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ANAのマスクハラスメント実録~マスク着用緩和を前に~

 これは、私が実際に昨年ANAに搭乗した際にCAから受けたマスクハラスメントの一部始終である。
 この3年間、航空会社が続けて来た苛烈なマスクハラスメントに閉口し、飛行機に乗るのを控えている人も少なくないと思う。
 マスクを着用しなかった客を警察を呼び強制降機させたという事件が相次ぎ、一部訴訟に発展している。
 さらに残念なことに、この手のニュースを報じるネット上のコメント欄には「嫌なら乗るな」「ルールを守れ」、さらには読むに堪えない罵詈雑言が溢れかえっている。

 だが、断言する。
 機内におけるマスク強要は人権侵害である。
感染対策としての意味までここで論じるといくら字数があっても足りないので省略するが、航空会社はコロナ人災当初より感染対策ではなく「客同士の不安解消のため」マスクを強要していたことだけは改めて確認しておく。
 
 Twitter上でやりとりのある弁護士桜井ヤスノリ氏は、JALで強制降機という迫害を受けた一人であり、先日、CA、JAL、 国を相手に提訴に踏み切った。彼の弁護士事務所のホームページに訴状が公開されており、そのとき機内で何が起きていたかが克明に記録されている。息が苦しくなるような弾圧の一部始終。一読して頂きたい。

 近々、もともと任意であったはずの「マスク着用ルール」が緩和され、どうやら定期航空協会でも強要をやめる動きがあるような報道があるが、まだ油断はできない。
 今後、仮にマスク強要を止めたところで各航空会社の人権意識のなさをここまで見せつけられてしまった以上、以前と同じ楽しい旅気分で飛行機に乗ることは二度とないだろう。
 
「飛行機に乗らない」というのは「ブランドショップでカバンを買わない」と同義ではない。
 飛行機は移動手段であり、国内でも飛行機に乗らなければ移動は著しく制限される。誰もが等しく与えられている移動の自由が、こうも簡単に奪われるのだ。

 これは黒歴史となって残るし、残すべきである。マスク強要がなくなったとしても、彼らが行った人権侵害は許されるべきものではない。「ガイドラインがそうだったから」と言う言い訳は通用しない。
 彼らは、まぎれもなく実行犯なのだ。

 この歴史を明らかにしておくために、本稿では、私が昨年11月にANAに搭乗した際に受けたハラスメントの内容を記しておく。強制降機にはなっていないが、それでも私がCAから受けた嫌がらせは、二度と飛行機に乗りたくないと思わせるに十分な精神的暴力であった。
 
搭乗した便は、以下である。
2022年11月22日 09:55大阪伊丹発札幌千歳行 ANA773便
2022年11月24日 14:00札幌千歳発大阪伊丹行 ANA984便

 一体何があったのか。
 以下を読んでいただければ幸いである。
 
 そもそも、私がANAの狂ったマスクハラスメントを体験したのは、2022年9月。3年ぶりの北海道旅行のときであった。この際、行きはJAL、帰りはANAであった。
 飛行機のマスク強要についてはSNSである程度知っていた。だが、ここまでとは想像していなかった。
 行きのJALでは、「マスク着用にご協力を」と言うアナウンス程度のものであった。
 帰りのANA便で私は言葉を失った。
 搭乗するとCAが、マスクを口と鼻をしっかり覆うように指示し、イラストを提示しながら全席チェックして回る。もはや軍隊並みの監視であった。そして、『長時間の飲食はするな、しゃべるな、従わないなら降ろす』と言うアナウンスを慇懃な言葉で繰り返す。旅行帰りの若者グループや家族連れも多く搭乗していたが、機内は搭乗から着陸して降りるまで、異様な静寂に包まれていました。飛行中何度もCAが機内を巡視して回るので、まったく気の抜けない異常なフライトであった。
 
 これを受け、私はこれからどうしようと考えた。マイルがあまりにたくさん貯まっていたのだ。
 コロナ人災で期限が延長されてきたが、多くが2024年3月で消えるようだ。
 Twitterでは、事前に申請すれば後ろの席に移動させられたりはするが、乗ることはできるという情報も見る。
 マイルを捨てるには惜しいし、グッズ等に交換するのは換算率が悪い。貧乏人根性が災いし、もう一度だけ、乗ることにした。
 上記の便を予約し、再度北海道のショートトリップを計画したのだ。
 
 予約後、マスク着用不可についてどこで申請するのかとサイトを探しても分からず、コールセンターにかけてみた。11月17日である。
「それについては直接電話で申請して下さい」
 と別の窓口を告げられた。
 その際のやり取りの記録である。

私:マスクを着用できないので事前に申請したいのですが。
オペレーター:マスク着用不可でしたらハンカチ等で常時口と鼻を覆っていただくことは可能ですか?
私:何時間も常時手で覆い続けるなんてできません。
オ:では会話されるときや咳やくしゃみをされるときは口と鼻を覆っていただけますか?
私:一人で乗るので会話はしません。咳やくしゃみをするときは当然覆います。
オ:(あからさまな溜息)では引継ぎをしておきます。
私:搭乗口で何か申請は必要ですか?
オ:いえ、引継ぎしますので、特に申請は必要ありません。
 
そう、オペレーターは、あからさまにため息をついたのだ。電話口でも聞こえるほどの。そして、「ハンカチ等で常時口と鼻を覆え」と言う信じがたい要求。この時点で、もう旅行を止めればよかったのだ…
だが、間違いなく、オペレーターは「引継ぎをするので搭乗の際に特に新生はいらない」と説明した。
それは全くの嘘だった。
 
不安を抱えながら出発の日を迎えた。
 
往路便の記録:2022年11月22日
 
 私は職場でも、マスク着用の際、耳が痛いのでストラップを使用し、隙あらば外して首からネックレスのように下げていた。
 そのようにネックレスの状態で空港リムジンバスに乗り、以後、伊丹空港内のショップをうろついても全く声掛けはなかった。とにかく声掛けが嫌だったので、手荷物預けの際にだけ一瞬着用。待合でもなんの声掛けもなし。
搭乗ゲート通過時、係員がノーマスクの私を咎め、『お客様マスクの着用は可能ですか?』と言われたが素無視で通過したところ、追いかけては来なかった。
 着席して離陸を待っているとCAがやって来た。マスクで顔を覆い、目だけを三日月の用に細く曲げたCAだ。
「お客様、5列目が空いておりますが、ご移動なさいますか?」
 ご移動なさいます?
 何を言っているのだこのCAは。
 5列目は、一般席の最前列である。だが抵抗して降ろされてはたまったものではないし事前情報の通りである。黙って移動した。小さい飛行機であり、3列・3列の6席には誰も座っていなかった。CAはさらに席までやって来てマスク着用のイラストを提示しながら「咳をするときは云々」と執拗に絡んで来る。頭が沸騰しそうになって来るが、無言を貫いた。以後は絡んでくることはなかった。
 
 だが、これはまだ序の口であった。
 
復路便の記録:2022年11月24日
 
 私は確かに電話でマスク不着用について事前申請し、搭乗便やマイレージクラブ会員番号も全て告げていた。
 なのでマスクは着用せず保安検査場通過を通過した。金属探知機をくぐったところで地上係員が追いかけて来て、名前を呼ばれた。そしてこのセリフ。
『マスクの着用は可能ですか?』
 事前申請していますけど、と伝えると、確認しますと言って一旦立ち去った(桜井弁護士の訴状を読んでいただければ解るが、彼らは無意味に「確認します」と言って一旦下がることを繰り返すのだ)。
戻って来て吐いた台詞は、やはり、
『よろしければ後方席が空いてございますがご移動なさいますか?』
であった。
よろしければ?
眩暈がした。
これが、精神への暴力でなくて何なのか。
 
私:そちらの都合で移動しろと命令しているんでしょ?
係:いえ、そのままの席がよろしければそれでも…
私:移したければ移せば?
係:いえ、強制ではございませんので…
 
ここで地上係員は強制ではないことを明言した。離陸時間が迫ってきており、私は手洗いを済ませたかったので、
「もういいですか?」
と聞き、
地上係員は、
「搭乗口に引き継ぎます」
と述べた。
 
しかし、搭乗口では、席の変更に関する声掛けはなかった。
 
ここは記録しておらずうろ覚えなのだが写真の紙を手渡し、
「マスクが着用できないということですが、どのような理由でしょうか?」
としつこく聞いてきたのだ。

「伝えていますけど?」
と言うと
「こちらで再度確認させていただきます」
と。
「ではこの「呼吸困難」でいいです。」
「呼吸困難と言うことですね」
と言う茶番のようなやり取りもあった。
 
 だが。
 搭乗し、荷物を棚に上げ、着席し、シートベルトも締めたところでCAがやってきて最後列へ移れと言い出したのだ。
 
私:今の席でいいという話ではなかったのか?
CA:いえ、事前にお伝えしたとおりマスク着用できない方は後ろの席へ御移動をお願いしております。
私:先ほど、そういう話にはなりませんでしたが?
CA:申し送りが不十分だったようですが、移動はお願いしております。

明らかに、命令であった。
お願いなどではない。
有無を言わせない命令であった。

もはや機内である。離陸を妨げたという濡れ衣を着せられて逮捕されたらたまったものではない。
またしても全身の血液が沸騰しそうな状態で、荷物を上の荷物入れから取り出し、後方の一列誰もいない席に移動した。
普段はあまり気にしないのだが、前列は乳幼児が複数いて大騒ぎしていたことも私をさらに疲弊させた。
これ以上、私に絡んで欲しくなかった。
だが、離陸前に、チーフらしき女性が私の元にやって来て再び言うではないか。
 
チ:先程は引き続きが不十分でご不快な思いをさせてしまい…
 
何をしに来たのかさっぱり分からなかった。マスクを着用していない私にこれ以上発声させようというのか?もうここで抑えられなくなった。もちろん大声を出すわけにはいかない。ささやき声で抗議した。
 

何のための事前申請か?
そもそも、あなた方には染症に関する知識はあるのか?
オミクロンとは何か?
ウイルスとは何か?
感染とはどのような場合に起こるのか?
何故弱毒化しているのか?
今の重症化率は?
 
CA:私どもは、専門ではございませんので…
 
何一つ、答えられなかった。
何も知らないのだ。
 
だが、これ以上私が何か言い続けて、降ろされてはたまったものではない。
「離陸を遅らせるわけにはいきませんよね」と
伝えて下がらせた。
 
フライトが安定したところでみたびさっきのCAが話しかけてきた。
「先ほどはお話の途中で失礼いたしました」
と言う。

そちらが話の続きをしようというなら、言わせてもらうことにした。
あくまでもささやき声で。
 
 あなたがたは感染症に関する何の知識もなく乗客にこれほどの圧をかけているのか?
この3年で一度でもコロナに関して自ら学んだか?
社内で勉強会をしたか?
 
これらの問いにも、彼女の答えは
「いいえ、勉強会などの機会はございませんでした」
だった。
 
私は極力冷静に、小声で最後に伝えた。
 
1人の人間が1人の人間に何かを要求するのであればその意味を知るべきである。
意味も解らず一人の人間に命令することの恐ろしさを知るべきである。
3年もあった。ウイルスの基礎知識を身に着ける機会などいくらでもあった。
学ばないのはあなたたちの怠慢である。
ちゃんと知識をつけてください、社内で勉強会を開くなどしてください、
今のANAのやり方の異常さに気付いてください。
 
 以後、それでも飲み物などを配ろうとして近づくCAには私は閉眼して一切応じなかった。
 
もう二度と乗りたくない。
マスク強要を続ける限り国内の移動は陸路を選ぶ。
海外に行きたい。行くときは海外の航空会社を利用する。
 
 日本だけが、未だに異常なマスクハラスメントを続けている。
 狂った日本社会の膿はここまで溜まっているのだ。
 
 この記録を書いているだけで、心臓が鷲掴みにされたような感覚が、蘇って来る。



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