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【comicreview#1】「望郷太郎」山田芳裕

マイベストコミック10作品をチョイスしてみたことがある。そんときのツイートがどっかに消えてしまったので、いまいち完璧に思い出せないのだが、確実に10本指に入るのが山田芳裕著「へうげもの」である。

千利休に教えを受け、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康という戦国三英傑と密接に関わった武将茶人・古田織部の「へうげ」な生涯を見事に描き切った大傑作だ。織部はとにかく凝り性である。茶の湯はもちろんのこと、茶器から作庭、鎧兜のデザインや屋敷の内装までやたらにこだわりまくる。その生きざまは約500年の時を超え、コレクター気質を兼ね備えるすべての輩どもを肯定するのである。

しかし古田織部、ただ「好きを愛でる」マニア野郎では終わらない。戦国の一大イベントに必ず顔を出してはしっちゃかめっちゃかな活躍をしちゃうのがこの織部なのである。信長を殺ったのは・・・・!!利休を介錯したのは・・・!!関が原で織部はどのように立ち回るのか?秀吉の死にざまは?石田三成や明智光秀の最期の描き方は?そして織部自身のラストシーンは・・・?荒唐無稽ともいえる斬新な解釈のオンパレードが25巻にも渡って繰り広げられるんである。なんで大河ドラマの原作になってないのか不思議ですらある。なんで?

織部は確かにヘタレかもしれん。でもな。俺あ「へうげもの」を読んでかっこいい大人ってこういうもんだって学んだんだよ。

乙。

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ちなみにベストコミック10に関しては時間を見つけて紹介していきたいと思っている。思っているのだが、さて・・・。




あ。

本筋から大幅にずれたけど「へうげもの」の記事じゃなかった。そうだった。

「へうげもの」の連載を終えた山田芳裕氏は短期集中連載の時代物を描いたりもしてたんだけども、ついに週刊モーニング誌上にて新連載が始まったのですよ。

その名も「望郷太郎」。

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あらすじはこんな感じ。出典ナタリーちゃん

人工冬眠によって500年の眠りから覚めた主人公・舞鶴太郎を描く物語。大寒波に襲われた世界から逃れるべく、家族とともにシェルターに入った太郎は、2525年に目を覚ます。妻の美佐子、息子の光太郎は装置が停止し、すでに亡くなっていた。自分だけが残されたこと失った太郎は絶望し、自殺しようとするが…

500年前から500年後へ。

がっつり未来モノである。「へうげもの」のインパクトが強すぎるので意外ともいえるのだが、山田芳裕氏は「へうげ」以前に「度胸星」という宇宙飛行士モノを描いている。この作品もちょっとだけ未来を描いていた。(これも傑作なのだけど、悲しいかな4巻で打ち切りになった。でも面白いよ。テセラックな~)

本作の主人公・舞鶴太郎はどことなく「へうげ」における織田有楽斎にも似ている髭の色男であるが、山田作品の主人公にふさわしく、その表情の七変化ぶりは見ものである。いや、織部ほどのはっちゃけはまだ見られず、作品の性格上「驚」の表情が目立っているかもしれない。

作品のスタートはイラクのバスラ。舞鶴は「大企業・舞鶴グループ創業家の7代目であり、イラク支社長という地位にある」という設定である。500年の時が経ち、人っ子ひとりもいない荒廃した世界に驚愕しつつも、まずはどうにかして祖国・日本を目指そう・・・・というのが今のところの流れ。

というかそれくらいしか言えんのである。なんせ、まだ連載が始まって3回目なのです。500年後の世界の謎は、これから徐々に明らかになっていくのであろう。わくわく。

ともかく山田芳裕節を好む御仁はご満悦間違いなしであるし、設定に斬新さは無いかもしれないが、あの山田氏がディストピアな未来世界を描くという新鮮さはたまらんものがあるのだ。そう来たか!と思わず膝を打ってしまった次第。

連載3回目で早くも面白さは文句なし。ぜひとも読まれたし。週刊モーニングは毎週木曜日発売。


※Comic FUUUUUUN初投稿でした。

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