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「世界観の演出」の探索 〜XRへの道〜

MIMIGURI 裏Advent Calender 2022の24日目36時の記事です!
展示などの都合で遅くなってしまいました。お待たせしてすいません!!

こんにちは、淺田史音です。
株式会社MIMIGURIではデザインリサーチャーとして活動し、ワークショップデザインを中心としながら、参加型の場作りをデザインしています。
今年になってから、「MIMIGURIのXR担当」になりつつあるのですが、今日はそこまでの変遷を辿りながら、「MIMIGURIで自分の衝動を起点に専門性/キャリアを拡張する」とはどういうことなのかを考えていきたいと思います!
裏カレンダーではありますが、今日の内容は、②衝動 ⑤遊び ⑥理論と実践 に紐づけています!

MIMIGURI Advent Calender 2022のテーマたち!

「分散と修繕」とは

キャリアにおいては、目標を立てて実行する「選択と集中」がよく語られると思いますが、変化の激しい時代においては、「分散と修繕」というアプローチも重要なのではないか、ということがMIMIGURIではよく語られます。「分散と修繕」では、自分が探索してみたいと思う問いやテーマを起点として、そのテーマを見据えながら敢えて資源を「分散」させます。そして、そこで得られた多様な知識や経験が新結合していき、得られた洞察をもとに、ある時一気に新たな問いへと「修繕」されます。(詳しくはCULTIBASE記事をご覧ください。)

分散と修繕に人生救われた話

好奇心がありあまり、色んなことに興味を持ってしまうため、なかなか人生の目的を見つけられなかった自分としては、非常に救われた概念です。どれくらい彷徨っていたかというと、大学では、ブレインマシンインターフェース、量子工学、演劇照明、建築、認知科学、デザイン、メディアアート、ヒューマンコンピューターインタラクションなど無数の領域と場所を色々と彷徨い、専門性をどこに置くか悩みまくっていました。
MIMIGURIにjoinした時、無数の領域を彷徨っていた経験が横断的に接続され、様々な領域の仕事に対して「これは自分の興味に近い」と思え、別の領域で起こっていることを無意識的に接続して新結合を仕掛けることができ、逆に強みになったような感覚を抱いたのを今でも覚えています。だから、今ここにいると思っています。

分散と修繕における、sionの問いと3つの洞察

そんな私が、join当時から見据える問いは、「現実世界の世界観を拡張し、非日常を作るために、何をどのようにデザインするといいのか?」というものです。そして、これまでに得られた洞察としては、

  1. ワークショップをパフォーマンス化する

  2. オンラインホワイトボードを皆が集まる空間としてデザインする

  3. メタバースで並行世界の物語をプロトタイプする

という3つがあると思います。それぞれについて、どのようにその洞察を見つけたのかを辿っていこうと思います。

1. 「ワークショップをパフォーマンス化する」
 PLAYFOOL Workshopとの出会い

大学院時代は、最終的にデザインリサーチという領域に辿り着き、RCAと東大のジョイントラボとして誕生した DLX Design Labという場所でデザインプロジェクトの修行を積みました。その時に出会ったのが、RCA卒業生のSakiさんとDanさんが組んだPLAYFOOLというクリエイティブユニットです。彼らが、自分たちのクリエイティブプロセスを体験してほしい!という思いで作ったPLAYFOOL WorkshopがDLX Design Labで出張開催されました。

PLAYFOOL Workshopでは、遊び心のあるデザインツールを通して現実世界を拡張する

PLAYFOOL Workshopは現実世界を拡張するワークショップ

PLAYFOOL Workshopは今考えると非常にAR的なワークショップで、現実世界に対して、目玉をつけたり、スポーツの道具を重ねて「現実だけど仮想空間」なシーンを見つけます。そこでのシーンを起点に、物語を編むように、こんなものがあるといいのにな、というアイデアを考えていきます。
そして、それを支えるのが、PLAYFOOLの二人が作るデザインツールと場作りの持つ、遊びたくなる世界観です。かわいくて思わず覗き込んだり思わず貼り付けたくなるツールと、「もっと遊ぼうよ!こうしたらもっと楽しくなるよ!」というファシリテーションで、誰もが少年少女に戻るのでした。そして、少年少女に戻った大人たちの新結合のパワーは凄まじいもので、誰もがそのポテンシャルを持っていることも強く感じました。

ワークショップをパフォーマンス化する場作り

二人が作る世界観に没入し、これまでにない楽しさを感じた私は、PLAYFOOLと安斎さんが出会ったタイミングで、PLAYFOOL Workshopのファシリテーターを認定する講座をサポートすることになり、ミミクリデザインにjoinするきっかけになったのでした。
その後の対面でのワークショップの芸風は、かなりSakiさんから影響を受けたものでした。どのワークショップでも、パフォーマー的に場の空気を演出して、参加者が「これをやりたかったのか!」と衝動を発掘し、参加者が思ってもいない新結合を一緒に探していくことを繰り返しました。
ワークショップには4つの要素があるという考えをベースにしていますが、特に「非日常性」のある場に参加者を誘い、「実験性」にスイッチできるような場をひたすらに探索していきました。
その実践を繰り返す中で、「現実世界の世界観を拡張し、非日常を作る」というテーマの言語化と、自分は「ワークショップをパフォーマンス化」しているのであるという意識が芽生えていきました。

2.「オンラインホワイトボードを皆が集まる空間としてデザインする」
 コロナ禍でグラフィックデザインのチャンスをゲット

パフォーマンスは楽しいものの、自分の後ろ髪を引いていたのは、「自分はものを作りたいんだよなぁ〜」という、説明のつかない衝動でした。口癖のように言っていましたね。
そんな自分に思わぬチャンスが来たのが、オンライン環境への移行でした。
オンラインワークショップでは、対面のようにファシリテーターのエネルギーだけで場を演出することがなかなか難しく、様々なツールを組み合わせる必要があります。
しかし、そこで演劇照明出身の自分に火がつき、「色んなツールをオペレーションするの、めっちゃ楽しい!!」という感覚になったのでした。最初期は、プログラムとワークシートだけではなく、衣装から背景、音楽まで演出してましたね。

コニカミノルタ株式会社のファシリテーターに向けて、オンラインワークショップの場作りを伝授するトライアルワークショップ。楽しそうだなー。

オンラインワークショップの世界観構築は、Miroが鍵だ!

その中でも、特に自分が衝動を持って探索したのが、オンラインホワイトボードであるMiroボードのデザインでした。オンラインワークショップでは、どうしてもボードと向き合う時間が長くなるため、実はZOOMの画面以上に、ワークシートの方が印象が強くなります。そのため、「オンラインワークショップの世界観を作る」ための大きな鍵はMiroだ!と気づいたのでした。
また、Miroはこれまでの紙面のデザインとも、アプリやwebのUIデザインとも違い、そもそもが広大で無限に広がるボードを拡大縮小しながら使う、という性質があります。
そこで、グラフィックデザインやタイポグラフィーを学んでいた頃の自分に火がつき、「新しいメディアでのデザイン原則を探索できるチャンスだ!」と、頼まれてもいないのに、Miroを異常なまでにデザインするMiroりあんになったのでした。

人材育成をテーマにしたワークショップでは、カードゲームっぽいUIを試してみました

MiroボードのUI/UXは図面のデザインに似ている

当たり前のことではありますが、ボードのUI/UXがワークショップのプログラムデザインと強く紐づけるほど、良いツールになっていきます。
そのために、ワークの世界観を設定し、鍵となるパーツを作り、ユーザーの動線設計を行い、それらを通して改めてプログラムへのフィードバックを行うのをひたすら繰り返してきましたが、グラフィックデザインと言っても、建築の平面図やゲームの図面をデザインするような感覚でした。
そこで、「オンラインホワイトボードを皆が集まる空間としてデザインする」という言語化に至りました。

日立東大ラボさんとの案件では、対象地域である松山出身で日本画家の母に背景画を依頼し、物語性の高いボードを作成。

3.メタバースで並行世界の物語をプロトタイプする
 XRの波に乗り始めた2022年

こういうわけでグラフィックデザインと空間デザインが再燃し、他に個人でお手伝いしていた会社さんの影響もあって、実は2021年3月には、CGをイチから勉強しても楽しいかもしれないぞ・・という思いが高まっていました。
運が良いことに、2021年は、MIMIGURIのデザイナーたちの間でもCG熱が高まっており、吉野さんは外部でCGを勉強し、五味さん、中園さんも3D CGモデリングツールであるBlenderを社内に開きながら探索していました。
しかし、MIMIGURIのワークショップデザイナーである自分がCGを勉強する理由は特にないしな・・というので、吉野さんたちと情報交換しつつも、Miroデザインを炸裂させていました。

3D Virtual labの立ち上げ

そんな中、2021年冬の全体会の場で、たまたまなのか、仕組まれたのか、CGやVRが気になっているメンバーが対話する機会があり、VRで新年会をやろう!ということになり、さらには後押しするようにN高さんとのVR WSの案件が舞い込み、「メタバースでもワークショップできたら楽しくない!?」という、自分がCG/VRに取り組む理由ができたのでした。
そこで、ヒューマンコンピューターインタラクションをはじめとする理系分野に悔いを残した自分が「これは一大チャンス!やるしかない!!」と立ち上がりました。MIMIGURIで、自分がちょっとでもテックに絡んだことをできるとは思っていなかったので、なおさらテンションが上がりました。
その結果、「3D Virtual lab」という、CGやVRを探索したいメンバーの社内活動を立ち上げました。色んなVRアプリを試したり、CGのモデリングスキルを伸ばしながら、社内にもVRの楽しさを普及する活動をしています。
自分の中で、これだ!という強いテーマが見つかった気持ちで、社内外でVRの勉強と活動の幅を広げています。

ラボメンバーで東京ゲームショウに遊びに行った時の様子

メタバースで並行世界の物語をプロトタイプする

2022年8月には、N/S高&metaの皆さんと一緒に、CGやVRをやったことがない生徒もいる中で、未来の学校をコンセプトに空間を作るワークショップを実施しました。ShapesXRというVRモデリングアプリ、VR ChatというソーシャルVR、Miroをメディア横断し、「こんな学びができたらいいのに」という思いを編み上げながら、仮想空間の中に3つの未来の学校を形にしていきました。

N/S高の生徒が自分の作った未来の学校を発表する様子

2022年12月には、N/S高さんとのプロジェクトをきっかけに通い始めたNEWVIEW SCHOOLで作った作品「身体彫刻浮遊都市」が NEWVIEW AWARDS 2022のファイナリストに選出されました。「身体彫刻(自分の好きなボディパーツ)をアバターとして身につける未来」を想定し、現実世界に重ね合わせて身体彫刻たちの生活を収集する試みです。
作品を制作するにあたり、PLAYFOOL Workshopでの非日常を日常に重ね合わせて探索する視点、空間を借用してデザインする感覚が影響しているなと自分でも感じました。まさに、分散した多くの要素を修繕している感覚です。

身体彫刻浮遊都市では、日常生活を過ごす都市に重ね合わせて、ありうる未来を想像する

「分散と修繕」で専門性を拡張する

ざっと振り返ってみましたが、MIMIGURIは「分散と修繕」によって、自分の専門性を拡張することができる、素敵な組織だなぁと思っています。その一事例として、皆さんのキャリアの参考になることを祈っています。
なぜ今この記事を書いたか、というと、ようやく自分の中で納得できるテーマに行き着いたからです。2023年は、XR Co-Design Researcherとして、踊り出していこうと思います!
皆さんも、ぜひ自分の衝動を諦めることなく、探索してみてください!

メリークリスマス🎄

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