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催花雨に散る

昔から、目にする機会が多いとは思っていた。
国道を走れば至る所に樹が生えている。
花を咲かせない季節であっても、色濃い緑が美しく硬い葉は独特で、晴れた日に風が吹けば陽を受けてキラキラ瞬くからすぐに分かる。

椿。
高知県南部にある私が生まれ育った町が「市の花」として定めている事を知ったのはずいぶん後の話だ。



一般に、花盛りの時期は12月から4月と言われており、冬の花という事になっている。
樹々が葉を落とし、他の花々がひたすら春を待つ。
そんな時期に爛漫と咲き誇る花。
土佐南国と称されようとも寒い時は本当に寒かった。
雪の中で咲く赤の健気さを目にした記憶は既に遠いけれど。






春に咲く花が催花雨に促される頃。

道路沿いに散る椿の姿が、視界に入る機会が増えていく。

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アスファルトの黒によってなお引き立つその姿に、美しいまま散っていく高潔さを見てきた。
当時は意識せずとも。



そして美しくまた廻る。

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そんな花と育ってきた。