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格好良い"間の取り方"と"休符"

人に何かを伝えるときは「間を取るのが大切」と良く言われます。

私はコミュ障なので、人生に於けるあらゆる会話という会話を1秒でも早く終わらせる事に日々全力を注いで生きています。そのため日常会話でもプレゼンでも何でも、ついつい早口で休み無く、まくしたてるように喋ってしまいがちです。

しかし聞き手にとっては、言葉と言葉に適度に間があったほうが内容を理解しやすいと言われています。

澤円氏の「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術」には、こう書いてあります。

他人のプレゼンを注意深く聴いてみると、話すスピードそのものよりも、間のとり方によって印象が大きく違ってくる事に気づくはずです。優れたプレゼンターは例外なく間の取り方が上手なのです。

間を取らずに喋り続けると、聞き手に考える時間を与えることが出来ません。その結果、伝わるはずだったものが十分に伝わらなかったり、再度コミュニケーションが必要になったりしてしまいます。

広野萌氏の下記Blogには、プレゼンを演奏に喩えたうえでこう書いてあります。

「休符は休みではない。休符という音である。音であれば、休符だとしても大事に弾きなさい。」
その静寂は、今までの騒々しいテンションとの差異を明確にし、聞き手をドギマギさせるだけでなく、今までの怒涛の言葉攻めの意味を整理する時間でもあり、そして次にどんな言葉を口にするのかを期待させる、あるべくしてある静寂なのである。

Blogにはプレゼンの参考動画も掲載されているので見て欲しいです。プレゼンにおける休符が効果的にはたらいている例を感じ取れると思います。

格好良い休符

音楽の例を見てみます。実際の音楽に於いて、格好良い休符と聞いて真っ先に頭に浮かんだのが、スティーブ・ドブロゴス作曲のMass『Kyrie』(1992)です。

※該当箇所は5:10あたり

まくしたてるような「Kyrie, Kyrie, Christe eleison.」からの突然の沈黙。そして嬉々として始まるメインフレーズの繰り返しと、神々しいくらい格好良いストリングスのロングトーン。この休符があるからこそ、前後のテーマが映えるわけです。

ちなみにこの曲は演奏した事もあるのですが、休符の後の「Kyrie eleison~」の入りを完璧に合わせてキメないとクソださいので苦手でした。

ジャンルを変えると、片岡真央作曲『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』のメインテーマなんかも、特徴的な静寂を持った曲です。

「始まりの塔」起動シーンと厄災ガノンのカットから、ゲルドキャニオンでの戦闘シーンへ切り替わる間の一瞬の暗転で、BGMもバツンと途切れるのが印象的です。このトレイラー映像に合わせて音楽を切っているようにも見えます。私も初めてこの映像を見た時はそうだと思っていました。

しかし、実際に公式サイトのBGMだったり、劇中でこの曲が使用されている箇所であっても、この曲は同じように区切りが入ります。上記の映像があろうが無かろうが、この曲は、この休符による区切り込みでこういう曲なのです。

これらの曲から休符によるブレイクが無くなったらどうでしょうか。区切りの前後によるテーマの切り替わりが曖昧になり、音楽が本来持つメッセージ性が失われ、格好のつかない曲になってしまうと思います。

つまり、休符こそがこれらの曲を格好良くするのに必要なのです。


...という結論にしようとしたのですが、ブレスオブザワイルドのゲーム本編の特典サウンドセレクションに収録されているオーケストラアレンジでは休符が削除されているのを思い出しました。休符が無くても十分に格好良いんです。

私は何が言いたかったんだろう。

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