瀧泉寺電気鉄道別所坂駅レイアウト製作記(その1)
■瀧泉寺電気鉄道について
瀧泉寺電気鉄道は恵比寿~天王洲のあいだを小さな電車がゴトゴト走る都会のローカル線です。大正ごろに、エビスビールへの原料や出荷のための貨物輸送、目黒不動(瀧泉寺)への参拝客輸送を目的に作られました。電車は恵比寿駅付近に急カーブがあるため15m級を中心にした車両が活躍しています。沿線には住宅街の中を走るのんびりとした風景が広がっています。
…という架空鉄道です。
私鉄の機関車や小型車両が好きで、こうした設定でNゲージでの車両やレイアウトを作成しています。
■レイアウトのコンセプト
幼少の頃から代官山付近に暮らしていますが、昔は同潤会アパート付近を始めとして「建物と建物の間にやたら緑が生い茂って鬱蒼としている」というイメージがありました。ところが最近開発が進んできてしまい、こうした緑が失われつつあります。これをモデルとして残しておきたい、という欲求がありました。
もうひとつのきっかけとして、あまぎモデリングイデアから同潤会アパートのペーパーキットが発売されたことがあります。それまで自作しようとしていたのですが、これである程度楽に作れることになりました。
これらのきっかけから次のシーンをレイアウトとして再現することにしました。
・生い茂った緑と建物の組み合わせをテーマにする。
・東急東横線の代官山から渋谷にかけての風景とする。
トンネルに潜った駅や踏切、古い高架区間など。
・主役は同潤会アパートとし、真ん中にデーンと置く。
・高架区間の周りは、渋谷の古い街並みをモデルにする。
前作が春のイメージだったので、私が好きなもうひとつの花であるあじさいをテーマに、レイアウトの季節を5月から6月にかけての梅雨空としました。
■レイアウトの土台
以前作ったものと同様に、収納などで持ち上げたりするため、できるだけ軽量化することにしました。
基本となるのはスタイルフォームで、450×360×50のを2つを木工用ボンドでくっつけています。そこに窓枠の化粧張りなどに使われるプラでできた「L字材」で囲んで接着しました。これで意外と頑丈になります。同様の前作はJAMへの参加するなど外に持ち運ぶこともしましたが、とくに破損もなく、大役を果たせました。また1年ほど経ちましたが目立つ経年劣化はしていません。
■線路配置
前作とほぼ同じようなドッグボーンを折りたたんだ線路配置にしました。今回もポイントtoポイントで遊べるように代官山駅を模したトンネルに隠れた駅と、大崎広小路駅を一部終端駅にした高架駅を配置しています。
線路はトミックスで、基本的なカーブはC140、ミニポイントPR/PL140を使っています。
列車は身をくねらしているのがよいものなのでなるべく直線を置きたくない、という気持ちが私にはあり、一部でC140-30を半分に切りだして15度のレールを作り、ゆるいS字カーブにしました。レールの作成自体はたいへんなこともなく、レザーソーで道床を切りペンチでレールを切るだけで済みました。
小型車両の登坂にはいろいろあるのですが、立ち上がり部分を極力なだらかにして少しずつ上がるようにおくと、非力なものでも登りやすく思います。これについてはやってみるほかなく、いろいろな車両と少しずつ高さを変えた登り区間の組み合わせで何度もテストしています。
■レイアウトの色彩設計
シーナリーを作る前に色彩設計をしてみました。私の仕事でもちょっとかかわることがあり、それをレイアウトにも応用してみた次第です。
色彩設計とは、アニメでゲームで、どんなものをどんな色で塗るのか、そのルールを決めていくことになります。たとえばファンタジーな世界観を持つアニメでは、彩度をやや高くして中間色を多く使うようにすると、ほんわかとした雰囲気になります。逆にシリアスな作品であれば彩度を落とし暗めの画面とすることで悲壮感を出すことができます。
このように「空気感は色として出せる」ことができるのです。
今回は梅雨の雨空の雰囲気にしたかったので、実際に雨の日にはどんな色調になるのかよく観察してみました。そこから得た知見を基に、次のルールを決めました。
・彩度の高い色、中間色は使わない。
・道路、草木の色はかなり濃い色に変わる。道路であればダークグレー、
フォーリッジは緑色を中心にして、ライトな色を使わない。
・雨で濡れた家々を見ると、あまりテカテカとしていない。
水の表現と雨の表現は違うので、ツヤの加減に注意する。
・赤系の色は、実物では彩度が落ちると茶系に見えてくるので、
モデルでは基本的に使わない。
ちなみに人間の目はぱっと見のとき色を8割ぐらい(色数も少ない)しか認識していないので、表面積が大きいものに適用すると、効果が高くなります。レイアウトなら草木、道路、建物(特に屋根)、バラストに適用すれば、そのようになります。
また、あまりにルール通りにしてしまうと単調になってしまうので、目立たせたいところのワンポイントとしてルールを破っていることもあります。後述する傘等は明るい色を中心にしたりしています。日の丸弁当でのうめぼしとご飯の関係のように、ちょっとだけルールを崩してあげるのがポイントです。
■高架
代官山から渋谷にかけての高架区間がモデルです。ちょうど地下化に移行するとき、高架の解体工事での写真をたくさん撮っていたので、断面の形状や色調などいろいろ参考になりました。
KATOの高架脚をベースにし、0.5tのプラ板を切り出して、2mmの角棒をのりしろとして端部に貼り、そこにエバーグリーンの2mm×6.3mmの角棒を貼っています。今回は奥に足が引っ込んだ形にしたかったので、上部を二重に作り、下との段差部分がカーブでつながるように、t0.3でふさぐことをしています。この処理で古いけれどモダンな感じが出せました。
手すりは古いトミックスの高架から切り取って使っています。柵の製品の中では、一番実感的かなと思っていますが、なかなか出物がなく、ヤフオクなどの中古サイトで見かけたら買うようにしています。
手すりと歩道路の下には支えの鉄棒がずらっと付いているのですが、モデルでの実現はなかなか面倒です。今回は0.5mmのプラ棒をチョッパーで同じサイズに切り出し、それを根気よく1本ずつ貼り付ける方法にしました。
高架下は一部店舗や倉庫にしています。駅下の部分はトミックスの扇形機関庫から、店舗部分はGMの商店キットから適宜切り出してはめ込んでいます。店舗についてはいずれもモデルとなった店が実在し、写真で撮った看板を縮小印刷して貼っています。
また一部は壁を開けてガード下の空き地にしました。そこの壁にはこばるの落書きデカールを適宜張ってやんちゃぽさを出し、いたずら書きが残る渋谷の雰囲気としてみました。
■バラスト
バラストはトミックスのダークグレーを使用し、レールにまき平筆で整えたあと、木工ボンドを希釈した水溶液を垂らすボンドバラスト法で固着してます。このバラスト、色合いはいいのですが、微妙にキラキラするものがあるのがたまに傷で、あとでパステルの粉をまぶして隠すことが必要でした。ポイント周りはマスキングの上、マッドメディウムで練ったバラストを盛るように塗りつけました。
線路の塗装は、前作と同様にパステルを粉状にしたPANPASTELというものを使ってみました(KATOホビセンで購入)。筆にとって中央から両脇にぼかすように筆をぽんぽんと動かすと自然な風合いになってくれます。レールも粉をかぶることで、キラリとしなくなります。塗料による塗装よりは楽なのでこの方法をとっています。
■道路
ボール紙を切り出し、ダークグレーをムラになるようにスプレーしたものを使いました。いろいろ試しているのですが、この方法がいちばん自然に見えます。
道路の白線はマスキングして白い塗料をスポンジでポンポンといれています。こうすると適度にかすれてくれるので、ちょっと好きな方法です。
左側の坂道には〇がたくさんスタンプされているものを再現したく、こばるの製品を使って表現しています。
■トンネルや壁
トンネルはGMのポータルを埋め込むようにしたもの、プラ板でまとめた多少現代チックにしたものがあります。いずれも設置後は外側はスチレンボードで、内側はボール紙で壁を作り、木工パテを塗ることでざらざらとしたモルタルやコンクリートの表現をしています。乾燥したらアクリルガッシュのグレーを塗り、そこにシミの表現として、柴色(ふしいろ)を中心にニュアンスを加えています。自然な感じに仕上がるので好きな工法です。
これらトンネルの天井部分はぼこっと外せるようになっていて、車両が転覆したなど、いざというときに備えています。
■草木とあじさい
下草はフォーリッジやターフの緑色にマッドメディウムを混ぜたものをベースとしています。少し長めの下草には、ミニネイチャーを中心に使いました。
低木には一部でGREEN STUFF WORLDの背丈のある潅木シリーズを使ってみました。たくさんの枝に葉がへばりついているのを固めたようなもので、ほぐすとなかなか実感的です。
木はオランダフラワーにノッホのパウダーリーフをまぶして作りました。こちらは同潤会アパートなど目立つところに置いています。
ところどころ植えてるあじさいは、目立つところを木草BUNKOから販売されているものを使い、一部は自作としています。
自分流あじさいの作り方は、つまようじの先に木工用ボンドをちょんとつけ、紫色などのカラーサンドに突っ込んで小さな玉を量産していく方法です。乾燥したら玉の部分をニッパーで切り、一個ずつ丸めたフォーリッジにゼリー状瞬間接着剤で植えていきます。根気がいる作業でしたが、ずらっと咲いているところを見ると、なかなか壮観です。
続きはこちらになります。よろしければぜひー
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