操縦装置4

操るということ

 操ると聞くと何を思い浮かべるだろうか。操り人形、人を操る、自由自在に操る、いろいろな操るがある。今回は、その中でも「機械を操る」ということについて考えたい。もちろん、この中には車の運転など身近なものも含む。

「操るとは何か」

 何でも自分の思った通りに操れると気持ちがいい。そして、乗り物がユーザーの意志通りに操れることは安全性向上にもつながり、軍用装備が兵士の意志通りに操れることで勝率が向上する、ロボットを自在に操れれば利便性が向上する。

そもそも操るとはどういうことか。ここで言う操るとは、<情報収集>→<思考>→<意志入力>→<機械がそれを実行する>を繰り返すことである、例えば、自動車が走行中に急カーブに差し掛かるとする。するとドライバーは、<カーブを発見(情報収集)>→<どれくらい速度を落としてハンドルを切れば良いかを考える(思考)>→<ブレーキを踏みハンドルを切る(意志入力)>→<自動車はカーブを通り抜ける(実行)>といった具合である。この一連の動作を無意識に短時間で、多数こなす。操りやすい(操縦性がいい)かどうかは、機械が適切な情報をユーザーに与える、ユーザーの入力をどんな状況でも正確に実行するで決まる。では、先人たちは、どのようにして操縦性の向上を図ったのだろうか。


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 零式艦上戦闘機を知らない人はいないだろう。旧日本軍の戦闘機で、急旋回を得意とした。しかしそれ故に、高速時には舵が効きすぎて操縦しにくかった。そこで、操縦桿と舵を結ぶワイヤーに適切なバネを入れることで、高速時の舵の効きをマイルドにし、操縦性を改善した。ちなみに、これは当時タブーとされていた方法であった。ユーザーの入力をどんな状況でも正確に実行する例である。


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 旅客機は人間がコントロールするには大きすぎる。実際、人間の力だけでコントロールしようとすると、操縦桿はびくともしない。そこで、全て油圧に置き換えてコントロールしている。しかし、そうすると操縦しているフィーリングが操縦桿に伝わらないのである。そこで、操縦桿に人工的にフィーリングを作り出す装置を取り付けて、この問題を解決している。機械がユーザーに適切な情報を伝える例である。

このように、操縦性向上に関する装置は多数存在する。これまでの例では、実際に人が乗り込み操縦するものが多かったが、乗り物に限ったではなく、最近ではスマートフォンのゲームや、アトラクションなどにもこのような仕組みが搭載されていることもある。むしろ、これからは無人航空機やロボットなどの普及によって人が乗り込まずに、遠隔地から操縦するケースも増えるだろう。そうなるとますます操縦性が課題になる。

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(千葉工業大学の災害対応ロボット)

 ロボットに、遠隔地からの遠隔操作でミッションを実行させる場合を考える。操縦者は、視覚、聴覚、感触、加速度から情報を得る。視覚に関しては、ロボットに搭載したカメラからディスプレイやゴーグルを用いて得ることが可能だ。聴覚も同様の仕組みで対応可能である。では、感触はどうであろうか。遠隔にいる以上実際に触ることはできない。そこで、ロボットアームや車輪にかかる負荷を計測し、その情報を操コントローラーのスティックにフィードバックさせる(例えば、重たいものを掴めば、コントローラースティックも重くなる)といった方法が考えられる。加速度はどうだろうか。加速度を作り出す方法は、実際に操縦者が座っている椅子を傾けるしかない。こうなるとかなり大掛かりな装置になってくる。実際に、どこまで必要かは、そのロボットの特性やミッションの性格にもよるだろう。

 「自由自在に操る」これは、本格的な機械が世にで始めた100年前からエンジニアが考え続けている課題である。ロボットなどの技術の進歩に伴って、この課題はさらに研究されるだろう。
































 



 

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