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第95回アカデミー賞予想【前編】変わる、アカデミー賞。

2020年9月9日。
アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは、2024年度、つまり来年の第96回アカデミー賞から、作品賞の選考において、新たな基準を設けることを発表しました。


詳しくは長くなるので割愛しますが、例えば、『主役または重要な助演俳優に、少なくとも1人、アジア系やラテン系、黒人などの人種または民族的マイノリティーを起用しなければならない』『出演俳優の3割は、女性・少数派の人種/民族、LGBTQ、障がい者のうちの2つのグループの俳優でなければならない』『作品のテーマが、女性・少数派の人種/民族、LGBTQ、障がい者に関するものでなければならない』『製作スタッフの重要ポジションに女性、少数派の人種/民族、LGBTQ、障がい者が少なくとも2人いなければならない』などといった条件を満たしていないと、作品賞の候補資格を得られないというもの。

この大規模なルール変更の発表は大きな波紋を呼びましたが、それだけ今のアカデミー賞には、“多様性”を重んじる強い意思があるということ。それだけこれまでのハリウッドが白人、そして男性中心で回っていたということ。個人的にはごく一部同意しかねる新ルールもありますが、この決断自体は、今後のアカデミー賞、そしてハリウッドを大きく変えていく、歴史的なものとなるでしょう。


今回は、その新ルール適用前、旧ルール最後のアカデミー賞ということになります。

…とは言いつつも、最近のアカデミー賞では、新ルール適用前にも関わらず、“多様性”や“国際色”を尊重したような受賞結果が続いています。


過去のアカデミー賞の作品賞受賞作の主人公の多くが白人あるいは男性だったのに対し、最近は、女性が主人公の『コーダ あいのうた』『ノマドランド』『シェイプ・オブ・ウォーター』、黒人が主人公の『ムーンライト』、アジア人が主人公の『パラサイト 半地下の家族』と、近6回のうち5回、【主人公が非白人男性の作品】がアカデミー賞作品賞に輝いています。(※第91回作品賞『グリーンブック』も実質的には白人と黒人のW主演)

なぜ直近の6回を取り上げたかというと、アカデミー賞の急激な“変化”はまさにこの6年間で起きた事だからです。


2年連続で俳優部門のノミニーが全員白人だったことで#Oscars So White問題が勃発したのが2016年の第88回。当時のアカデミー会長による“抜本的な改革”によって、その次の第89回では、史上最多となる6人の非白人俳優がノミネート、うち2人が受賞を果たすという結果に。

それ以降も、俳優部門では必ず非白人俳優が受賞しているし、アカデミー賞史上初めて女性が撮影賞にノミネートされ、史上初めて非英語作品『パラサイト』が作品賞を受賞するなど、明らかにアカデミー賞が変わってきていることが伺えます。


この流れは、今回もしっかりと引き継がれています。


第95回アカデミー賞の中心になると思われるのは、ほぼ間違いなく『#エブリシングエブリウェアオールアットワンス』(以下、エブエブ)。主要な前哨戦を独占し、俳優部門でも複数の受賞が期待される、紛れもなく今年のアカデミー賞の大本命です。

コインランドリーを経営する中国系アメリカ人の女性が、突如、全宇宙に蔓延る悪と戦うためにマルチバースへと旅立つという奇想天外なストーリーに、カオスすぎる独特の世界観、そして過剰な下ネタ描写に満ちたこの作品が、果たしてアカデミー賞のトップに選ばれるのかどうか、まだ半信半疑ですが、しかし今間違いなくハリウッドでは、エブエブ旋風が吹いているのです。


しかしながら、他の作品賞候補も負けてはいません。


今年は、コロナ禍で映画業界が大きく低迷していた2年間の鬱憤を晴らすかのように、今年は、誰もが名前は聞いた事のある超大作の続編やリメイク、豪華絢爛な娯楽作からメッセージ性の強いドラマ作品まで、まさに多様性に富んだ、濃厚で味わい深い作品が作品賞候補に数多くノミネートされました。


第3回アカデミー賞作品賞受賞作を、ドイツがリメイク。絶好調ネットフリックスからは戦争映画『#西部戦線異状なし』

圧倒的映像美で世界中の映画ファンを虜にし、当時の歴代最高興行収入を記録した、あの傑作の続編『#アバターウェイオブウォーター』

ゴールデン・グローブ賞で『エブエブ』を下した作品。親友2人の些細な仲違いが思わぬ展開に…『イニシェリン島の精霊』

あのキング・オブ・ロックンロールの人生を豪華絢爛に描いた『エルヴィス』

世界一の映画監督、スティーブン・スピルバーグが自ら手掛けた自伝的作品『#フェイブルマンズ』

ドイツ、ベルリン・フィルで女性初の首席指揮者に任命されたリディア・ターの、狂気の物語『#TARター』

2022年アメリカ国内興行収入No.1!日本でも大ヒットを飛ばした、あの名作の36年ぶりの堂々たる続編『#トップガンマーヴェリック』

世界各国のセレブ達が乗った豪華客船が遭難、流れ着いた無人島で主導権を握ったのはトイレの清掃婦だったー。『#逆転のトライアングル』

人里離れた村で起きた連続レイプ事件。村の男達から"悪魔の仕業"と教えられてきた女たちが真実を知った時、自らの未来と命運を賭けた“話し合い”をする。衝撃の実話『#ウーマントーキング私たちの選択』


…そんな多種多様な10作品が候補入りした作品賞を含む主要6部門(監督・俳優部門)の行方、
第95回アカデミー賞全23部門の受賞予想は、
明日投稿予定の【後編】で、ご紹介いたします。


ちゃっかり自慢させていただきますが、去年は23部門中21部門を的中できたので、今年は22部門…いや、全部門的中を狙ってみたい。めちゃくちゃ難しいでしょうが…。


そして今年は、過去2度の授賞式司会を経験し、5年ぶりに戻ってきたジミー・キンメルのホストにも期待です。第89回アカデミー賞のオープニングは神がかり的な面白さでした。『白人がジャズを救い(ラ・ラ・ランド)、黒人がNASAを救う(ドリーム)。これが我々が進歩と呼んでいるものです』、これは名台詞でしたよね。


ということで、映画好きな方、アカデミー賞好きな方、予想されてる方、良ければ繋がりましょう。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました!

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