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ANAのマスク警察ぶりにみる日本人のマスク依存が続く理由

 先日、3年ぶりにANAに乗り、マスク警察ぶりに絶句しました。搭乗が済むとマスクを正しく着用し鼻から口をしっかり覆うようアナウンスが流れ、離陸前にCAがイラストを提示しながら全客席をチェックして回ります。『長時間の食事をするな、しゃべるな、マスクしないなら降りろ』という内容のアナウンスが『一応』丁寧な言葉で流れます。フライト中もCAは何度も客席を巡回する徹底ぶり。私には常軌を逸しているとしか思えませんでした。
 家族連れや旅行帰りの若者が多い機内でしたが、飛行機を降りるまで、機内は異様な静けさに包まれていました。
 『楽しい空の旅』はもはや存在しないのです。
 本来、無言で同じ方向を向いて着席している機内で、そこまでマスク着用を徹底させる必要は、感染対策の観点からみて必要ありません。さらに機内の換気を徹底していることもアナウンスしています。
 ANAもはっきりと言っています。『お客様同士の不安解消のため』と。

 私は、国の着用基準とは別に自分で判断して、不必要な場面ではマスクをしません。ですが未だに、早朝の散歩時でさえ、都市部ですから何十人の人とすれ違いますが、マスク着用率は目算で95%を越え続けています。コロナが増えようが減ろうが炎天下だろうが、関係ありません。
 国も屋外ではマスクを外してよいという指針を出して久しいのに、『人目が気になるから』と、人々は屋外でもどこでもマスクをし続ける。その『人目が気になる』をもう少し掘り下げてみたいと思います。

 そのためにもう一つ、例を挙げます。

 先日、5人での会食がありました。当然、会食中はマスクを外して歓談します。そして会計が終わり店を出るとき、一人がマスクを着用しながら『マスク外せないよね、外したらヘンな目でみられるし』と言いました。60代の会社経営の女性です。
 これ、今の日本人の精神状態そのものだな、とつくづく思いました。

 飲食店の入り口では店側はマスクを着用させ、食事中は客はマスクせず会話し、店側も一切チェックを入れず、また会計時に客は自らマスクを着用する。こんな妙な光景が日本中の飲食店で繰り広げられている、その基盤にあるのが上記の女性の心理です。

 つまり、日本のマスク社会は『病的不安』を基準にしているから。

 『○○したらヘンな目で見られるからやめておこう』と、人目を過剰に意識するのは、マスクに限らず日本中に溢れている空気。ここにあるのがまさに『不安』です。

 よく、『恐怖』は対象がはっきりしている、『不安』は対象がはっきりしていない、と解説されることがありますが、実は、不安というのは『未来』という概念が存在する人間に特有の情動なのです。

 『恐怖』は生物において自らの危機を早期に察知し”flight or fight”つまり戦うか逃げるかの行動を選択する、本能の安全装置のようなもの。

 対して不安は、見えない未来に対する警戒です。いやいや、『ヘンな目で見られる』という明確な状況があるじゃないか、と思われるかもしれませんが、これはあくまで先読みかつ主観の話。今現在起こっている事実ではありません。自分の行動の結果を先回りし、過度な防衛に走っているだけなのです。

 不安にせよ恐怖にせよ、正しく働けば、自らを守る行動につながります。
『試験に落ちるのが不安だから勉強しよう』というのが正常かつ適切な不安対処行動。
 『飛行機が落ちるのが不安だから乗らない』というのは、ぎりぎり分からないでもないですが、ちょっと心配性です。
 『交通事故に遭うのが不安だから外出しない』となれば、もはや異常。これを病的不安と言います。
 病的不安に陥ると、自分しか見えなくなるのです。周りの目を気にしているようで、意識は完全に内向き。『周りの目を気にする自分』のことしか考えていないのです。

 マスクに話を戻しますと、屋外で一人で歩いていようが屋内でも黙って単独行動していようが始終がマスクをし続けるのは、会うかどうかも分からない赤の他人の目を過剰に意識する病的不安です。
 
 そして、ANAに代表される、『お客様同士の不安解消のため』にマスク着用を要求し続ける企業や自治体、学校、職場。飲食店における店側と客側が作り上げたおかしなマスクルール。

 これらは、こうした病的不安を基準にした行動規制です。
 ヘンだなと思う人も、付和雷同的に盲従し続けているのです。

 病的不安を基準にする限り、マスク社会はいつまで経っても終わりません。国のマスク着用基準も、これからも変わらないでしょう。

 マスクは所詮、会話時の飛沫を防止するための道具にすぎません。そして1日中装着し続け触り続け外したり漬けたりのマスクは、不衛生極まりないと思ってください。

 『したくなければしなければいい』『押し付けるな』と思うかもしれません。ですが、ANAのように『しないなら降りろ』『入るな』『出ていけ』という場面はあまりに多い。海外から送ってもらう画像、本当に誰もマスクしていません。

 そろそろ、それぞれが考えて不必要なマスクを外しましょう。どんな状況なら外していいか?それはもう、わかっているはずです。

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