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あなたの書くものには一貫性がない

小説家と呼ばれる仕事を何年間か続けてきましたが、「あなたの書くものには一貫性がない」と言われます。「一貫性がないと読者ターゲットを絞れず、営業がかけられない」とお叱りを受けたことも、たびたびございます。
これまで私が書いてきた物語の内容は、例えば次のようなものです。

編集者さんや営業担当者さんは、需要のあるジャンル枠に組みこむべく知恵を絞ってくださいます。「これは『驚愕のラスト!』的なキャッチでミステリーとして出そう」「これはラノベ風の表紙にしてラノベ棚に置いてもらおう」――と。

そしてミステリーを期待した読者さんは「全然驚愕せんやんけ!」と怒りに震え、爽やかな青春ラノベだと思って心軽やかにページをめくった方は「く、暗い……重い……加齢臭がする……」と沈まれるのです。

著者名と作品イメージが繋がりにくかったり、内容を一言でまとめづらかったりするものを、版元さんは敬遠することが多いそうです。当然だと思います。「これは野菜コーナーに置くべきなのか果物として売るべきなのか?」というものばかり作る提携農家では、スーパー側は困ってしまいます。

あなたの書くものには一貫性がない。何がやりたいの?

私は昔から一貫したモチーフを書いているつもりなのです。
皆さまは、こういうものを見たことがおありではないでしょうか。

色覚検査で用いられる数字カモフラージュです。多くの人は、ここに描かれた数字を「12」と認識します。
ではこちらに描かれた数字はどうでしょうか?

多くの人には、数字が描かれていることすら分かりません。けれどもある属性の人には数字が見えるのです。
私が一貫して書いてきたこともこれと似ています。多くの人にとっては意味不明だけど、ある属性の人の目には映るもの――です。
ここに書かれた数字が見える人々がおられるかぎり、「あなたが伝えたいのはこれでしょう?」と力を貸してくださる人と出会えるかぎり、書き続けていきたいと思います。試行錯誤、手探りしつつ。


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