堀口恭司奇跡の復活　彼が格闘技ファンに与えたもの

【それを信じて疑わなかった一人の男　RIZIN史上ベストバウト】
コロナウィルスという未曽有の出来事によって苦慮を強いられた1年の締めくくりに、国民に最大のギフトが配られることとなった。
約10日前のクリスマス、竹内まりやによって醸造された期待通りとならなかったのは筆者だけではないはずだ。某揚鶏チェーンのCM「♪悲しかった出来事を消し去るように」。
国民に毎年与えられる魔法クリスマスギフトでなんとか心に余裕がもてたように思えたかもしれない。
しかし、それが霞むほどに、2021年という試練の年に立ち向かっていこうと、心の底から思えるようにしてくれたのはキリストが作り出した国民的行事によるものでなく、一人の男がやってのけた奇跡によるものだ。

「やることやっていれば結果残せる。いいことあると思うので頑張ってください。
自分は周りの言葉を聞かず、自分を信じて、チームを信じてやっていたんで結果を残せてよかった。俺は終わらないっすよ。これから。これから。」
衝撃の試合と試合後の堀口のリアルによって導き出されたこの言葉こそ、原動力となってくれるのではないだろうか。
悲しかった出来事を消し去ってくれるのはスペシャルな揚げ鳥の味やケーキ、派手な装飾などではない。地味な継続と反復によって目標が達成されて初めて悲しい過去を清算できるのではないか、そう思わされた。

国民がコーラ片手にケンタッキーのドラム（脚の部位）をほおばっていたころ、減量前で水を片手に一人の男の脚を壊すことだけを考えていたに違いない堀口恭司。
予想だにもしない試合内容ともなった奇跡の試合を振り返りたい。

まさかのカーフキック　打撃で圧倒

試合結果は周知の通りだが、打撃で圧倒する展開になるとは識者を含め予想できた人は少ないのではないだろうか。
海の打撃はこの1年で、バンタム級トップとなった。打撃を主体とする堀口でさえ、TDを織り交ぜた総合力でないと難しいのではというのが大方のそれであった。

しかしゴング直後から、怪我前と変わらないと感じさせるステップとフェイント、動きの速さ。そして試合後に海が認めた「出入りが早く防げなかった」効いたカーフキックとそれを達成するためのスピードコントロール。
4発のカーフで試合はほぼ堀口ペースに。海がマットに沈むのは時間の問題だった。

チーム力の差　ＡＴＴとマイクブラウンの存在

試合は１Ｒで堀口のＴＫＯ勝利。圧巻の復活勝利をあげた。
涙もので、しばらくは会場で呆然とするしかなかった。

振り返るに海の打撃を手数や作戦で上回るチーム力が勝負を分けたところがあるかもしれない。
カーフキック主体ではなく、TDも織り交ぜる作戦ではいたというのは堀口の試合後談。
あらゆる場面を想定していたという。
チームKingGnuのフィクサーが常田大希なら、チーム堀口はマイクブラウンだ。
いずれも見事な構成把握と作戦で芸術的なパフォーマンスを司る。
ヘッドコーチである彼の指導力が今回の結果に起因したことは間違いない。

なにより試合後にeasy fightと叫びながら勝利の喜びをセコンド分かち合うシーンが印象的だった。
海の能力、ポテンシャルの高さは実績通りなので環境を変えることにより、更なる進化を期待できるのかもしれない。

堀口ＶＳ朝倉３　舞台はＵＦＣで

彼らの戦績は今回の堀口の勝利で1勝1敗となった。
とかく、堀口の勝利に光が集まっているが、今回の最高傑作は朝倉海がいなければ実現できなかったことも忘れてはならない。
試合は一方的だったが、実は紙一重で分が分かれていて、実力は拮抗していたという見方を筆者はしている。

海としてはＲＩＺＩＮでリベンジを考えるかもしれないが是非アメリカに拠点を移してＵＦＣで戦ってほしい。
堀口に負けたのは堀口がＵＦＣのランカーレベルだからで、それと紙一重なのだからＵＦＣでも十分通用するという見方だ。

堀口はベラトールのベルトを取り戻すことになると思うが、アーチュレッタ狩りを経て戴冠したのなら、是非ＵＦＣにカムバックしてほしい。
幸いなことにＵＦＣフライ級の門も広くなっており、現バンタム級はＲＩＺＩＮ以上にカオスだ。
いずれの階級でも最高の戦いが見れるはず。

海も今回で評価をさほど落としたとは言えず、二人でメジャーリーグをにぎわしてほしい。
日本格闘技界の夢を、彼らなら果たしてくれる期待しかない。

恭司、もしくは海のいずれかがＵＦＣで戴冠して行われる初の防衛戦が下記となるのなら
これほどストーリーと価値のある3戦目はないでしょう。

UFC270 メインイベント　
バンタム級（フライ級）タイトルマッチ
堀口恭司ＶＳ朝倉海

この夢までにお互い猛者らと戦って実績を積んでほしい。
今の二人ならやってくれるはずだ。

こんな夢物語を思わせてくれたRIZIN26はまさに神回。ありがとうございました！