第15話 自衛隊ー術科学校その3


「おい、今日も行こうぜ」

「オッケー、メシはいいから早目に風呂入って待機してるよ」

サボりの四天王はある裏ワザを見つけたのだった。

それは、基地内にある飲食店へ潜り込むための裏ワザだった。

通常は学生は入れないのだが、その基地の隊員と一緒に行くと入れるのである。

「今日もよろしくお願いしまーす」

「おぅ、ついてこい」

その隊員は喫煙所でたまたま出会って意気投合したのだった。

「もう、やってらんないっすよ、ハンカチ忘れて外出禁止ですから」

みつおは、半分はネタとして外出禁止になった経緯を話していた。

「ま、そう言うな、学校が終わって正式に任地で勤務すると結構自由だよ」

その話の流れで

「今日、クラブに連れてってやろうか?」

クラブとは基地内にある飲食店で、夕方からビールも飲めるのだ。

「マジっすか?俺ら学生隊ですけど大丈夫ですか?」

「もちろん勝手に行っちゃダメだよ、俺の後ろからしれーっとついてくればバレないよ」

その隊員と待ち合わせして、一緒にクラブに行くと普通に入る事ができたのだった。

それに味をしめたサボりの四天王は、ほぼ毎日クラブ通いをしていたのだった。

「いやー、まいったよこの前の外出でナンパに成功して喜んでいたのによ、一緒にメシ食っていい感じになって繁華街をブラブラしてたんよ」

「ほぉ、それでホテルまで行ったんか?」

「もしかしたら行けるかもって思うじゃろ」

「うん、うん」

「実際にあの女もまんざらじゃなかったっちゃ」

「で、だから行ったの?」

みつおも続きが聞きたくてせかしたのだが

「キンジョー、ま、慌てるなって、この期待に満ちた気分が大事なんよ」

なかなか勿体ぶって続きを話さないのだが」

「いよいよ、この通りを過ぎて角を曲がったらラブホがあると思ってドキドキしてたんよ」

「…」

みんな早く続きが聞きたいので何も言わずに待っていた。

「そしたらさ、後ろからその女の名前を呼ぶ奴がおるんよ、なんやって思って一緒に振り返ったらや」

「…」

「なんやお前らあいづちくらいしろよ、せっかく話てるのに」

「あいづちよりも早く聞きたいやろ、もったいぶらないで早く話せよ、してどうなったん?」

「ここからクライマックスや、何と振り返った先には」

「うん」

その女の彼氏が立っとったんよ

「えーーーーっ」

「びっくりやろ、俺もびっくりや」

「で、ケンカになったんか?」

「無理や、プロレスラーみたいな大きな男やったからな、ヤバイち思ったった」

「で、逃げたんか」

「逃げはせんけど、女が熊本からきた親戚やゆうことでその場は逃れたよ」

「あはは、残念やったなあと少しゴールやったのに」

「バカ、お前、あのがたい見たらチ◯ポもしぼむぞ、命が助かった良かったわ」

そんな話で盛り上がったあと、9時前には慌てて点呼に戻るのだった。

そして5ヶ月が過ぎていた。

いよいよ後1ヶ月で学校も終了である。

授業内容はまったく覚えていなかったが、自衛隊生活を楽しむようになっていた矢先だった。

ここではサボりの四天王と呼ばれ皆んなからも親しまれて楽しい学園生活だった。

僅かながら女子の自衛官もいたため、授業中にジョークを言うのも楽しみだった。

高校時代に完全な男子校だったので、みつおにとって夢の学園生活だったのである。

しかし、後1ヶ月で終了すると、皆んなとバラバラになり、それぞれの赴任先に行かなければならないのである。

そこでは楽しかったが、みつおは自衛官を続ける気はない。

とりあえず、念願の那覇基地に行ってから、時期をみて辞めればいいと思っていた。

那覇基地なら実家も近いので、外出で実家で泊まれば節約になる。

正式に勤務になれば、申請さえ出せば簡単に外泊もできるのだ。

そして、任務地発表の日が来た。

「金城2士」

「はい!金城2士」

「金城2士を第◯◯警戒群への任務を命ずる」

「えっ? ちょ、ちょっと待ってください。
那覇基地じゃないんですか?」

「那覇も近いからいいだろ」

「近いって…」

それは地図上では近いが、船や飛行機がなければ行けない離島だった。

「なんだよムカつく、何が近いからいいだろだよ、そんな離島に行くくらいならまだ北海道の札幌の方がいいよ、あんな田舎になんか行きたくねぇ」

航空機整備の職種を外され、その代わりに那覇基地に転属させてやるっていっていたのに、那覇基地ではなく離島勤務が決まってショックを受けたみつおは荒れていた。

「ま、しゃーないな、飲もう飲もう」

いつものようにクラブで飲んでいると

「お前ら学生隊か?」

隣で飲んでた別の隊員が声をかけてきた。

「あっ、はい、すみませんすぐに帰ります」

バレたと思って帰ろうとしたのだが、

「別にいいよ、俺らこの基地の隊員じゃねーし、一緒に飲もうか」

「それより、今沖縄の離島って聞こえたけど、どこの島なん?」

「あはは、コイツか◯◯島に飛ばされて落ち込んでるんですよ、だから俺らが慰めてる所です」

「ほぉ、お前が◯◯島に来るんか?」

「えっ?あ、はいそうですけど…」

「俺は◯◯島から研修で来てるんだけどよ」

「えっ?…」

みつおは絶句してしまった。

あんな田舎になんか行きたくねぇと言ったのを聞かれてしまったのである。

「まぁ、島は田舎だけどいい所だよ、飲み屋も多いし」

「えっ、飲み屋あるんすか?」

「あるよ、飲み屋だらけだよ」

飲み屋も何もない僻地と思っていたので、ちょっと安心したみつおだった。

いろいろとその島のことを教えてもらって、気持ちはおちついたのだった。

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