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ドラゴンと姫と勇者と

悪いドラゴンに攫われた姫を何としても取り戻すべく、王様は「ドラゴンを倒し姫を助け出した者は何でもその望みを叶える」とお触れを出しました。ドラゴンを倒し、姫を救い連れ帰った勇者は姫との結婚を望み、王様はそれを許しました。しかし全ては、姫に一目惚れをした勇者が自ら仕組んだことだったのです。

王家の主催したとあるパーティーで、勇者は初めて姫を見かけました。村から出てきたばかりの勇者は、パーティーで給仕をしていました。勇者は美しい姫の姿をひと目見るなり、姫に夢中になってしまいました。どうしてもこの人と結婚したい!しかし一介の給仕が姫と結婚なんて出来るはずがありません。そこで勇者は一計を案じました。知り合いの魔法使いに金を渡して魔法で悪いドラゴンをけしかけ、姫を攫わせたのです。

故郷に伝わる伝説で、勇者はドラゴンの弱点を知っていました。姫のことを溺愛する王様がどんな手を使ってでも姫を取り戻そうとするだろうことも分かっていました。勇者は計画通りにドラゴンを倒し、まんまと美しい姫を手に入れたのでした。

しかし悪いことは出来ないものです。勇者と姫との結婚パーティーに呼ばれなかったことに腹を立てた魔法使いは勇者を裏切り、勇者の計画は告発され、全て明るみになってしまいました。しかし姫は、そうまでして自分を手に入れようとした勇者の愛に深く感動し、勇者を許し受け入れたのです。勇者は魔法使いに非礼を詫び、姫と勇者は夫婦として末永く幸せに暮らしました。

ドラゴンに攫われた体験から、姫は生涯ドラゴンに強い恐怖症を抱くようになったと言います。勇者は姫のために国じゅうのドラゴンに討伐隊を送り、ドラゴンを殺し、巣を焼き払い、根絶やしにしてしまいました。我が国が今日も『竜の墓場』という2つ名で呼ばれているのは、そんな伝説に由来があるのです。

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