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ぴ~すふる その6

前回のあらすじ
てっぺん山の頂上へたどりついたタロー。しかし、マッドも博士の言うアンテナは何処にもない。その代わり、行方不明になっていたカフェイン(雑種犬♂)に出会う。
何処かへ向かうカフェインの後に追ったタローは、謎の穴を見つけたので降りていったのであった。ザッザッザ(SE)

次に行っちゃう
初めから

=>[てっぺん山の謎洞窟]

 穴の底には30秒ほどでたどりついた。

 そこから横に大人がひとりが進める程の高さと幅の洞窟が奥へ伸びている。日は差し込まないが、壁に埋め込まれている石が発光しているので、洞窟内の様子は問題なく視認できる。
 タローがビームサーベルをかざすと更に明るくなった。詳しく調べれば、洞窟は人為的に掘られ、崩れ落ちないようにしっかりと固められていることがわかる。ま、タローは詳しく調べなかったんだけどね。

「テッペン山にこんな洞窟があったなんてな。避暑地に最適だぜ」

 タローはビームサーベルを前にかざし、空いている手を壁に這わせながら奥へ進む。
 洞窟はかなり入り組んでいた。曲がって少し登って、曲がって曲がって曲がって……。そうこうしていると、行き止まりにたどり着いた。そして、行き止まりの前にはカフェインが待ち構えていた。カフェインはただじっとタローのことを見ている。

「なんだよ、行き止まりじゃねーの。この先掘れワンワンってか? ん?」タローはカフェインに触れる距離まで近づき、突き当りの土壁を叩いた。すると、コンコンと軽い音が返ってきた。

「ここ、土じゃないな。つまり、ここになにかあるってこったな。よしわかった、掘るぞ」

 タローが短いビームサーベルで壁を掘ろうとした。しかし、
「いいえ、わざわざ掘る必要はないです」と、第三者の中性的な声によって遮られた。

「おぉう!?」タローは驚いて飛び上がり、天井に頭をぶつけてしまった。「イテッ!」
 手からビームサーベルが落ちてカフェインの顔を下から怪しく照らす。

「すみません。驚かせてしまいましたか」
 先程までカフェインと呼ばれていた犬が喋った。それもとても流暢に。先ほどと同じ声で。

「オウッ? ……オォ。お前、本当にカフェインなのか?」
「その問の答えは『いいえ』ですが『はい』でもあります」とカフェイン。
「なぞなぞ?」
「いいえ」
 タローの眉間にシワが寄る。「わかりやすく言ってくれ」
「わかりました。私はこことは違う世界から来たもので”’$%#!#と申します。そして今はこの生き物──カフェインでしたっけ? の身体を借りています。なので、カフェインではないですがカフェインであります。簡潔に述べたつもりですが、これでよろしいですか?」
「おー? あー……うん。それじゃ次」

 どう見ても理解できてない様子のタロー。カフェインの下からビームサーベルを拾い、洞窟をコンコンと叩く。

「この洞窟は”’$……あー、カフェインが作ったのか?」
「はい。この世界に退避した私には、船ごと身を隠すことができる場所が必要でした。しかし脱出船が着陸した場所はなにもない山の頂上でした。この世界の情報がないのにむやみに動きまわる危険は犯せません。もし、この世界がすでにヘイターに蝕まれていたらとしたらどうしようもありませんからね。仕方なく、私は山の中に洞窟を作りました」
「手で頑張って掘った?」
「いえ、脱出船に付属している装置を使いました」
「ふーん。よくわかんねえけどまあいいや」
「わかってもらえて幸いです」小さくお辞儀をするカフェイン。

 そんなカフェインを見て何かを思案にふける様子のタロー。ビームサーベルがゆらゆらとゆれて大きな影が洞窟内をうごめく。タローはこれまでのことを整理しようと右脳と左脳を動かしていた。が、すぐに止めた。お疲れなのだ。

 タローは「うん」とつぶやくと、おもむろにビームサーベルの先をカフェインに突きつけた。

「つまり……そうやって、カフェインにやったように……バースを侵略しに来たのか? 俺らを乗っ取るみたいな?」
「いいえ」

 カフェインが即答。予めこの質問が来ると想定していたのだろう。異世界マニュアルなどがあるのかもしれない。

「なーんだ、つまんねえ」タローはビームサーベルを下ろす。割と本気で思ってたのか、かなり不満げ。「じゃあ何しに来たのさ?」
「話せば長くなるのですが……場所を移しませんか? ここでは少々不便です」
「そうだなあ。ちょっと息苦しいしな。それじゃあ戻るか」

 と言って背を向けたタローだったが、背後から飛んできたのは、
「いいえ」だった。

「いいえ?」タローは振り返ってカフェインに不信の目を向けた。
「はい、いいえです」
「どっち?」首をかしげるタロー。
「いいえ、いいえです。Hapana、لا、Neinです」
「それじゃあどこに行くってんだよ?」
 首を反対側にかしげるタロー。首からコキッと小気味の良い音がした。

「こちらです」
 とカフェインは言うとタローに背を向ける。突き当りの壁に両前足をかけて起用に立ち上がり、鼻先で壁を突いた。すると……

 ポチ、ポチ、ポチ、ポチ。ゴゴゴゴゴゴゴゴ。

 洞窟内が揺れる。突き当りの壁が上にスライドして、隠し部屋が出現。奥から漏れる明るい光がタローの眼を刺激する。

「すげー!」
 タロー驚き。お目々キラキラ、大きく開いた口がふさがらない。
「さあ、中へどうぞ」
 カフェインは淡々とそう言って、隠し部屋に入っていった。
「うっひょー! 邪魔するぜぃ」

 タローが後に続いて部屋に入ると、ゴゴゴゴゴゴゴゴと逆再生のように壁が降りてただの洞窟に戻った。


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