ぴ~すふる その8-1
前回のあらすじ
小難しい説明パート(二回目)でした。
次に行っちゃう
初めから
「博士、おい博士。……だめだ、完全に伸びてる」タローは┐(´д`)┌のポーズをとった。
カフェインは心配そうに、直立不動体制で仰向けに倒れていて白目向いて気絶しているマッドも博士を見た。「申し訳ありません」
「カフェインのせいじゃねーぜ」とタロー。
「ねえ、あの銀色のやつ何? ──あっ、わかった! 空とぶ船ってやつね! これで、他の世界から来たんでしょ! ちょっと、私も乗りたいんだけど、もしかして犬専用だったりする?」ユッキーちゃん今日も元気と書いてうるさい。
「大丈夫でしょうか。もし打ちどころが悪かったりしたら……」カフェインは博士の顔を覗き込んで言った。
「へーきへーき。少し待てば起きるから」
「そうですか……」
「ねえねえ、これは何?」と隅に置かれていた棒──アンテナの残骸──を手にはしゃぐユッキーちゃん。
「あの、あの方は……」カフェインがタローに訊いた。
「アレがユキコ」タローはそう簡潔に説明すると、ユッキーちゃんを睨んだ「うるせーんだけど」
「なによ!?」キレるユッキーちゃん。
「うるせーつってんの。ただでさえ声でけーってのに。ここだと響くんだよ」
「なによ!?」
「あーもう。ほらっ」
とタローがピンポン玉サイズの飴を放り投げる。ユッキーちゃんは大きく口を開けて器用にキャッチ。
「はひほ」飴玉コロコロ。
「とても騒がしい方ですね。この世界ではあのような方は多いのですか?」とカフェイン
「んー? あいつよりうるせえ奴は見たことないな」タローが答える。
「なるほど……」
ここはカフェインのアジト。約束通り、タローは朝早くからマッドも博士を連れてカフェインのアジトを訪れたのだが、色々あってちょっとした騒ぎになっていた。
◆
時は少し遡る。三時間程度。
「待ってタローくん。何がなんだかさっぱりなんだけど」
そう言うのはマッドも博士。つい数分前にピンポンラッシュアタックによって夢の世界から引き戻されたばかりなのでまだ若干寝ぼけ眼。白衣がシワシワで眼鏡がずれているけれど気にする様子はない。多分気づいていない。
「だからさあ。山登ったらカフェインがいて、そのカフェインに変なやつが入ってて、世界が危険なんだって。で、俺の力が必要で、ついでに博士にも会いたいらしーんだけどわ」
昨日の出来事を再度説明しているのはこの物語の主人公であるタロー。もちろん今日も半袖半ズボン。昨日よりも肌が若干黒い。
「えっと、誰が僕に会いたいって? 僕の知ってる人?」マッドも博士が首を傾げる。
「カフェインだって言ってんじゃん」
「んー?」
頭をボリボリとかく博士。スチールデスクのコップに残っていたコーヒーを一口のみ、しかめっ面でコップを戻した。半日放置したコーヒーは不味い。
「それで、そのカフェインさんはどこにいるの?」
「だーかーらー、テッペン山だって」タローちょっとイライラ。足を踏み鳴らしたりしてる。
「……まさか、山の中で暮らしてるとは言わないよね?」
「そう! ……あーもう! 会ったらわかるからとにかく行こうぜ。昨日会わせるって約束したんだよ」
「えっそうなの? そんな勝手に……」「隕石のかけら」「ごめんね。わかったよ。でも準備だけはさせて……はぁ、外は暑いよねえ」
◆
二時間程度前。
「ふぅー……暑い……」
「博士ー。もう少し早く歩いてくれよな。こんなペースだと日が暮れちまうぜ」
「ちょっと……待って……」
一方を森に、反対側を田んぼに挟まれた道の途中。息も絶え絶えで外出用の白衣をコレでもかというほど汗まみれingにしているマッドも博士。申し訳程度の屋根があるバス停の木製ベンチによたよたと座りこみ、鉄色の水筒から水を補給。先を進んでいたタローが呆れた顔で戻ってきた。
「大丈夫かー?」
「うん……少し休めば大丈夫」
「サイダー飲む?」
「うん、でも大丈夫。ふぅ」
ただでさえ青白い顔更に青くしている博士。汗で湿った白衣のほうが黒いまである。真っ白に燃え尽きるのも時間の問題だろう。
原因の太陽は今日も絶好調ってな具合で空に浮いている。……あのさ、もう少し日差しを弱めてあげてもいいんじゃない?
「てやんでい! これが俺っちの仕事だ。あんまナマ言ってっとUVCぶつけるぞこのすっとこどっこい!」
すいません。
数分後、ようやく歩ける程度には回復したマッドも博士。ハンカチで顔と首元を拭いて肌にへばりつく髪を整えて、水をもう一口飲むと、
「うん、もう大丈夫」
と言って、よっこいしょと立ち上がった。ベンチには博士の座った跡がべっとりと残った。
「オッケー。じゃ、早いとこ行こうぜ。アジトは涼しいはずだし」
「そうなんだ、それはありがたいね」
屋根の下から出た二人。容赦なく突き刺さるUVAとUVB。
「あっ……」
\マッドも博士は熱中症にかかってしまった/
博士は小さくうめき声を上げたと思うと、逆再生のようにベンチにリターンしていった。
◆
三十分前。
「もうすぐだから頑張ろーぜ」
「うん」
おぼつかない足取りで進むマッドも博士と、それを支えるタローの視界にテッペン山の登山口が現れた。太陽は真上。
まるでウィニングランのように一歩一歩踏みしめる二人。セミの鳴き声が百万人の歓声のよう。非常にやかましい。
そしてそのまま、ゴール! というわけではもちろん無く、登山口手前で森にそれる。ここから先は当たり前だが足元が舗装されていないので、博士が転ばないように注意しなければならない。その上、この時間帯にはブッコミハチや転がり岩といったエネミーが出現するので大変だ。
「足元注意してくれよな」とタローが注意を促す。
「うん」
「後少しだからな」
「うん。博士頑張る」
「……博士大丈夫?」
「うん。博士大丈夫」
「本当にすぐだからさ……」
タローは昨夜通ったルートを思い出しながら進む。エレベータが埋め込まれていた崖には問題なくたどり着いた。まぁ、十メートルもないからね。
うまいことエレベーター付近を隠しているひときわ大きな木からタローが顔を出して、
「げっ」
口から心底面臭い出来事に直面したときのようなうめき声が漏らした。
後ろから博士がタローにぶつかり、そのまま転けそうになった。
「あれ、ここは何処? もう着いたのかい?」と正気に戻ったマッドも博士が訊いた。
「まぁ……」
「うん?」
博士は苦虫を噛み潰したような表情のタローを見て、首を傾げて、大樹から顔を出して奥を覗き込んだ。
タローの視線の先、エレベーターが隠されている崖の前に、ユッキーちゃんが座り込んでいた。
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