【令和になって文化の一ユーザーとして著作権を考えてみる~前編】

平成から令和となり早くも一週間が経とうとしております。10連休とかつてない長さでありましたが、色々普段会えない人とお会いしたり、経験しないこともでき、個人的にかなり楽しみ充分充電できた時間となりました。

さて、先月からNoteを始めて早1か月経過し、法律やITに関することを少しづつ書き続けています(割と記事を読んでいただいていらっしゃるようで恐縮と共にありがたく思います)。情報の違いという観点から書いたり他ではない観点から書こうと思いますが、深い内容を書くためにはやはり両方勉強し続ける必要があると思いました。要精進。

今回は令和初回ということで、またテーマを少し変えていこうと思い趣味である音楽について書こうと思いましたが、たまたま今日の日経朝刊(2019年5月6日付)の法務面を見たら、海賊版サイト対策をめぐって紛糾しているとの記事を目にし、「あー著作権。今(というか昔から)大変だよね~」という思いはありましたので(傍観者な立場ですみません)、著作権について少し触れていこうと思います。

最新の著作権の改正についての議論がよくかわっていないですが(特にデジタル化・ネットワーク化等による権利制限規定等)、著作権自体の重要性は理解しているつもりですし日常的に問題になりやすい分野ではあります。一方で、残念ながら意識する機会が少なく、気が付きにくい法律であります。

ともあれ私自身音楽が趣味ですし、映画を見るのも好きですし、またこのNoteを書いておりますし、まさしく著作権が対象としている創作、文化で生活に潤いがあるのも事実です。文化を享受しているユーザーとして著作権について考えたく思います(素人の域を出するべく、少し自分の頭の整理!)


1. 著作権とは?~血の通った「人間味」のある分野

▶とあるエンタメ会社で「著作権」の社内講習会が行われました。コーヒーブレイクがてら講習で受けた「著作権」について数人の社員が振り返ってます。

(1)一般の若手社員
「仕事で必要っていうので著作権の話されたけど難しいっす(`・ω・´)シャキーン」

(2)法学部卒の若手社員
「著作権って何かの権利ですよね、えーと何だっけ?(*^-^*)」

(3)少し年数の経った中堅社員
「著作権?それよりこのコーヒーうまいな(´・ω・`)」

特に上のやり取りは意味があるものではないですが(顔文字を入れてちょっと登場人物が複数いることを分かりやすくしたかっただけ)、著作権という言葉は、以前と比べてよく耳にする言葉となりました。一体どういった権利なのでしょうか?と聞かれますと、

「著作権」は、特許権や商標権など並び「知的財産権」の一つです。

著作物(文芸、学術、美術、音楽といった人の思想、感情を創作的に表現した物)を作った著作権者に認められた権利で、要は、人の創造的、文化的活動を守るための権利と言えます。


もっと自分なりに考えますと、著作権(著作権法)は血の通った「人間味」のある分野であるとも言えます。冒頭触れたとおり、音楽、映画等、人間が頭を使って生み出した活動は、著作権の対象です。


2. 著作権っていつ始まった?~著作権は世界史だ!

著作権の議論は最近特に盛んですが、そもそも今になってできた権利ではないのはあまり知られていないかも知れません。著作権のはじまりって何でしょうか?


日本の著作権法は歴史が古く、1899年(明治32年)に初めて制定され、現行法は1970年(昭和45年)に改正され、その後複数回の改正を経ています(最新は2018年(平成30年改正))。かなり昔ですね。ただ、著作権の始まりは日本ではありません。では、そもそも著作権はどこでいつ始まったのでしょうか?


色々調べてみると、どうやら起源は15世紀のイタリアの「ヴェネツィア」であるようです。少し時系列でまとめてみると、

15世紀、活版印刷の発明により色々な書物が大量に印刷。聖書など出版物の海賊版が出回る。

1486年、イタリアのヴェネツィア共和国で特定の印刷業者に一定期間印刷をする権利を与える(著作権の概念としての始まり)。

1709年、イギリスでアン法(Copyright Act 1709 8 Anne c.19, Statute of Anne)により本格的に著作権の保護が法的に認められる(著作権の法律としての始まり)

1889年、スイスのベルヌ(フランス語読み。ドイツ語読みのベルンの方が通りがよいかも)でベルヌ条約が発効(著作権の国際化としての始まり)、同年日本ベルヌ条約加盟により著作権法制定

概念としての始まり:「ヴェネツィア」
法律としての始まり:「アン法(イギリス)」
国際化としての始まり:「ベルヌ条約(スイス)」

といった感じでしょうか。ざっくり見てみましたが、著作権は意外にも歴史が古く、国際的な法律の枠組みであるとともに、世界史そのものですね。そもそもが複製技術が進展し、当時の聖書といった出版物の海賊版への対応ということですが、500年以上の歴史を重ねても今と同様に海賊版を問題としているのは、不治の病との戦いがごとく、文化・文明の副産物との戦いといった感じでしょうか。

3.我々は「著作者」なのか、「著作権者」なのか


インターネットが一般的なものとなって20数年経過しますが、その間にいわゆるブログが盛んとなり、個人がブログを書くということは通常のことになってますし、たまたま出版社の方に声をかけられてそのブログを本として出版したなんてことはあるようです。今後複業が盛んになって、もっとそのような動きが盛んになるかも知れませんね。


その場合、こんなことが起きるかも知れません。

▶ ある日なんとなくネットサーフィンしていたら、自分が本にして出版した内容がまるごと他人のブログでそのまま載っているのを見つけた。自分が書いたものだから「著作権」を持っているのではないか、と思い本の出版社に連絡したら、「出版契約で報酬の対価として、うちに本の著作権を全部譲渡するって合意してくれたじゃないですか。まあ対応は当社にお任せください」といってそのまま電話を切られた。
▶ 出版契約を見直すと確かに「本の著作権を譲渡する」旨の記載があった。あなたは本当に創作したにも関わらず「著作権者」ではないのでしょうか?

「著作者」は「著作物」を作った人なら誰でもなれます(作ったものが著作物であるかどうかを認定する話は別にありますが)。
この時、「著作者」に自動的に「著作権」が発生し権利をもった「著作権者」にもなります(特許権、商標権など他の知的財産権と異なり登録は不要)。但し、この「著作権」は必ずしも「著作物」を作った「著作者」に全て帰属できないようにすることができます。

著作権は、単純に著作権と呼ばれますが、厳密には「著作者人格権」と「著作財産権」に分かれ、一般的には後者のことを指します。この「著作財産権」については、他人に譲渡したりライセンスしたりすることができます。

上記のケースの本の作者は、気付かないうちに出版社に著作権(著作財産権)を譲り渡し、著作権者ではなくなったわけですが、世の中でよく聞く「著作権ビジネス」「コンテンツビジネス」の正体は「著作財産権」の取引のことです。
今年の連休の話題として、埼玉県の飯能市にできた、ムーミンバレーパークが連日満員でニュースになっているのを見ましたが、運営会社はどれだけムーミンのキャラクターを利用するためのライセンス料を支払っているのか、その支払い方法も売上高の何パーセントで支払っているのか、包括的利用料で支払っているのか等に興味があります。


※ちなみにムーミンの著作権の管理会社は「Oy Moomin Characters Ltd.」という会社だそうで、日本における著作権は代理店の「ライツ・アンド・ブランズ」という会社とのことでした→http://www.moomin.co.jp/license

法律だけでなく、ビジネスやマーケティングに関わる分野としても著作権は面白みがありますが、その辺りの整理はまた次回に。

少し著作権を意識した生活を送らないと。

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