず…


1.そしれ 
一聴、プロローグ曲だな~くらいにしか思っていなかったけど、聞けば聞くほど、静かな感動に打ち震える、音楽の”才能”ってこういうところにあるのかもしれないと感じたのでした。
音楽という形のないものをずーっと継続するその途方もなさ、地味さ、地道さ。道の途中には「そもそも何が好きで始めたんだっけ」とか、始めた頃の初期衝動や根本的な楽しさを忘れる苦しい時期もあっただろうな…と想像すると、なんかもう、リスペクトしかない、人として。
…私も地道に頑張れる人になりたいよ。すぐ飽きちゃう性格だから。
私は何が長く続けられてるんだろう。
保育者だって苦しいし、お母さんだって苦しい。才能のかけらに出会えない。

(そしてヒントはヤマシタトモコさんの違国日記へ続く…私の今の一押し!!!!)

3.灰色
音より先に歌詞を読んだ(↑noteの歌詞集で)。
とても概念的な歌詞だけど、なんだか私にしっくりくる(大好き)
もっとフォーキーな曲でくるかと思ったら、いい意味で裏切られた(ホントに好き)
ここぞという時がくる…で、そわそわする。

4.名無し
わが子が中1の頃、ファンキーな国語の先生が清少納言の「枕草子」の授業がひと通り終わったあと「あなたのエモーショナルな一瞬を晒せ」という宿題があり、しかもその宿題が保護者会のある週に廊下に貼られていた。うわあ、いいのかな見ても…という、ものすごく中学生らしいエモな話題もあって、これはみんなの「名無し」だったと思う。
視点がミクロすぎて忘れちゃうけど、だれしもこっそり持っているのでは…が、私の定説です。
ちなみに私のとっておきの「名無し」は、以下の通り。
・まだ香ってる、落ちた金木犀の花
・ミュージシャンが、フェルマータのあとの小節など、ピターっと音を合わせてくるあの間

7.本になる人
「普通の人」がスーパーヒーローのようなまぶしさにあこがれる気持ち。かっこよく華々しくありたい気持ち。全く同じとは思わないけれど、理解できる。これ、ほうれんそうの気持ちの続きですかね…。
一方で、いろんなことがままならならず、もがいて足掻いて、ちょいちょい「しんどい~」などとぼやきつつ、続く「普通の暮らし」もまた「物語る価値のある」人生であり、たまらなく愛おしいと思う、対照的な感情も同居していて……白黒はっきりつけられないこの二つの気持ちが同時にゴゴーっと押し寄せてくる。

この曲を聴いて「面倒くさい…」「なんだこの、蓋をしたい気持ちは!?」と感じた。この曲は「ほうれんそう」に入れてほしかった、気持ちを済んだことにして欲しかった、と乱暴に思ったり(酷いな笑)。
曲を飛ばしてみたり、はたまた1曲リプレイでずっと聞き続けてみたり、しばらく挙動不審でした。
曲の思いはダイレクトに伝わるけれど、応援する側の受け止め方がわからなかったのが一つ(シンプルに、普通に応援し続ければよいのでしょうけれどね)。

そして他方で、自分はどうなりたいかとか、葛藤するの面倒だし満足してるってことにしとこうって思ってないかな、と考えてしまった。
共感もしながら、孤独も感じる。でも隣の人もそれぞれの孤独を持ってて、それが見えてれば絶望の孤独じゃないのかも。それぞれの持ち場で、足掻きながら頑張らねば、ね。揺さぶられたなあ。

8.そして
今が「いとま」だってことはわかるのだけど、どうなったら「いとま」じゃなくなるのか、いとまじゃなくなった時が怖い。
そしてそしれ、に戻るのかな~と思って聞いていれば、叶わなくなっちゃうし、わかんなくなっちゃうんでしょう…たったそれだけの事が。
これは、後日の回答待ち…
(2022/5/21追記ここから)
インタビュー記事、アップされ始めましたね!
超ロングインタビューになったとか…。

このアンサー受けまして。
「いとま」という言葉は、一括りにはできないいろんな意味合いが含まれていたんだね。ミュージシャン側から見たこの歌詞は、実はファン側から見ても似たことが言えるのかも知れないと感じました。
特にバンドはいつ活動を休止するか分からないし、自分もいつ心変わりするか、たとえ自分でもわからない。
親族でもご近所さんでも友達でもなく、ただ音楽のみの繋がり。世界中にごまんとある音楽の中で、たまたま出会って気に入ったミュージシャンなんて、結構な奇跡だと思う。でも来年は別のことを感じているかもしれないし、推せる今を大事にしたいと思いました。
(追記ここまで)


というようなことを、ループ再生しながら悶々と考えていたのだけど、ここにドバーーっと吐き出せてすっきり。咀嚼して、ちゃんと消化したな!噛みごたえあった。
聴きながら悶々とするのに、歌たちに救われている自分にも気づきました。ごくごく個人的なエピソードの曲たちが、実は普遍的で自分ごとに引き寄せやすい、よいサイズ感のアルバムでした。
専門料理店よりもフードコートが好きな私にピッタリ、いろんな音楽がミックスされてるから飽きずにずーーーっと聴けました…

次回作が何年後かになっても、そこは気長に待てる。
でも、なるはやで沢山ライブが聴ける世の中になーれ。こちらは待ちきれない。場をもっている方々、切にお願いします。

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