SNSマーケティング代行業務者がすべき契約上の工夫~基本契約書の活用して継続発注を得る・成果物の再利用で可能性を広げる~
1.継続発注を獲得しやすくする~基本契約書の活用~
(1)基本契約書を締結することでリピートのハードルを下げる
SNSマーケティング代行業務の依頼は、エンド顧客からの直接の発注の他に、広告代理店やマーケティング代行業者からの再委託という形で発注がなされることも多いと思います。
こうした再委託案件を獲得し続けるには、コンテンツの内容を充実させることは当然として、リピート発注のハードル自体を下げることも重要であると考えられます。
リピート発注をしやすくするためには、発注の度に必要な契約締結の手間を減らしておくと良いでしょう。そのためには、基本契約書の締結を打診してみるという方法が有用です。
基本契約書とは、一定当事者間で継続的に行われる取引に共通して適用されるルールを定めた契約書です(基本契約書のルールが適用される個々の取引を個別契約といいます。)。基本契約書を締結しておくことで、発注の都度詳細な契約条件を確認したり、契約書を取り交わす必要がなくなるため、これらの点において発注のハードルが低くなるという効果が期待できます。
(2)基本契約書に盛り込むべき条項
基本契約書には、発注の度に柔軟に変更される必要がある事項以外の事項をできる限り盛り込んでおくことが重要です。具体的には、次のような条項を盛り込んでおくとよいでしょう。
【基本契約書に盛り込むことが望ましい内容】
個別契約の締結方法(あらかじめ指定された書式による発注書と受注書を交換する方法等)
成果物の納品のルール(納品スケジュール、成果物の検査、検査の基準等)
報酬の決め方(アクセス数によるか、チャンネル登録者数によるか、報酬計算の基礎となる数値の集計期間をどうするか等)
報酬の支払条件(請求の方法、支払期限当)
成果物に関する権利の帰属や利用に関するルール(成果物に関する著作権等の権利が誰に帰属するか、成果物をだれがどの範囲でりようしてよいか等)
成果物に不具合等があった場合の責任や手続(一定の不具合については発注者の要望により修正するか等)
成果物が第三者の権利や利益を侵害した場合の責任(成果物が第三者の権利を侵害する場合にだれが対応するのか、だれが費用を持つのか等)
秘密保持義務(取引に関して受領した情報を第三者に開示する場合のルール)
契約解除に関する条件(どのような場合に契約を解除できるか等)
損害賠償(代金支払遅延の場合の遅延損害金、契約違反の場合の損害賠償額の予定等)
合意管轄
準拠法 など
(3)個別契約のポイント
発注されたはよいものの、発注された業務や成果物の内容があいまいであったため、出来上がったものをいざ納品してみたらクレームが出たという事が往々にしてあります。このような事態が生じてしまうと、仮に無事解決に至ったそしても、次回以降の発注は期待できないでしょう。
したがって、個々の発注(個別契約)を受けるにあたって、「どこまでが拘束力がある内容で、どこまでが受注者が自由に決められることなのか」を明確にしておくことが重要となります。
そのためには、基本契約書において、個別契約の内容として拘束力を持つことになる文書等(例えば、発注書、オリエンシート等)を限定的に列挙しておくとよいでしょう。
そうすることで、列挙されていない文書等(例えば、契約締結前のメールでのやり取り)については、個別契約の内容として拘束力を持たないことが明らかになり、後になって「思っていた成果物と違う」というクレームが出るという事態を避けられるでしょう。
2.成果物の再利用で可能性を広げる~SNSアカウント主体との間の契約における工夫~
成果物は、納品して終わりでもよいですが、それを別のSNSで利用してコラボレーションすることにより、マーケティング手法の幅を広げることができます。
例えば、あるアカウントで利用するため作成した動画や広告のキャラクターを、別のアカウントで配信している動作や広告で取り上げるなどしてコラボレーションすることが考えられます。
クライアントとの間の委託業務内容として、コラボレーションの企画や実行を一定の条件の下で行うことができることとしておく等、発注者との間の契約を工夫しておくと、こうしたコラボレーションをスムーズに行うことができるようになります。
3.まとめ
以上のとおり、再委託業務のリピート発注のハードルを下げるにあたって、基本契約書を活用していくことが有用です。
また、クライアントとの間の業務委託契約の内容を工夫することで、成果物を利用したコラボレーションによるマーケティング手法の幅を広げることが可能となります。
基本契約書の雛形なども別の機会にご紹介できればと思います。
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