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ご褒美ケーキの結末

今日は週に一度の父のテニスの日。
高校時代の同級生とかれこれ20年近くやっている。

プレーを楽しむ、というよりは、同級生と会って屈託なくおしゃべりするのが楽しいようだ。

父は、先週のクリスマスに兄からもらったドジャース大谷の帽子をかぶって張り切っている。まるで野球少年のよう。

最近は割と体調も安定してきたので
安心して送り出せる。

今日もテニスコートの駐車場まで送り、
「2時間後にまた迎えにくるからね!」と伝え
私は近くのハンバーグ屋さんに入った。

2時間あったら少しゆっくりできるな、と
メニューを眺める。

どうやら煮込みハンバーグが有名なお店らしい。
思い切って今日は食べてしまうかな。

待てよ、
デザートセットもあるじゃないか。

最近ダイエットをはじめたばかりなので
少し気がとがめたけれど

今食べた方が自分の介護パフォーマンスも上がるはず!と思い
メニューにあるデザートセットを指差す。

罪悪感を感じながらも
久しぶりのハンバーグと
久しぶりのチーズケーキにわくわくした。

それでも、時計をチラチラと確認する。
全然余裕だな。

早速、
熱々の煮込みハンバーグが目の前にだされる。

ダイエット中だからこその
罪悪感と感動を響かせながら味わった。

食後には
お楽しみのチーズケーキが登場。
ラズベリーのハートもかわいい。

コーヒーもホットからアイスに変えてもらった。
ちょっとしたことだけれどもこれも嬉しい。

店内の掛け時計、残り時間をチラチラみながら
最後のアイスコーヒーをのみほした。

お腹いっぱいだ。
罪悪感もあるけれど、満足感もある。

気づくとあっという間に時間は過ぎていて
待ち合わせの時間まで残り15分となっていた。

テニスコートの目の前なので5分もあれば着くな。それでも余裕を持って出よう。

会計を済まし、足早に車に向かう。

ケーキも食べたし、ベストパフォーマンスで
父を迎えられる気持ちしかない。

やっぱり食べて良かったんだ。

車の鍵を開けて、
運転席に座って時間を確認する。
なんだかんだ10分前。

少し焦り気味にエンジンをかける。

エンジンをかける。

え!?
エンジンがかからない、、、、。

うんともすんとも、
エンジンがかからない。

なにがおかしいのか確認するも
いつも無意識にやっていること。
わからなくなる。

もう一度外に出て鍵を開けるところからやってみた。

運転席に座り、エンジンをかけようと
スイッチをひねる。

すると、
突然大音量でクラクションが鳴りはじめた。

どうしてこうなってるの!?
少しパニックぎみにわたわたとする。

鳴り止まない大音量に
ハンバーグ屋さんのお客さんもチラチラとこちらをみている。

私はこのクラクションを止める意思があります、と
まずは伝えたく。

止める行為を探すも
大音量は止まらない。

かれこれ3分ほどしてそれは止まった。
永遠にも感じられた恐ろしい時間だった。

ここでふと、気づく。
待ち合わせの時間まであと5分もない。

私は慌てて携帯を手にして
父のテニス仲間の方へ連絡をした。

電話がつながり事情を話し
父を車でここの駐車場まで乗せてきてもらえないか、と
お願いをしてみる、

すると、お仲間の方、
今日は体調が思わしくなく
たった今テニスコートをでて早退をした、とのこと。

「そうなのですね、
お大事にしてください!」と伝え電話を切った。

さて、どうする。

残り時間は3分。

父が着信に気づくかわからないけれども
まずは今の状況を伝えないと、と思い電話をかける。

呼び鈴が一度鳴り、2度目なった瞬間に画面が黒くなり呼び鈴も消えた。

まさかの、携帯の電源が切れた、

なんてことだろう。
重なる時は重なる。

待ち合わせまであと2分。

もう走るしかない!

(つづく)

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