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ジェットコースターは得意なんだが

子供の頃から、人間は「遊具」という形で人生の上がり下がりを体験させられる。
ありゃ、一種の刷り込み効果だわな。
シーソー、滑り台、ブランコ(最大値と最小値があるからよしとしよう)など
公園はいわば、これから君たちは笑えない程の恐ろしい体験をしていくんだ。
と、政府が提供した訓練施設なようなものだ。

そうして公園で遊んでいく内に子供は無意識ながら、徐々に上がり下がりを意識し慣れていく。
最初の壁が小学校だ。
足が速い、あれだけで小学校の女の子たちはいちころだ。
羨ましかったなぁ……あの野郎め。
だけど、それも一瞬だ。
2組のA君が優しかった。それだけでシフトチェンジ。
さっきまでモテてた足の速さはどこいった。今は優しさがトレンド入りだ。
足の速さ、あいつの顔ときたら
さっきまで伸びきっていた鼻が、ボキンと大きな音を立てて折れた。
足の速さが、落ちて転がり、掃除用具入れの隙間に入り込んだ鼻を取ろうと苦戦している間に優しさが女子達の注目を浴びている。
僕は思う。
あーそんなことしてたら……ほら、もうすぐ。あー……くるぞ

「5組のC君が荷物を持ってくれた」
はい、男らしさがトレンド入りました。おめでとうございます。

優しさの周りから女子が消える。

そんな風に人間は人生の上り下りを遊具から体験し、学校という小さな社会で経験して段々と規模も差も大きくなっていくのを耐え忍んで生きていく。


……だけどね!
この寒暖差だけは耐え忍べねぇよ!
なんやねん! 暑すぎるやろうがバーカ!
昨日賭けに出て薄着はタンスに引っ込めたばっかやねん!
何でまた暖かくなんねん。
もうええよ、来年会おうや。
はよ寒さにバトンタッチせえや。
いつまでふんぞり返ってんねん。
と思ったら寒くなるのう!
あんたら春辺りに一回シフト組みなおした方がええで?
全然引き継ぎがなってないわ
いや、人間の僕がこんなこというのもあれやけどね?
ごめんなほんま、でも言いたいねん。言わなあかんこれは。

金木犀見てみぃや!
あれ、いつ咲こうかめっちゃ迷ってたんやで可哀そうに。

君らの寒暖差の上がり下がりだけは、慣れないのよ。
いくらシーソー乗ってようが
女の子のトレンドが変わろうが
振られた子が、次の日あいつと付き合ってようが
そんなこと体験しても、無理だから。

ほんと頼みますわ。

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