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猫と恋心
大好きで触りたいと思っても拒絶されたり、必死で追いかけても少しも振り返ってくれなかったり、差し出した手を振り払われたり、気まぐれで少し撫でさせてくれたことを嬉しく思ったり……
実家の懐かない猫を追いかけていると、なんだか報われない恋みたいだなと思う。
それでも僕はあなたのことが好きだし、あなたのことを可愛いと思う気持ちを抑えられないし、あなたともっと仲良くなりたい、あなたにもっと触れたいと思うことをやめられない。いっそ嫌いになれたらどんなにか楽だろうに。本当に何から何まで恋とそっくりだ。
帰り際、小さく座ってこっちを見て見送ってくれる、それだけで愛が報われたような気持ちになってしまう。向こうにとっては何ら深い意味のないことなのに。これも何度も何度も味わってきたことだ。無垢な少女ポリアンナのように、小さな『よかった』を集めて恋を飾り立ててしまう。少しあなたに触れられてよかった、帰り際にこっちを見て見送ってくれてよかった。そんな小さなよかったで報われるような想いじゃないのに。
それでも僕は、人を愛することを、猫を愛することをやめられない。そう言って悲劇のヒロインにでもなったつもりで自己陶酔して自分を誤魔化すのもよくやる手段。まったく難儀なものです。また会おうね。
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