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【2021】COMIC OF THE YEAR (後編)

今年も3分の1が過ぎ去ろうとしているのに、ようやく手をつけた漫画版年間ベスト企画「2021年のCOMIC OF THE YEAR」後編です。

今回、2021年に読んで良かった漫画として8作品(+2作品)をセレクトしました。選考基準は「2021年の時点で漫画雑誌等に連載されている/いたこと」です。2020年に完結していてコミックは2021年に刊行、などは含まない。

前編はこちら。


それでは後編3作品 (+2作品)です。


「ひらやすみ」真造圭伍

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生田ヒロト、29歳、フリーター。定職なし、恋人なし、普通ならあるはずの?将来の不安も一切ない、お気楽な自由人です。そんな彼は、人柄のよさだけで、仲良くなった近所のおばあちゃん・和田はなえさんから、タダで一戸建ての平屋を譲り受けることに。そして、山形から上京してきた18歳の従姉妹・なつみちゃんと2人暮らしを始めました。しかし、彼の周りには生きづらい“悩み”を抱えた人々が集まってきて… (参照:小学館コミック)

「平屋住み」もしくは「平・休み」なのか。どっちかわからないけれど、どっちでもありな気がする。東京・阿佐ヶ谷に暮らす29歳のフリーター、生田ヒロトが主人公。ふつう29歳無職(釣り堀でバイトはしてる)だったら焦りが発生するものだけど、彼は至ってマイペースで前向き。人柄の良さだけで近所のばあちゃんの平屋を譲り受けて始まるヒロトの新しい生活なんだけど、上京したての従妹のなっちゃん、結婚して子供が産まれたばっかりの親友・ヒデキ、何かとヒロトと縁がある不動産屋のアラサー女子・よもぎさんなど、周りの人物をほっこりさせたりやきもきさせたり(時にイライラさせたり)しながら、ヒロトの生活は続いていく、という「ゆるい日常系漫画」です。いまのところは、特に大事件も起こらずにゆるゆると日常が進んでいく。でも、少しづつ周りは変わっていく。既刊2巻。4/28に3巻出る。

ちょっと困ってしまうのが、キャラがかなりデフォルメして書かれているので、ヒロトはどーみても29歳には見えなくてですね。服装も影響しているだろうけど、いいとこ中学生だし。なっちゃんも小学校高学年くらいにしか見えねえんだよな。

真造圭伍といえば「家猫ぶんちゃんの一年」。号泣した。ぜひ読んで。





「今夜すきやきだよ」谷口菜津子

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フリーの内装デザイナーとして働くあいこは、結婚願望が強く、今の彼氏と結婚したいと思っている。でも家事はまったくできなくて、「家庭的な理想の奥さん像」を求める彼とすれ違い気味。絵本作家のともこは、家事は得意だけれど、世の中の結婚や恋愛があまりピンとこない。「理想の結婚相手が見つかるまでの間、とりあえず私と結婚しようよ」正反対のあいことともこ、アラサー女子の二人暮らし。普通の結婚ってなんだろう? (参照:新潮社)

僕が谷口菜津子さんを知ったのは夢眠ねむ氏(ex.でんぱ組.inc、現.書店経営者)とのこの対談だったかと思うのだけど、当時30代の自分にとって、谷口さんの描く「女子による女子の漫画だよ!」ってぶっとい刻印がされてる感が全開の作品はちょっと抵抗がありつつも、いけない秘密をのぞき込むみたいで妙な背徳感があったのだ。こっそり知る「知らない世界」ってワクワクしてしまうよね。でも、40代になった自分が谷口菜津子の新刊が出るたびに、ちょっと後ろめたいものを感じながら書店のレジに持ってっている図はなかなか滑稽なんである。はい。

このお話は「結婚したいけど家事ができない "あいこ" 」と「家事は得意だけど恋愛・結婚にぴんと来ない "ともこ"」、妙齢の2人の女性が「結婚」という名目の女子2人暮らしをスタートして、「結婚とはなんぞや?」を探る物語です。婚姻届けを出して籍を入れて、女性は男性の苗字になって、夫と妻は一緒に住んで・・・?今の時代の結婚観はお決まりのテンプレだけじゃない。こういうかたちもあっていいんじゃない?を投げかけてくれるお話なのです。男女の別なく、「結婚とは」という問いでモヤモヤしているすべての人類に読んでいただきたい。ちなみに谷口菜津子は、「ひらやすみ」の真造圭伍の奥様であります。

ほんとうは「彼女と彼氏の明るい未来」も「彼女は宇宙一」も「教室の片隅で青春がはじまる」も紹介したいところなんだけど、機会があれば。





「ディノサン」木下いたる

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1946年にとある島で生き残りを発見。その後、繁殖や遺伝子操作によって、再生されることとなった恐竜。それから恐竜ブームに沸いた世の中だったが、とある事故がきっかけで人々の心はすっかり恐竜から離れてしまう。そんな中、経営難に陥った恐竜園「江の島ディノランド」に新人飼育員として、須磨すずめが入社することに。恐竜に対して熱い思いを持つ彼女にとまどう園の職員たちだが……。(参照:コミックバンチWeb)

最近2巻が出た「ディノサン」。再生された恐竜の飼育員の物語で、いわゆるifモノだけど、動物園の飼育員のお仕事をそのまま恐竜に置き換えているわけで、悩みながら成長していくお仕事モノでもある。1巻の時点で充分に面白かったのだけど、2巻で完全に確信に変わりました。トロオドンの赤ちゃん可愛かったね~。新キャラも出てきたし、謎もまだ残っている。未登場の恐竜もたくさんいる。もっと面白くなっていきそうなのでめちゃくちゃ期待しています。設定など、詳しいところは過去に書いたreview読んで欲しいです。




さて、ここからは特別枠的な扱いの2作品です。


「進撃の巨人」諌山創

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34巻をもって完結!説明不要の「進撃の巨人」です。ずっと読み続けていた作品がついに完結ということで、すこぶる感慨深いものがあったので、特別枠としてベストに加えてしまいました。もう、新刊が出るたびに「????」と頭がバグり、前巻を読み返す恒例行事もおしまいだと思うと寂しいね。最終的になんだか救いようのない展開に突入していましたが、うまく着地したのではなかろうか。詳しくは語りません。諌山先生、次の作品はどうするんだろうね・・・。




「スインギンドラゴンタイガーブギ」灰田高鴻

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太平洋戦争終結から6年。米軍占領下にある日本、東京が舞台。戦後日本の芸能界のルーツともなった「ジャズ」を軸に据え、焼け跡から復興するひとびとの再生の物語を描く。主人公は福井から東京にやってきた少女・とら。路上でウッドベース弾きながら歌いつつ、心を患ってしまった姉のために「オダジマタツジ」という男性を探している・・・

完結枠でもういっちょ。2020年のCOMIC OF THE YEARにも選出して、noteやtwitterなどでひたすら推しまくっていた戦後ニッポンジャズ漫画「スインギンドラゴンタイガーブギ」が6巻で完結。もう少し!もう少し続きを読みたいなあとも思いましたが、かなりきれいな終わり方をしたのではないでしょうか。完璧ともいえる。導入部とかはコミック未発売の時点(連載4話くらい)で書いたnote(comicreview)があるのでぜひぜひ読んで欲しいです。


最終話がほんとうに素晴らしくて。大団円。そして17年後。

「とにかく今夜は 大切な友達と ばか騒ぎをするんだから!」

17年後、推定年齢30歳くらいのとらちゃん、めっちゃいい女よね。


コミック最終巻からちょっと経って、こういう記事が出るのも嬉しいですね。物語が進むにつれて抑えきれなくなるとらちゃんの淡い恋心。このあたりの描写もほんとうに上手かったし、名言は数知れないです。巻数が短いぶん、読みやすいと思うし、長く愛される作品になればいいなあと思います。


愛のあるツイートがたくさんで、嬉しい。映画化めちゃくちゃいいと思う。



というわけで、以上10作品でした。

2022年は例年よりコミック買ってる気がする。ずっとなんか読んでますね。すでに2022年のCOMIC OF THE YEARに入りそうなのもちらほら。

そういえば今年小1の娘が(たぶん)はじめて漫画を読んだらしい。学童保育にあったポケモンの漫画。「どうだった?」て聞いたら「なんか白かった」(そりゃ絵本と比べればな)という感想に吹き出してしまったが、5年、10年後くらいに漫画の話をもっとできたらいいなと思ってるんですよ。

漫画はいいぞって語りたいね。

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