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2022年、個人的に勝手に活躍を期待している日本の新人(?)アーティスト17組(artists to watch in 2022)

この記事で紹介しようと思って原稿を書いたのですが、事情があってお蔵入りになってしまったものを、大幅にハイパー加筆修正したうえでここに掲載します。内容はタイトルにあるとおり(17って中途半端な数字だな~)! 以下、順不同で敬称略。

あと、これを読んだみなさんのおすすめのアーティストも、ぜひ教えてください。

Yank!

2016年に結成された東京の4人組、Yank!。サイケデリックロック、ポストパンク、ダブ、ミニマルテクノ、オルタナティブヒップホップなどからの影響を感じさせるあやしげでヒプノティックでミニマルな彼らのサウンドは、OGRE YOU ASSHOLEともD.A.N.ともWool & The Pantsとも異なるオリジナルな響きを持っています。幻惑的だけど、チルでクール。この冷めた(覚めた)サイケデリアは、ロンドンにもダブリンにもベルリンにもLAにもニューヨークにもない、東京の音楽だからこそのものだと感じます(独自の音作りの背景に、エンジニアの中村公輔の貢献があることも見逃せません)。ファーストアルバム『Stupa』は明日1月26日にリリース。

xiexie

もし日本語の歌が乗っていなかったら、アメリカ西海岸のバンドだと思ってしまうかも? そんなインディーロック/インディーポップサウンドを鳴らすxiexieは、モデルとしても活動するMeari(ボーカル/ギター)がフロントに立つ4人組。メンバーにはN.Y&BICYCLESのメンバーでMONDO GROSSOなどのサポートも務めている幸田大和(ボーカル/ギター)、all about paradiseやRENGEやTHE FLYING BEDなどで活躍する飛田興一(ドラムス)、henrytennisでも活動してる開輝之(ベース)(なんとゲスの極み乙女。のマネージャー!)と手練れの実力派が揃っていて、そんなバンドがこの甘くてドリーミーな音楽をゆるっと奏でていることも面白い。TOWER DOORSが取り上げるなど、昨年から既に注目されていた彼女たちですが、今年は更なる飛躍に期待しています。

紫牡丹

李氏くんが紹介していて知ったEP『Omnia』を聴いてみたら、あまりにもかっこよすぎてぶっとばされました。90年代のヴィジュアル系をこんなふうに正統的に受け継いでアップデートさせたバンドがTHE NOVEMBERS以外にもいたなんて、とびっくりした次第です。soraのボーカルはいかにもV系のそれですが、サウンドはシューゲイズやインダストリアル、ニューウェーブ/ポストパンク、インディロックなどを織り交ぜたコンテンポラリーなロックで、そのあたりの塩梅がまた最高。紫牡丹の『Omnia』は、BUCK-TICKや(『ray』とかの頃の)L’Arc〜en〜Cielのファンはもちろん、THE NOVEMBERSの『ANGELS』や『At The Beginning』や近年のThe Horrorsの作品がフェイバリットだというひとは、絶対に聴くべき傑作。

Nelko

元TOWER DOORSのスタッフで、今も音楽業界で働いている熱心なリスナーの小峯崇嗣くんが教えてくれたアーティストで、Dokkoise Houseのメンバーなどからなる、2020年9月に始動したばかりのヒップホップバンドのNelko。まず聴いてほしいのは11月にリリースされた上掲の“Melted Blue”。名曲です。彼らのジャジーな生ヒップホップサウンドはすごく心地よくて、どこまでもチルくてメロウでスムーズ。けれども、ただ気持ちよく聴き流せる音楽ではなくて、Sayaの流麗な歌声とLaundryの気怠げでロウキーなラップの対比が見事で、スリリングでさえあって、バンドであることの旨味を凝縮した5人組だと思います。

Maphie

こちらも小峯くんが教えてくれました。99年生まれ、千葉のニュータウン育ちで、現在は東京を中心に活動しているアーティストのMaphie。音楽性はエモラップとベッドルームポップのフュージョンといったふうの、イマドキのフレッシュなもの。そこに英語と日本語によるなめらかなバイリンガルラップが乗ることで、実にユーフォリックな世界が生み出されています。ストリート感とベッドルーム感、色気とフラジャイルな弱さの両方を併せ持った声とリリックは、他にない個性。2月2日にリリースされるファーストアルバム『Maphie Season』が楽しみです。

没 a.k.a NGS

すでにDos Monosで活躍している没 a.k.a NGSは新人ではないのですが、今ソロMCとしてめちゃくちゃ面白いアーティストだと思います。彼がすごいのは、いつのまにか気づいたら新曲が発表されている圧倒的な創作ペースと、そのたびにフロウもビートもリリックもぐにゃぐにゃと変化して更新されていっている勢い。かなり謎めいている一方で、リスナーとしてカバーしている範囲の広さやアメリカのラップミュージックの最前線を追っている熱心さ(RXK Nephewを聴いているひとなんて、周りで没くんくらいしか知らない)、日本のアンダーグラウンドなシーンとの交流から、このどこにもない個性的なヒップホップが生まれているんじゃないかと勝手に考えています。

okkaaa

ファーストアルバム『Voyage』を明日1月26日にリリースするokkaaaも、以前からTOWER DOORSなどが推していた才能。そして、彼も現代のアーティストらしい折衷性とDIYスタイルが特徴で、どこまでも軽やかでパーソナルで、なおかつポップ。作品を発表するごとに表現が洗練されていて、みずみずしさと才気を感じます。

Need a Flex

2021年のEP『COMPLEX』でTrippie Redd譲りのrageやエモラップをがつんとかましていた東京のラッパー、Need a Flex。Masato Hayashi(fka Pablo Blasta)の作品でなど、客演でも存在感を放っていて、オートチューンで増幅された独特の声とフロウは、一度聴いたら忘れられません。

anddy toy store

ファーストアルバム『gap』を1月15日にリリースしたばかりの兵庫・姫路出身のラッパー、anddy toy store。どこまでもロウキーなラップと虚無感を漂わせた生々しいリリックが、今この国の都市で生きる若者のリアル、という感じがして、現実感があるのにヒプノティックでもあります。

lIlI

昨年のEP『Texture』がとてもよかった東京のDJ/プロデューサー/シンガーのlIlI。ドリーミーでどこか歪な、「手触り」のようなものがあるベッドルームエレクトロニックミュージックに乗せて、どこまでもパーソナルなエモーションを吐き出す。そんな彼女の音楽に、すごく惹かれています。活動休止期間があったようですが、1月15日に新作で画家・猫尾のアニメーション作品のサウンドトラック『抗不安ビデオ Sound tracks “Happiness is scary”』をリリースしたばかり。完全復活に、勝手ながら期待しています。

niijima

K/A/T/O MASSACREに出演していてびっくりしたラッパー/詩人のniijimaこと新島汐里。一方的にツイッターやインスタグラムを通じて以前から知っていたので、音楽をやっていることを知って驚きました。カタいラップ的なフロウからポエトリーリーディング、ただ「声を発している」というものに近いものまで多彩で自在なボーカリゼーション、そして、なによりも独特かつ自然体の言葉のチョイス&デリバリーがたまらなく魅力的。EPやアルバムなど、まとまった作品をリリースしてほしいと強く思っています。SoundCloudにアップロードされている曲は全曲必聴。

AJAH

2021年、ralphの傑作ミックステープ 『24oz』に参加していた、福島県いわき市出身のシンガー/ラッパーのAJAH。祈りのようなR&Bナンバー「AQUA MARINE」(プロデューサーはDanny Died)は、彼女が2021年の3月11日にリリースした曲です。ミュージックビデオは残念ながら非公開になってしまっていますが、今年はEPやアルバムのリリースを待ち望んでいます。

setta

唯一無二のビートプロダクションとグルーヴが、天才ビートメイカーというほかないsetta。そのすごさは、なんというか、聴けばわかる! 説明を放棄しました。毎年、彼のEPやまとまった作品が出るんじゃないかと、ものすごく期待しています。今年こそアルバムがリリースされる……?

Rhino kawara

そのsettaが参加していたRhino kawaraの『梅雨の手前、微睡みの跡』は、昨年Local Visionsからリリースされた作品の中でも特に印象に残っているものです。キーボーディストで、「ネムール人の異名を持つトラックメイカー」が生み出すアトモスフェリックなサウンドコラージュ/ビートミュージック(どの曲もジャンルやスタイルがちがうように感じる)は、抽象的でありながらも映像的。その音楽は、コロナ下/コロナ禍の生活の「なんとなく暗くて、静かで、ちょっとヘビーで、だけどチルでリラクシン」なムードに、なんとも合っていると感じます。EPのラストに置かれた「掴み攫い」が圧巻。次の作品もぜひ聴きたい。

toulavi

1月15日、オンラインレーベルのi75xsc3eからリリースされたtoulaviの新作『神殿』。それを聴いた瞬間に、「あっ、2022年、始まった」と思いました(ヘッドホンで聴いていたら、ミキシングがすごすぎてのけぞった)。ノイジーで不定形な電子音楽を作り上げるtoulaviが何者なのか、素性はまったくわかりませんが、彼やuami、〜離、PAS TASTA(hirihiri、Kabanagu、phritz、quoree、ウ山あまね、yuigot)など、「その周辺」が今、エレクトロニックミュージック(と言うとなんだか大仰ですが)の世界で新たな表現方法を開拓していっていることを強く感じます。現在、Bandcampでカタログをフリーダウンロードで解放中。

ann ihsa

2020年にインターネットの海原でほんとうにたまたま出会ったann ihsaの音楽に、わたしはずっと惹かれつづけています。安田莉沙によるうたものユニット/ソロプロジェクトであるann ihsaの音楽は、ふわふわと漂うアヴァンフォークから前衛的なシンセサイザーミュージックまで、作品ごとに異なる表情を見せていて、全体像は見えてきません。どこか匿名的にさえ感じられるその音楽は、一方で繊細な歌心とピュアネスにはっきりと貫かれていて、そこがとてもいい。大阪の難波ベアーズやそこに出演しているミュージシャンたちとの交流/交友が深いようで、彼女が主催していたパーティ「CO​-​OP」に関連したチャリティコンピレーションアルバムもすごくよかった。今年はMY BEST! RECORDSから新作をリリースする予定だと小耳に挟みました。期待しています!

Perfect Young Lady

以前から噂になっていた謎の(?)音楽家Perfect Young Ladyが、2021年11月末、ayU tokiO=猪爪東風が主宰するCOMPLEXからカセットテープ『Perfect Young Lady』でデビュー。「ローファイなベッドルームポップ」と形容したら、聴いた人は「あれっ?」とずっこけてしまうかも。ユーモアたっぷりの不遜なリリックと歌、歌謡曲とJ-POPと童謡の隙間に落っこちていくメロディに、おもちゃみたいなエレクトロポップサウンド(聴きようによってはポストパンク的?)が、なんとも言えないノスタルジーを醸し出していて……。なにか、「こういうジャンル/スタイルの音楽」と言えるようなものじゃないんです。これはめちゃくちゃ癖になります。篠原ともえの『スーパーモデル』みたいなジャケットも、カラオケスタイルの配信リリパも最高!

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