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錦鯉の円相 - 音楽の回転について

音楽が産業化され大衆文化として熱を帯び、絢爛華美に多様なサウンドを解き放った時代、音楽は目眩い回転の中にあった。バイナルの回転、テープの回転、ヒットチャートの回転、ムーヴメントの周期的な回転、商業音楽が齎す収益性とその余剰が産む先鋭的音楽のエコシステム的回転。回転台の上を大小様々な独楽が滑るように。
時は流れ現在、音楽が属する公転の円環は余りに浩浩と果てなく満ちていて、その半径を捉えることすらままならない。
まるでうたた寝から覚めたらテレビ台に置かれた金魚鉢が太平洋にすり替わったような。この大きな回転のBPMは幾つだろうか。



ところで循環や代謝というのは有機的なシステムが維持存続するために不可欠な要素である。
もっぱら恐竜のような生物はその生存競争の中で自らの住む生態系を食い尽くした。
クジラの様な大型哺乳類は代謝のスピードを極限まで落としアタラクシアの海に身を潜める選択を取る。
夢の無い話だがウルトラマンは自身の自重と地球の引力の関係で3分を待たずして全身を複雑骨折する。
確かに、ある一定以上の高さの樹木が地球上に存在しない事に疑問を持ったことがある。
土壌の栄養含有量が有限であるという潜在的な問題を私達は往々にして見落としてしまう。
巻貝のフラクタルは幾何学的には無限の螺旋的拡張の可能性を秘めているが、地球上に於いては物理や生態系の法則がそれを許さない。
金魚は、金魚鉢の大きさに合わせた比率にその身体を成長させるらしい。

音楽の大きな渦は何処へ向かうのだろうか。
回転椅子に腰掛けながら、銀河系を泳ぐ巨大な錦鯉に想いを馳せている。

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