ぴ~すふる その5
前回のあらすじ
『ヤセイのヘビ』
ヘビ。普段はおとなしいが、怒ると攻撃的になり近くの生き物に噛み付く。暑いのが嫌いなので、夏は大体いつも怒ってる。毒はないが噛まれるとめちゃくちゃ痛い。
次へ行っちゃう
始めから
=>[テッペン山の山頂]
タローがテッペン山の頂上にたどり着いたとき、太陽はようやく傾き始めていた。
そこは比較的広めの広場になっていて周りには雑草しか生えていないので全方位が見渡せた。山道入口方面にはタローが住んでいる街があり、そこから平原に道路が伸びて、隣街につながっている。その先はおぼろげだ。
反対側にはハシ海岸があり、海が地平線で途切れている。
わんぱくアクティブボーイのタローにとっても、楽な道中ではなかった。突然襲ってくる『ヤセイのヘビ』を二匹と『オラつきバチ』五匹を分からせる必要があったのだ。そのせいでタローはサイダーを二本消費するはめになった。と言っても、リュックサックにはまだ十本ほど残っているのだが。
「何もなくね?」
周囲をキョロキョロ見渡してひとりごちるタロー。タローの言う通り、博士が言うような三角形の物体は見当たらない。タローは眉をひそめて、マッドも博士との会話を回想した。
~~回想~~
「ふーん。テッペン山のどこらへんにあるの?」
「頂点の広場だよ」と、マッドも博士はサラリと言った。
~~回想終わり~~
「へいへいへい『サラリと言った』じゃねーんだよなあ! 頼むぜ博士!」
タローは再び周囲を見渡した。しかし何も見つからない。さらに一周おまけで見渡した。逆回転もした。が、少なくとも博士が言うようなものはどこにもない。
タローの頭の中にいくつかの候補が浮かぶ。
①、誰かが何らかの理由でアンテナとかいうものを持っていった。
②、ひとりでに歩きさっていった。それか飛んでいった。
③、博士に担がれた。大人は信用できない。
「正解は?」とタローがつぶやいた。
「ワン!」
「なるほど、それなら納得が……ん?」
タローは背後を振り返った。視線の先、長い草の影でランランと何かの2つの黄金色の瞳が光っていた。キラキラ。
タローは訝しみながら無言でビームサーベルを構えた。ガサガサッと草をかき分けて、そいつが姿を表した。
ババーン!
薄汚れた雑種犬だった。ヘッヘッヘッへと舌を出してタローを見ている。
犬はビームサーベルに怯むことなくタローの近くで座りヘッ(略)し続けている。犬も暑いのだ。
マッドも博士の豆知識
やあみんな、数カ月ぶりだね。マッドも博士だよ。早速だけど、なんでこの犬がヘッヘッヘッヘしているかなんだけど、これは体内の熱を出す(これを放熱というね)ためなんだ。なぜかというと、犬は人間みたいに汗を出す場所(汗線)が極端に少ないからなんだ。大変だよね。
そういえば、つい最近、とあるSF小説で犬人間という生き物がでてきたんだけど、彼らはどっちよりなんだろうね。ヘッ(略)する描写も、自分の汗で体毛がビッシャビシャになる描写もなかったから、また別の──
「犬? なんで?」タローは首をかしげる。
「ワン!」と犬。
「いや、ワンじゃなくてさ」
「トゥー!」これも犬。
「いやいやいやいや。──さて、どうしたものかね」
犬に敵意がなさそうだと感じたタローは、とりあえず犬に近づいてしゃがみ込み、犬の耳の裏をかいた。犬は気持ちよさそうに目を細めてヘッ(略)している。
「お前、人慣れしてんな……ん?」
撫でる手を耳の裏から首元へ移行させた時、赤いスカーフの残骸が巻かれているのに気がついた。
ビシャーン! タローは電撃的に、同じ学び舎の生徒であったロブが飼っていた犬が半年前に脱走したときのことを思い出した。
名はカフェイン。当時はそこそこの騒ぎになり、タローも学び舎の子どもたちと先生からなる捜索隊に加わり街中を探し回った。しかし結局カフェインは見つからず、自然に帰っていったのだろうということで捜索隊は解散した。ロブは意気消沈のまま、親の転勤についていく形で隣町に引っ越した。
「こんなところにいたのか……そら見つからないわけだ。おいこらカフェ、お前が家出したせいでロブがどんだけ悲しんだか知ってるか。メチャクチャ泣いてたんだぞ。ま、ロブはもとから泣き虫だったけどな」
「クゥン……」
カフェインは撫でられるのを避けるようにさがった。そして、先程まで隠れていた場所に戻った。
「ワン!」とカフェインが吠えた。
「?」
「ワン!」
海方面とタローへ交互に顔を向けてそのたびにワンと吠えるカフェイン。まるで何かを訴えているようだとタローは思った。
「そっちになにかあるってことかー?」
タローがビームサーベルをカフェインの背後──今では、太陽が海へ溶け込もうとしていた──へ向けると、カフェインはひときわ大きく吠えて、草の向こうに消えた。
「ま、とりあえず行ってみるとしますか」
タローはカフェインの後に続き、雑草が生い茂っている斜面を注意しながら降りていった。
カフェインは時折タローがしっかりと付いてきているかを確認するように止まった。
「どこまで行くんだ?」と、タローは問いかけるたびにカフェインは「ワン」と返した。
そうして夕日に照らされながら、山を1/4ほど下ったときだった。突然、タローの視界からカフェインの姿がスッと消えた。まるで消失マジックのようにスッと。
「おおう、カフェイン? キャトられた?(※キャトル・ミューティレーションされた?の意)」
慎重に慎重にすり足でカフェインが消えた位置へ近づくタロー。そこには直径2メートルほどの穴が開いていた。
タローは穴を覗き込んだが、真っ暗で何も見えない。ビームサーベル明かり代わりに差し込んだが、そこそこ深いようで奥の様子はわからない。
なぜか穴の片側面には、溝が一定間隔を開けて掘られていた。まるでハシゴのように。
「カフェインー! いるかー!?」
「ヮォーン」カフェインの鳴き声が奥から届いた。
「よーし」
ビームサーベルをリュックに突っ込んだタローは、側面の溝がしっかりしていることを確認してから穴の中を降りていった。
「へいへいへい『サラリと言った』じゃねーんだよなあ! 頼むぜ博士!」
タローは再び周囲を見渡した。しかし何も見つからない。さらに一周おまけで見渡した。逆回転もした。が、少なくとも博士が言うようなものはどこにもない。
タローの頭の中にいくつかの候補が浮かぶ。
①、誰かが何らかの理由でアンテナとかいうものを持っていった。
②、ひとりでに歩きさっていった。それか飛んでいった。
③、博士に担がれた。大人は信用できない。
「正解は?」とタローがつぶやいた。
「ワン!」
「なるほど、それなら納得が……ん?」
タローは背後を振り返った。視線の先、長い草の影でランランと何かの2つの黄金色の瞳が光っていた。キラキラ。
タローは訝しみながら無言でビームサーベルを構えた。ガサガサッと草をかき分けて、そいつが姿を表した。
ババーン!
薄汚れた雑種犬だった。ヘッヘッヘッへと舌を出してタローを見ている。
犬はビームサーベルに怯むことなくタローの近くで座りヘッ(略)し続けている。犬も暑いのだ。
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