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僕の告白彼女の告白

このサイコロを振ってゾロ目が出たら彼女にきちんと付き合ってくださいと言うんだと、固くそう誓ってサイコロ2個振るアプリを回した結果は見事に1のゾロ目だった。なんてことだ。これはもう覚悟を決めるしかない。強めのウォシュレットでおしりを洗いながらどう告白するかを考え、丁寧に折り畳んだトイレットペーパーでおしりを拭きながら脳内で何度も復唱してベッドに戻ると、彼女は素っ裸のままうつ伏せでスヤスヤ眠っていた。

とりあえず彼女を起こさないように布団を掛けて隣に潜り込んで、彼女の丸いおしりを撫でながら薄暗いラブホのきらびやかな天井を見上げる。マッチングアプリで知り合って初対面で飲みに行ったあとそのままホテルに行って、いわゆるセフレ関係になってからもうすぐ半年。この関係も悪くはないけれど、そろそろ先に進めてもいい頃合いだ。本当は今日会ってすぐにそれを伝えるつもりだったのだが、居酒屋でタイミングを逃し居酒屋を出たところでタイミングを逃しホテルに入ってタイミングを逃し、1回戦の前にも2回戦の前にもタイミングを逃していたら事後になったというわけだ。覚悟を決めてトイレから戻ってきたら彼女は爆睡こいててまたタイミングを逃し、僕はひとり途方に暮れている。

思い返せば今回だけじゃなく、これまでの人生も似たようなことの繰り返しだったような気がする。高校の時放課後の部室でキスをしてしまった後輩は、時々キスするだけの関係になってモタモタしているうちにバスケ部のイケメンに告白されて付き合い始め、大学の先輩は振られたから慰めろよと居酒屋に呼び出されてそのまま流れで一線を越えてからたびたび会ってそういうことをする関係にはなったけど先輩は結局元カレとよりを戻すことになって自然消滅。ちゃんと付き合った人数よりもセフレまたはそれに準ずる謎の関係だった相手の方が多い。僕は何故かなんとなくそういうポジションにスポッと収まってしまいがちな人間だった。これじゃダメだ!と一念発起して迎えた今日のはずだったのだが、またしても機を逸してしまった感がある。気持ちよさそうに寝息をたてる彼女のすべすべのおしりを撫でながら、どうしたものかと深いため息をついた。

目が覚めると、彼女は服を着てすっかり身支度を済ませて、ベッドの脇のソファに座ってスマホをいじりながらタバコを吸っていた。「おはよ。ゴメンねあまりに気持ちよさそうに寝てたからそのまま放置しちゃった」そう言って彼女はぷーっと煙を吐き出して笑った。「あと40分ぐらいで出なきゃだよ?」しまった。いつの間にかあのまま眠ってしまったらしい。しかもたっぷり7時間も熟睡しているじゃないか。慌てて飛び起きてシャワーも浴びずに服を着て支度をする。こういう時に男は便利だ。ものの10分で着替え終わって、彼女と並んで座ってタバコを吸った。2人の吐いた煙が混ざる。よし、言うなら今だ。覚悟を決めて息を吸った僕の呼吸の頭を押さえて彼女は言った。「そういえば私、彼氏出来たから」目が点になった。

ホテルを出るまでの20分の話し合いの末、彼氏は出来たが良ければこの関係は継続したいということになり、僕たちは関係据え置きのまま契約延長となった。契約の書類に判子を押すようなキスを交わしてホテルを出る。これが神様的な何かの采配なのだとしたら、恋愛の神様というものは本当に気まぐれだなぁと思う。一体どういうつもりで神様はあの時僕に1のゾロ目をもたらしたのだろう。まあいい。ホテルを出て2人で食べたラーメンは美味しかったし、再来週の火曜日にはまた会う約束もした。釈然としないものがないわけでもないが、僕はまあどちらかというと幸せだ。再来週の逢瀬を楽しみにしながら、僕は昨夜の2回戦の筋肉痛を愛おしく思うのだった。

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