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私はまだ本当の愛を知らないかもしれない

三浦しをんさんの『ののはな通信』を読み終えた。
『風が強く吹いている』や、『舟を編む』『あの家に暮らす四人の女』などが個人的に好きな作品で、強いメッセージを感じる作品ではないものの、登場人物を通して人の感情に語り掛けるような作家さんだなと感じている。そこが好き。

なんとなく入った本屋で、なんとなく手を取って読んでいた本。
著者には三浦しをんの文字、帯には辻村深月の文字。なんか良さそう…。と選んだこの本。
その本がちょうど読書の秋2021の対象だったので、この本を読んだ感想をここにしたためる。

最高に甘美で残酷な女子大河小説の最高峰!
運命の恋を経て、少女たちは大人になる。女子の生き方を描いた傑作小説。

横浜で、ミッション系のお嬢様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。
庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、
外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。
二人はなぜか気が合い、かけがえのない親友同士となる。
しかし、ののには秘密があった。いつしかはなに抱いた、友情以上の気持ち。
それを強烈に自覚し、ののは玉砕覚悟ではなに告白する。
不器用にはじまった、密やかな恋。
けれどある裏切りによって、少女たちの楽園は、音を立てて崩れはじめ……。

この本は全てののとはなの手紙のやり取りだけで進んでいく。
最初は高校時代、一度疎遠になり、次は大学時代、はなの結婚により、再び疎遠になり…という様に2人の距離は物理的にも、心的にも離れたりくっついたりを繰り返す。

やり取りの中で感じるのはお互いがお互いを思う気持ち。
「あなたなら、きっとわかってくれるよね?」というような、圧倒的信頼。

この本を読み終わったとき、私は「えっ、終わり??」と思ってしまった。
ただただ、2人の秘密を、第3者としてのぞき見した気分だった。

しかし、解説で辻村さんはこんな風に書いている

本書を読み終え、あなたの胸に、今、誰の顔が浮かんでいるだろうか。
読書とは、本を読むこと。物語に身をゆだねること。必ずしも自分の人生に照らし合わせることではない。そうわかっていても、どうしても「自分の物語」だと思わずにいられない本が世の中にはある。
~中略~
これまで自分が歩いてきたどこかに、痛烈に気持ちが引き戻されてしまう。

私は、この本を読んだ後に、誰の顔も浮かばなかった。悲しいことに。
私は本書でののが言う、「運命の相手に出会ったことがない、可哀想なひと」なのだと思う。
だって私は、「魂が惹き寄せられ、結ばれる、あのうつくしく麗しい瞬間」を体感したことがないのだから。

もし、私が「魂が惹き寄せられ、結ばれる、あのうつくしく麗しい瞬間」を体感していたら、もっと違う感想が持てたのだろうか。
私がもっと、愛を体感していたら読み終わった後に誰かの顔が浮かんだのだろうか。

私はまだ、本当の愛を知らないのかもしれない。
本当の愛を知ったとき、再びこの本を手に取りたいと思う。

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