恋人

私の恋人は年上の女性。
小説家で、最近は官能小説を主に執筆している。
ゆったりとした上品な所作は彼女の人生の豊かさを感じさせるが、第一印象よりずっと未熟な人だ。
ひと目見たときから彼女しかいないと思っていた。彼女は私を受け入れたが、それはただの興味本位だったように思う。それでも良かった。

年上の女性と聞くと、優しくて頼りがいのある包容力の強い女性を想像すると思う。私も初めはそう思っていた。彼女の余所余所しさが抜けない態度も作られた表情も全て親密度がまだ足りないだけだと期待していた。しかしその態度は、お付き合いをしている今でも続いている。彼女は人と関わるのが極端に下手だった。それがコンプレックスだった。

彼女はよくスキンシップをとる。肩に触れたり髪を触ったりといった友人でも可能性のある触れ合い、ではなく、恋人や好きな異性にするような行動を意図的に行う。「からかいがいがあるわ。」と笑った目は、私を見ていること以外何も正しい事が読めなかった。キスもハグも、いたずらやからかいの延長なんだろうか。本当に私の事は眼中に無いんだなんて勝手に落ち込んだ事もあった。諦めようかと弱気になっている時期、ちょうど彼女は執筆活動に追われていた。

寝室に入ると、いるはずのない彼女がいた。数日別室に籠もりっきりで働き詰めの、弱った姿だったんだと思う。彼女はあまりにも顔に出ない。背後から私を抱きしめ、首元に鼻を擦り付ける仕草はからかいではなく、これまでの行動全て彼女なりに甘えてくれていたという実感が湧いた。
 
私の彼女は包容力とは無縁の未熟な人間だ。
そこが愛おしくてたまらない。
明日も明後日もこのときめきは止まるところを知らない。まぁ、二次元の話なんですけどね。

脇役人生を謳歌する