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「スタートアップこそ知財」の意味

 こんにちは。

 私がiPLAB Startupsに参画するタイミングあたりから、スタートアップの知財への注目度が高まってきたように思います。特許庁のIP BASEをはじめとして、スタートアップとの関わりの大きい特許事務所やメディアが「スタートアップこそ知財」を重視せよと積極的に呼びかけを行っております。2019年くらいから急激に取り上げられることが多くなったように感じます。おかげさまで多くのスタートアップの皆様からご相談をいただいております。

なんでスタートアップ「こそ」知財か

 さて、例えば、スタートアップにおける知財の重要性(例えば、どのような知財があるのか、どのような知財で事業を守れるか、ブランディングのための商標はいの一番に取得すべき、コア技術→周辺技術への特許の取り方、etc...)については、すでに多くの専門家や投資家の皆様が言及されているところなので、ここでは記事の紹介に留めます。

 あ、↑の最後のyesip.jp、ぜひぜひご購読をよろしくお願いします。

 これらの記事にある通り、知財の権利の確保は、「後回しにできない、後戻りできない」ことは言うまでもありません。これはスタートアップに限らず、大企業、一般の中小企業、研究機関等々、様々な組織において共通する課題です。

 そもそも知財とは何か?というのを自分なりのざっくりな理解でいうと、知財とは、組織の強みとなるテクノロジー、デザイン、ブランドが化体した無形の財産であり、その組織のバリューを決めるファクターの一部です。つまり知財は組織のアイデアを具現化したアイテムであり、競争力の源泉なのです。(なお、厳密には、特許権や商標権のような「知的財産権」は、知財が権利として化体したもので、知財の一部として定義されることが多いですが知財そのものとは少し性質が異なります。これもおいおい)

 となると、スタートアップにおいて、特にエンジェル・シードのようなヒト・モノ・カネが不足しがちな時期では、知財はそのスタートアップの成長をドリブンさせる重要なエンジンとなるものです。

知財を守ることは自らの存在価値を示すこと

 ↑少し言い過ぎかもしれませんが。成長のためのエンジンとなる知財ですが、上で述べたように知財は無形の資産・財産です。物や不動産と違って、その存在は見えにくい。つまりパクられやすいし、パクられたことに(その時点では)気づかないことも往々としてあります。

 「気がつけば自分が展開してたサービスや会社の商標について、商標権を他人に勝手に取られていた」「イベントで技術の話をしたら、1年後くらいに話し相手の会社から改良特許を出されて、自社で実施できなくなった」

 というような悲しい話は未だに伝え聞いたりするのですが(大企業でもあったり。。。)、こうなってしまったら時すでに遅し。積み上げたブランドの再構築、特許回避からのピボット等々、面倒な回り道を強いられ、時間もお金も無為にしてしまった。。。なんてことも可能性としては十分にあります。

 殊にスタートアップはテック系であれ非テック系であれ、「これまでに解決されてこなかった課題に対してイノベーティブな手法で解決し、新たなマーケットを創出する」という使命を帯びた、いわゆる知財の塊のような存在なわけです。なので、私の勝手な考えかもですが、知財を守るということは自らの存在価値を示すことでもありますし、知財を使いこなすということは、自らの存在価値を世のために還元していくことにもなり得る、と考えています。ちょう偉そうですみません。。

知財はあくまで事業戦略をアシストする存在

 じゃあとにかく特許とか商標とかガンガン取っていけばええんやな!ということではないのは承知のことと思いますが、でもどのくらい知財にリソースを割いたらいいの?とか、どんな知財を権利として取っていけばいいの?などなど、実際に知財をどう経営資源として保護・活用していくのかは、難しいところだと思います。私もクッソ難しいなーーーーーほんと!と思いながら粛々とお仕事させていただいております。このあたりはクライアントによってやるべきことは大きく異なり、カスタマイズは必須ですし、各論についてはまた自分の中でも整理しながら書いていきたいなとは思います。

 ただ、ほとんどのスタートアップで共通していることは、知財はあくまで事業戦略をアシストする存在であり、事業戦略とは切っても切り離せないもの、と言えます。例えば事業優位性(リソース、テクノロジー)、競合の状況とか、自分の組織がEXITまで勝ち切れる要因、新たなマーケットを拓いていくシナリオ、企業価値向上のためのPR、それら全てに知財が密接に関わっていることが求められます。さらには、スタートアップの成長に応じて、知財の保護・活用のあり方も変わってきます。

 例えば特許の場合、特許として認められる発明は、殆どが「これまでに解決されてこなかった(見向きもされなかった)課題」を「これまでの技術の組み合わせ(だけど組み合わされなかっ)」た発明です。特に「課題」の新しさというスタートアップが持つミッションは、特許制度とは非常に相性が良いと私は思っています。変な話技術そのものがそんな大したものでなくても、これまでに無かった着眼点で新たなビジネスを創出するものであれば、それは知財としてとても価値の高いものになると思います。

まとめ:知財はスタートアップと表裏一体

 つまるところ、知財はスタートアップにとって重要なものですよ、だからちゃんと守ったり使ったりしましょう!というご提案でございました。あくまで自分のこれまでの短い経験に基づく考えなので「は?甘すぎちゃう?」という怖いツッコミがあるかもしれません。

 ただ、リアルなリソースがなかなか取れないようなスタートアップの価値を早い段階から知らしめる知財は、単なるお守りではなく、うまく活用すれば後のラウンドで大きなレバレッジを生じさせるような存在にもなり得ると思います。知財そのものもまだまだ開拓の余地が十分に残されています。

 その一方で、スタートアップの知財を支援する側であるはずの弁理士も、なかなか両手を挙げてやってくれる人が少ないのが現状です。いや、もしかしたら実際にはもっといるかもしれないし(自分が世間知らずなだけで)、潜在的にはやりたい!という方も多いかと思います。その間口を広げるようなことも今後はやっていきたいですし、事業あっての知財に根幹から関われる、という経験は本当にかけがえのないものと思いますので、そこに向けての発信もしていきたいです。

 今後は

・初期のスタートアップが知財をモノにするために、及びそのお金のはなし
・出願書類の見方、初級編・中級編
・大企業、大学との知財のお付き合いについて
・特許取得RTA

というスタートアップ向けのものから

・スタートアップとお付き合いするために知っておくべきこと
・ファイナンスと特許

のようなスタートアップ支援をはじめたい弁理士のみなさま向けのコンテンツも充実できたらな〜〜〜〜できるかな〜〜〜〜と思います。ほんと人が足りない!コピーロボットがほしい今日この頃です。

ではでは

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