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前置き語使いについて

「要するに」「一つだけ言わせてもらうと」「はっきり言って」「逆に言うと」など、冒頭に前置きをしてから話すという技術がある。これからする話の方向性を予め示すことによって聞き手の注意を引き付けるための技術ではあるが、これを多用する人は話が下手である。

前述の通り、これらの前置き語は「聞き手の注意を引き付ける」という効果がある。対話というのは複数の話者のやり取りによって形成される。これはゲーム的に言い換えるならば「話す」ターンと「聞く」ターンを交互に繰り返すことだ。そして前置き語は、「聞き手の注意を引き付ける」、つまりは相手の「話す」ターンを奪って、しばらくの間こちらの「話す」ターンに持ってくる効果がある。「話す」ターンと「聞く」ターンを上手く受け渡しが出来ずに前置き後でそれを奪ってしまう。話が下手である、と断ずる理由の一つである。

もう一つの理由は逆説的である。話が下手であるが故に、前置き語を使わざるを得なくなったという説だ。話が下手なので相手に話したいことが伝わらず、途中で遮って質問を挟まれたりツッコミを入れられたり、それに対応しているうちに話したかったことが話せないまま終わる……そういう苦い経験を積むうちに、何とか自分の「話す」ターンを死守するために得た技術、それが前置き語であるという説だ。「一つだけ言わせてもらうと」と言われれば、一つだけなら聞いてやろうかなと思うものだ。そうやって初めて自分の「話す」ターンを確保出来る。しかし話すのは下手なのでイマイチ要領が伝わらない。伝わらないから伝えるために長くたくさん話す必要がある。そのためには「要するに」「逆に言うと」「例えるなら」などと前置きを重ねて自分の「話す」ターンを延命しなければならない。こうして、下手な話を延々と続ける話下手が爆誕してしまうのである。

自分が聞き上手なせいか(自分で言うなよ)、どうも昔からこのタイプの話下手な人に懐かれやすくて困ってしまいがちなんですよね……という愚痴のために、偏見めいた持論をドヤ顔で披露しただけのnoteでした。

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